The Isley Brothers“Inside You” ~バックグラウンド・ザ・ヴァイナル 07

WRITER
SWING-O

“Inside You” The Isley Brothers 1981

 SOUL PIANIST/SOUL PRODUCERであり、SOUL DJでもあるわたくしSWING-Oによる、「バックグラウンド・ザ・ヴァイナル」第7回はThe Isley Brothers(以下アイズレー)の迷走期の作品”Inside You”の裏側に迫ってみようと思います。というのもこの作品結構好きなんですよね。前回のStevie Wonderしかり、迷走期の作品とされるものは今の耳で聴くと意外とよかったりしますから。

 そもそもアイズレーは日本であまり評価されてこなかったアーティストです。今でこそ色々DJもかけるし、サンプリングソースとしても有名ですけど、なんなら90年代までの日本では全く評価されてなかったと言っていいアーティストですね。実際に俺も20歳頃に大学の音楽サークルの音楽が詳しい先輩とアイズレーの話になった時も「ん?アイズレー、あ、あのビートルズの”Twist And Shout”のオリジナルのね」てくらいしか知られてない感じでしたね。その証拠にこのアルバムの日本盤解説でもこのように書き出されてます。

「本国の米においては発表するアルバムがことごとくゴールド、プラチナに認定されるほどのスーパーグループでありながら、この日本ではただの一度も脚光をあびることがないままに今もって不遇をかこっているアンラッキーなグループの代表格だ」(解説:会田裕之)

 それが時を経て、90年代のR.Kellyによるフックアップ、特に彼がプロデュースしたAaliyahによるカバー”At Your Best”の大ヒットが大きかったですかね。その頃、彼女と同世代だったアイドルグループのSPEEDがAaliyahをすごく推薦していた印象があります。ヒップホップシーンでもビギーを始め、サンプリングされまくってましたし、、、あとはもちろん橋下徹さんによるフリーソウルシリーズでのフックアップも大きかったと思います。かくいう自分もそんな諸々に影響を受けつつ、最終的には全アルバムを探し集めて今に至ります。

 そんな中、他にも名盤名曲は多々あるのに何故これを紹介するのか?それには訳があります。俺はErnie Isleyのドラムがあんまり好きじゃないんです。彼はもちろんギタリストですが、兄弟の中でも随一器用だったんでしょうね。兄貴たちと合流して3枚目の1975年の大ヒットアルバム”The Heat Is On”からはなんと彼がドラムも叩くようになり、結果「兄弟だけで全てを仕上げる」というスタンスが完成します。そこからのファンク作品のグルーヴが逐一ワンパターンで、好きになれないんです。でもメロウ系になるとどのアルバムにも名曲が入っているから結果、好きなんですけどね。

 で、そんな彼らの「兄弟だけで作る」スタンスにも色々ヒビが入ってきたのがこれの前作”Grand Slam”(これも1981年)、ここから久々に数曲ではあるものの、ドラムをゲストミュージシャンを迎えて作ります。そしてこの作品”Inside You”に至っては、ドラムはほぼ全曲外部の人、あと彼らにしては初めて?ストリングスを取り入れます。そして更にはモータウン期(1967-68年)以来初めて楽曲提供を受けます。それがこれです。

“First Love” by The Isley Brothers

 楽曲提供と言っても、当時アイズレーのツアーバンドメンバーだったDavid Townsend書き下ろしによる曲ですけど、これ爽やかでいい曲ですよね?彼はのちに80年代後半にSurfaceというグループで大ブレイクする人です。多分、彼からアイズレーにプレゼンしたんでしょうね?聞かせたところ「いいじゃないか!」となって採用されたのでは?と。

 この曲を筆頭に、これまでのアイズレーにはなかったタイプのAOR的な感じ、更にはストリングスも入った、1981年にしては「今更感」のある壮大なアレンジ曲が多数で、アッパー系な曲もどこかこれまでと違っていて、でもそれぞれが他にはない音像なので結構好きなんですよね。あとこのミドル曲も爽やか名曲だと思います。これはアイズレーのオリジナルですね。

“Welcome Into My Heart” by The Isley Brothers

 そんな訳で、よく出来たメロディアスな曲が多数な訳ですが、最初に購入した再発レコードがどうにも音がこもってて、なんか微妙な気がしたんですね。で、頑張ってUSオリジナル盤を見つけたんですが、それもあまり変わらない。結果それは現在CDやネット上で聴ける音源でもそうなんですね。ところがですよ。この日本盤が音いいんですよ。T-Neckは日本の配給がCBS-Sonyだったのでこうしてラベルも違うんですが、プレスがいいのかマスタリングが違うのか、このこもった感じがありません。ただ、B-4”Love Zone”だけはどの盤を聴いても音がぺしゃんこに潰れててひどいですね。曲やアレンジは面白いので、音さえ良ければ今かけたくなるくらいの曲なんですけどねぇ、、、

彼らなりにマンネリ打破を狙って作られたと思しきこの作品はここ10年で最も売れないアルバムとなってしまいます。次作も引き続きゲストを迎えつつも、元のファンク寄りな作品に戻ってみますが更に売れず。。。そしてドラムをゲストミュージシャンを呼ぶ代わりに打ち込みを導入しつつ、再びメンバー六人だけで作ったのがあの”Between The Sheets”1983年となるわけですが、そもそもこの頃の兄弟間の確執が色々あったんでしょうね。結果3+3となる前の3人ずつに分かれて行ってしまいました。

 でもその後は年長組兄弟も年少組兄弟も打ち込みベースな音楽作りに移行していきます。それがその時代の黒人音楽の旬であったからではあるんでしょうが、この80年前後の彼らの試行錯誤~迷走を乗り越えて、自分たちで作った打ち込み曲”Between The Sheets”が売れた、ということが、彼らをのちの90年代以降のさらなるキャリアアップに結びつけたのではないか?と。そんなことを想像しながら「迷走期の隠れた名盤」”Inside You”を聴くのは如何でしょう?そんなバックグラウンドザヴァイナルでした!

SWING-O

SWING-O
SOUL PIANIST / SOUL PRODUCER / SOUL DJ。1969年加古川生まれ。黒い現場にこの男あり。SOUL、HIP HOP、CLUB JAZZ、BLUESを縦横無尽に横断するそのスタイルで、日本に確かな痕跡を残し続けるピアニスト、プロデューサー。これまでに関わったアルバムは150枚以上。今年30周年を迎えるファンクバンドFLYING KIDSのメンバーになったことも発表されたばかり。例えば2016~18年に絡んでいるアーティストは堂本剛、Rhymester、AKLO、Doberman Infinity、Crystal Kay、加藤ミリヤ、元ちとせ、近藤房之助などなど。積極的にイベントも開催、恵比寿BATICAにて今年で10年目になるMY FAVORITE SOULを開催中と多方面でSOULな音楽発信を続けている。
http://swing-o.info/

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