レコード店とディスクガイド14軒目 yoake records(京都・丸太町)

WRITER
吉本秀純


無農薬野菜を販売する店舗(Annex Organic Vege)の2階という意表を突くロケーションで、昨年の1月にオープンした京都のよあけレコード(Yoake Records)。こんなところに何故また中古レコード屋が? というナゾの立地もさることながら、洋邦の80年代シンセ・ポップや無国籍バレアリックなどといった近年の再評価音源のトレンドも踏まえつつ、あらゆるジャンルからリーズナブルな価格帯の好作品をチョイスした品揃えの良さもまた異彩を放っている。まだまだ開店から1年足らずにしてDIYな営業形態だが、一部で再評価の気運が高まる80年代のシンセを多用したフレンチ・カリビアンものなども豊富にストックしながら侮れない展開をみせる同店について、店主にしてDJとしても活動する河上さんにお店の話を伺った。

――まずは、お店を始めるに至ったいきさつから聞かせてもらえますか?
もともとはJAPONICA MUSIC STORE(※京都でダンス・ミュージック系の新譜やレア・グルーヴを独自のセレクトで取り扱いながらも2016年7月に閉店)いうお店に、閉店前の半年くらいお手伝いで入っていたんです。その時にも自分の私物をちょっと中古として置いていたら売れたりもしたので、もっと本格的にやりたいなと思っていたら閉まっちゃって…。京都に来たのも、もともとレコードが好きだからという理由が大きかったですね。

――ということは、もともとは京都のご出身ではなくて。
僕は石川県の出身ですね。その後に大学生の時期は関西で過ごして、そこから東京に3年間くらいいたり、海外にも行ったりとかなりあっちこっちを転々としているんですけど、どこにいる時もレコード屋さんによく通って、レコードを見ることが生活の一部になっていたので。ヨーロッパに住むことを考えていた時期もあったんですけど、日本で何かできることはないかと考えたら、今は世界的な“和モノ”ブームも熱いですけど、日本っぽいことって何やろうな?と思ったら、日本って世界で陽が昇るのが一番早い国だから“夜明け”じゃない?と思って。


八百屋さんの中にある階段を上っていくとyoake recordsはある。ちなみに階下の八百屋さんも有機野菜から調味料、洗剤まで食にまつわるものが手に入る。

――そして、”よあけレコード”というネーミングに(笑)。
ま、名前も全然ちゃんと決めていなかっただけなんですけど(笑)。京都ということもあって、坂本龍馬じゃないですけど、屋根裏の2階に幕末の志士のようにレコードが好きな人達が集まって喋りながら、平成から次の元号に変わる頃くらいに新しい時代を作っていけたらなと。ただ単に“夜明けゼよ”って言いたかっただけってところもありますけど(笑)、京都っぽくてひらがなでも横文字でもイケるような名前にいたいというのはありましたね。

――なるほど。品揃えに関しては、河上さんのお好きな音楽が軸になると思いますが、どのあたりの音楽をメインに通ってこられたんですか?
もともと僕はヒップホップや電子音楽から聴き始めて、そこからネタ元のジャズ、ソウル、ファンクなどのレア・グルーヴや電子音楽ならテクノに進んでいきましたけど、一番大きかったのは21歳の時に1年ほどベルリンに住んで(2008年ごろ)、ミニマル・テクノとかダブ・ステップのパーティに通って遊んでいたことですね。その頃はやっぱり昼夜逆転でドープな方向に行っていましたけど、今はそこから10年経ってもうちょっと健康的な方がイイとなって、早く寝て早く起きて朝イチでイイ音楽が聴きたいって感じに変わりましたね(笑)。だから、野菜を売っているお店の2階でやりたかったというのもありました。

――品揃えも、クラブ・ユースよりはもっとライトで日常的に聴けそうな盤が多いですよね。
そうですね。で、最近は日本もちょっと南国化しているのに合わせて、トロピカルなAORとかフランスの海外県のマルチニークのズークとか、シンセもののニューウェイヴなどのキラキラした音楽を多めに置いていますね。日本も島国というところを意識して、アイランド・ミュージックみたいな感じも出せればいいなと思っていて、個人的にインドネシアやハワイ、イビザ島の音楽なども好きなので、いい出会いがあればそのあたりにもフォーカスしていければと思っています。


yoake recordsのある河原町丸太町周辺には、ここ数年でお店が集まり始めている。散策ついでに寄るのも◎。

――お店としては、オープンしてもう1年くらいですか?
そうですね。僕もプロモーションをあまり上手に出来ていなくて、お客さんもまだ身内が多いですし、DJ活動も結構やっているのでそこで共演したDJの方が来てくれることもありますけど、皆さん詳しいので(笑)。あとは、僕がココには基本的には土日しかいなくて、平日は下のアネックスさんに協力してもらって、僕は旅行会社で働いています。

