レコード店とディスクガイド11軒目 WORKSHOP records(京都・市役所前)

WRITER
吉本秀純

1999年にオープンし、新旧のロック全般からジャズ、ソウル、ブルース、ブラジル音楽、レゲエ/ダブ、アヴァン系に至るまでのあらゆるジャンルに精通した品揃えと確かな審美眼に貫かれたセレクションの良さで、幅広い音楽フリークから信頼を集め続けてきた京都のWORKSHOP records。店主の苗村聡さんは80年代末から老舗中の老舗であるブーツィーズ・レコード・ショップに勤務し、コアな音盤の現場でキャリアを積んできた、京都の新旧のレコード事情を知り尽くした存在。2016年には京都市役所横のビルに移転し、より開かれたロケーションで新たな展開をみせる同店のこれまでの足跡や品揃えの特色、そしてジェントルな接客と博識ぶりに定評がある苗村さんの音楽的なルーツなどについて語ってもらった。

――WORKSHOP recordsを開店する前はブーツィーズ・レコード・ショップにいらっしゃったので、京都の中古レコード店員歴はもうかなり長いですよね?
ブーツィーズで働きだしたのが1988年とか89年で、その前にJEUGIAの四条店で2~3年ほどバイトしていたので、もう約30年で長いですね。大学を卒業して一応普通に就職はしたんですけど、これは全然あかんわと思って1年半で辞めて(笑)。当時に“ダンス”というミニコミ誌をスローターハウスとか、ブーツィーズの平野さんやヴィレッジ・グリーンの田中さんといった京都の中古レコード屋の人達で作っていてそれに僕も関わっていたんですけど、その交流からある時に平野さんと話していたら、ウチで人を探しているからバイトするか?となって。それまでは、どちらかと言うと中古よりも新譜をメインに買っていたから中古のことはあまりわからなかったんですけど、中古も面白そうやなと働き始めたら、ツボにハマってしまって今に至るという感じですね。

――もともとは、どのあたりの音楽がお好きだったんですか?
当時はニューウェイヴとかばかり聴いていましたね。そこからブーツィーズで働かせてもらうようになって、いろんな音楽へ幅が広がっていったというか。そもそもブーツィーズに行ったのも、ニューウェイヴの買い取りが結構あるけどあまりわからへんから、そのあたりがよくわかる人を探しているということで僕に声がかかったんですよ。

――平野さんはどちらかと言うとブラック・ミュージック全般に強いイメージですし。
そうですね。平野さんがそっち系で、僕はヘンな系を(笑)。で、気が付いたら10年いましたけど、5年目くらいから将来的には自分の店でやりたいということは平野さんにも相談しながら考えていて、10年目を契機に独立したという感じです。


オープン当初は、JONATHAN RICHMANのコーナーなどもあったそう。一気に売れて、とうとう面だしだけに。

――そして99年にオープンしたWORKSHOP recordsは、あらゆるジャンルに苗村さんの選盤眼が行き届いたセレクションで、当初から独自の品揃えが光っていました。
最初はもう自分の好きなモノ中心ですよね。それまでに海外に買い付けに行った時にストックしてきた盤も、基本的には自分の好きなモノになるので、それが基準になっていました。あと、オープン時にはジョナサン・リッチマンとNRBQは絶対にコーナーを作りたいと思っていて、当時にボストンに買い付けに行った時にはまだモノがあったので見つけた盤はあるだけ買って、最初は両者の仕切りがちゃんとあったんです(笑)。ただ、結構買ってきたつもりでも、人気があるからすぐに売れてしまって、コーナーは短期間で消滅してしまいましたけど。

――品揃えへのこだわりは、他のジャンルにもあったんですか?
やっぱり急な階段を上がってわざわざ4階まで来てもらうということもあって、特色のある構成にしたいとは思っていて。例えば、ブラジル音楽ならブラジル盤は当時はなかなか手に入りにくい状況だったのでブラジルから直接入れるようにしたり、オープンした頃はヨーロッパ・ジャズがすごく盛り上がっている時期だったので、旧・東ドイツに行った時にそのへんがワサッとあったのを大量に出したりもしていました。そういうところでDJさんも紹介してくれてたりして、店の色が出てきたところもあるかもしれないですね。


