Shirley Murdock “Shirley Murdock!” ~ バックグラウンド・ザ・ヴァイナル 05

WRITER
SWING-O

“Shirley Murdock!” Shirley Murdock 1985

SOUL PIANIST/SOUL PRODUCERであり、SOUL DJでもあるわたくしSWING-Oによる、帰って来た「バックグラウンド・ザ・ヴァイナル」第5回はZappのRoger Troutman全面プロデュースのこの作品を紹介しつつ、「年月が経ってもカッコ良いものとそうでないものの違いは何か?」を語ってみようと思います。

簡単にこの作品を紹介しておきますと、Shirley MurdockはRogerと同じオハイオ州出身、Zapp軍団の女性ボーカル・コーラスで、Zappのヒット曲の一つ、”Computer Love”は彼女がRogerと共作した曲。このアルバムは彼女をRogerが全面プロデュースした、ソロデビューアルバムになる(Wiki上ではリリースは1986年2月となってるが、アルバムやラベルには1985年と記されてる。なぜだ?とりあえず今回は1985年としておきます)。この中から何曲かヒット曲が生まれ、特に不倫を歌ったバラードのB-3 “As We Lay”はR&Bチャートで5位、ポップチャートでも23位となる大ヒットを記録。アルバムもR&Bチャート9位、ポップチャートでも44位と、この手の黒人ものにしては大ヒットした部類になる。

というのが簡単な紹介になりますが、これくらいのヒット作品はそれはもう数多あるわけです。また時代が80年代ど真ん中ですから、ギリギリリアルタイムな自分としても、懐かしさこそあれ、今聴くとこっ恥ずかしい作品が、なんならば大半なわけです。ブラックコンテンポラリー、通称ブラコンも全盛期ですしね。そんな中、このShirley Murdock作品は今の耳で聴いても素晴らしい作品集だなと思うわけです。

まずはB-2のこの曲とか聴いてみましょうか

“Teaser” by Shirley Murdock

シンセ使い、ビートの感じが今の耳で聴いてもいいですよね?”Control”1986の頃のJanet Jacksonにも近い感じがあります。A-4”Truth Or Dare”などもジャネット感がありますね。でもリリースされた順番としては”Control”の方が後です。むしろ、JanetのプロデューサーJam&Lewisの手がけた、Cherrelleの感じをRogerが意識したか?という方が的を得てますかね。それも聴いてみましょう。

“I Didn’t Mean To Turn You On” by Cherrelle 1984

プリンス~ミネアポリスファンクマターでありつつ、Jam&Lewisがみるみる独自のプロデュースワークを開拓している頃の逸品なわけですが、これも今の耳で聴いてもいい感じですよね。ついでに、個人的にこの曲の初体験はこのバージョンではなく、白人男性シンガーのこのバージョンでした

“I Didn’t Mean To Turn You On” by Robert Palmer 1985

これはまたPVがいいですねぇ、で、サウンドもいいですよね?これはプロデュースはBernard Edwards、そうChicのNile Rodgersの相方です。ミネアポリス系楽曲の、NYからの返答といった仕上がりでしょうか。こちらはポップチャートで2位まで上がる大ヒットとなりました。Princeが”Purple Rain”1984で大ブレイクしている頃に、白人にも影響を与えつつ、のちのJanet Jacksonの大ブレイクにつながっていく、という時期を象徴する作品ですね。

こうした打ち込み・プログラミングものの作品で、「30年以上経った今の耳で聴いても古びてない」ものとそうでないものの違いは何でしょうね?というのを、アーティストでもある自分はよく考えるのですが、簡単に言うなら「リズムトラックの作り方をこだわっているか否か」ですね。元々生ドラムで編曲・演奏されていたタイプの音楽を、こうした打ち込みものにする際に、「ドラムの代用品」としてしか考えられてなかったり、流行りのサウンドを真似ただけだったりする作品は、当時流行った売れたとしても年月と共に古びてしまう場合が多いですが、RogerやJam&Lewisや殿下Princeなどはドラムマシンの使い方を研究することで、新しいリズム表現を開拓した人たちです。彼らのは今の耳で聞いても面白さがある。研究とこだわりが音になっている。例えばこのRoger~Zappの、「スネア大きすぎる?」と思ってしまう独特のビート感、それは形を変えてJay Dillaなどに受け継がれて現代に至る遺伝子だと俺は解釈しています。

Rogerの話に戻すと、彼のプロデュースワークの面白さは、以前ピーターバラカンさんが記事にしてましたが、こうした当時最新のビートのあり方と共に、必ず古いソウルへのオマージュも込められていたりする、そのバランス感覚ですね。ZappやRogerソロ作品の中でも、Wilson PicketやMarvin Gayeの60年代曲カバーをtalkboxでやってたりする、その感じです。このアルバム”Shirley Murdock”の最後を締めくくるのも、彼女の出自のゴスペルを感じさせてくれる、ピアノバラードの小品”Tribute”だったりするのも粋です。80年代もので、フルで聴ける数少ないアルバムの一つだなと改めて思います。

最後にこのアルバムの中の隠れた名メロウソウルだと思うこちらを聴きながらお別れしましょう。これ、今DJでかけたり、カバーしたりすると美味しい曲かも?って気がしますねぇ、、、あ、内緒でお願いします 笑

“The One I Need” by Shirley Murdock

Shirley Murdockのレコードは以下よりご確認下さい
http://www.soundfinder.jp/search?keyword=shirley+murdock

SWING-O

SWING-O
SOUL PIANIST / SOUL PRODUCER / SOUL DJ。1969年加古川生まれ。黒い現場にこの男あり。SOUL、HIP HOP、CLUB JAZZ、BLUESを縦横無尽に横断するそのスタイルで、日本に確かな痕跡を残し続けるピアニスト、プロデューサー。これまでに関わったアルバムは150枚以上。今年30周年を迎えるファンクバンドFLYING KIDSのメンバーになったことも発表されたばかり。例えば2016~18年に絡んでいるアーティストは堂本剛、Rhymester、AKLO、Doberman Infinity、Crystal Kay、加藤ミリヤ、元ちとせ、近藤房之助などなど。積極的にイベントも開催、恵比寿BATICAにて今年で10年目になるMY FAVORITE SOULを開催中と多方面でSOULな音楽発信を続けている。
http://swing-o.info/

世界中のレコードを、その手の中に
  • Google Playでアプリをダウンロード
  • App Storeからアプリをダウンロード

関連記事


新着記事

すべての記事をdig!