――下の階で無農薬野菜を売っているアネックスさんと一緒にやるようになったのは、何かキッカケがあったんですか?
彼が2階をリサイクル・ショップとして運営していて、その範囲でならレコードを置いて売ってもいいよという話になって。なので、アネックスさんのリサイクル・ショップの中で、僕が間借りしてレコードを売っているという形です。

――最初によあけレコードを知った時には、店の入口で無農薬野菜を売りながら、奥の方でレコードも売っているという紹介のされ方で、一体どういうコンセプトなのかなと思っていました(笑)。
リサイクル・スペースに空きがあったのでレコードを置きませんか?となっただけなんですけど、僕もこの組み合わせは一番最初なんじゃないかなと思っています(笑)。


階段を上がったすぐの場所には、リサイクルショップゆえに椅子や雑貨、陶器などの販売も。

――今のところ置いてあるレコードは、さっき挙げていただいた再評価が進む80年代のトロピカル系や無国籍バレアリックなシンセものなどの他にも、かなり多彩なジャンルのものを独自のセレクションで扱われていますよね。
そうですね。トルコや中東のコンピもありますし、カッサヴなどのフレンチ・カリビアンに、僕はラテンのパーティでもレギュラーでDJをしているので、そのあたりの影響もありますね。他にもインドネシアのダンドゥットや和モノのシティ・ポップ…、レアで高価なものや重めのモノも個人的には少し持っていますけど、お店はポップにしたいのでそういうモノ以外を中心に置いています。

――買いやすい価格帯で内容のいい盤が様々なジャンルから揃っているので、ジャンルにこだわらず面白いレコードを探している方には気軽に覗いてみてほしいラインナップだと思います。
だから、若い子とか普段はレコードをあまり聴かないという人にも足を運んでみてほしいですね。

――今後に力を入れていきたい部分などはありますか?
今から強化するなら新譜なども入れていきたいですけど、そこまでまだ手が回っていないですし、そのタイミングを狙っているところですね。オープンから1年経てばまた見えてくる方向性もあると思いますし、これからどうなっていくかを見守っておいていただければと。

【“ジャケットが夜明け”な3枚】


Dr. Hook『Rising』

ホントにジャケ優先で選んだだけなんですけど(笑)、内容的にはかなりポップなロック~ディスコで80年のリリース当時には世界的にもヒットした作品です。でも、アートワークはよく見るとヤバいですね。


Alphonse Mouzon『Morning Sun』

70年代にはブルーノートからもリーダー作を出していたドラマーが81年に発表したメロウな人気作ですけれど、コレも内容よりはジャケに惹かれて選びました。部屋に飾って、夜明けを感じていただければ。


Magma『Tropical Wave』

コレは力を入れているマルチニークのフレンチ・カリビアンの80年代後半の作品で、内容も色彩感豊かでいいです。できることなら、このアルバムが出ていたワールド・ミュージック・ブームの全時期にタイム・スリップしたいですね。

【“私的アイランド・ミュージック”な3枚】


アンドレアス・フォーレンヴァイダー『Down To The Moon』

この人はスイスに行った時に知ったバレアリック方面などでも再評価されているハープ奏者のアルバムですけど、個人的にはこのアルバムを聴いた時に京都っぽいなと思ったんです。スイス人の音楽なんですけど解釈によっては京都っぽく聴こえるところが自分にとっては大きくて、京都に来るキッカケにもなりましたし、僕の中ではコレもアイランド・ミュージックですね。


Laid Back『Keep Smiling』

これもバレアリック・クラシックスとして有名な作品ですけれど、特に「Sunshine Reggae」という曲が夜明けっぽくていいですね。84年のリリースですけど、(裏ジャケットのメンバーの写真を見ながら)こういう海外のモテなさそうな奴らが景気良くて急にモテ出すみたいな感じも好きです。


スティーヴィー・ワンダー『イン・スクエア・サークル』

スティーヴィー・ワンダーはやっぱり朝に聴きたくなるので外せないですし、このアルバムはソニーと組んでデジタルに移行していた時期で当時はあまり評価されなかった作品ですけど、今聴くといい曲が入っているし、この頃の日本の景気が良かった感じすらも今となってはレアなものに感じます。

Yoake records

Yoake records
住所:京都市上京区出水町274 organic annex2F
電話:非公開
営業時間:11:00〜19:00
※現在 休業中

Writer 吉本秀純
撮影 米田真也

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