あまり笑っている姿を見られたことがないらしい。でも、臆することなく積極的に話しかけてみよう。いろいろと教わることは多いはず。

――なるほど。そこから20年近くの間に変わってきた点はありますか?
基本のラインは、始めた時からあまり変わっていないですかね。この店を立ち上げてからは一度も海外買い付けに行っていないし、たまに向こうの付き合いのあるディーラーから買ったりはしてますけど、今は持ち込みの買い取りがメインになっているんですが。有難いことに、ウチの特色に合ったモノを持ってこられる方が多くて助かっていますね。

――お客さんが、手放す際にもWORKSHOPらしいレコードやCDをお店に持ってこられると。
そうですね。そこはホントに感謝しています。

――2016年の秋に現在の場所に移転してからは、来られるお客さんに変化などはありましたか?
前の店舗に来てくれていたお客さんはほぼ来てくれてはる感じがしますけど、やっぱり新しいお客さんがだいぶ増えましたね。演歌を探しているようなオジさんやオバさんも来はりますし、すごく熱心に探しているから“何をお探しですか?”と訊いてみたらクリストファー・クロスと言わはるような、昔のヒット曲が懐かしいからということで来られた年配の方とか。前の場所ではなかなか来なかったようなお客さんも増えましたね。あとは、下の階の【100000tアローントコ】さんから若いお客さんが流れてきたり、隣のビルのホットラインさんから(日本盤の)帯好きの人も廻ってきたりとか。やっぱり3軒が並んでいるので、回遊性があるのを感じます。

――かなり強力なハシゴ・ルートが出来上がっていますよね。
前は場所も手狭でバックヤードもなかったので、在庫の一部を朝に来て店の外の階段のところに逃がして夜にそれを中に入れて帰るという作業がしんどくなってきていて、ホントにここでは限界やなという時に、たまたま“京都レコード祭り”の打ち上げて【100000tアローントコ】の加地くんと話していて、ココが開くけど苗村さん一回話を聞きにくる?と言ってくれて。でも、中古レコード屋が同じビルに2軒も入っていいのかなと言ったら彼が聞いてくれたら全然OKやという返事で、加地くんと一緒に面接に行ったんです。なので、加地くんにはすごく感謝しています。コレは載せておいてください(笑)

――わかりました(笑)。移転してから増えているジャンルなどはありますか?
日本人モノの買い取りは、以前より増えているかもしれないですね。


実はこの日、壁にかかっている小沢健二のLIFEが取材中に売れる現場に遭遇。高値のレコードが売れていく様に、しばし沈黙。

――京都ということでよく出てきやすい傾向の強いレコードなどはあるんですか?
僕はヨソでやったことがないからわからないですけど、浅川マキのレコードは京都はよく出てくる気がしますね。あとは佐井好子とかも、同志社の卒業生で京都はまだ出やすい感じがあって、まあまあ入ってきたりしますよ。他ではブルース系はやっぱり強くて、ブルースのいいレコードを持っている人はまだ多いと思います。

――WORKSHOP records はソウルにしてもアヴァン系にしてもダブにしても、どこか一貫したテイストや繋がりが感じられて、その品揃え全体から感じられる美学的な部分もまた魅力だと思います。
例えばジャンルが全然違っても、どこかで共通する部分が見える時があるじゃないですか? で、全然バラバラやと思っていたモノが一本の線で繋がる時というのがあって、繋がってしまうとそれまでダメやったものも逆に聴けるようになったりとか。だから、結局は一本の糸で繋がっているなとは思うんですよね、どんなジャンルの音楽でも。

――では最後に、お店として今後に強化していきたい部分などを訊かせてもらえれば。
今はただ流れに任せている感じですけど、流れに任せつつもそれなりの色が出していければと思っていますね。お客さんが持ってくる品物で決まりますので、お客さんがお店を作ってくれてはるという部分もあるかもわからないです。とりあえず今は、店の純度を高めたいという気持ちはすごくあって、引っ越してからバタバタして手を付けられていなかった7インチのシングル盤なども、できるだけ時間を見つけて今までに貯めてきたものを本格的にテコ入れして出していきたいと思っています。


綺麗に整理された店内。以前の店舗は気に入っていたけれども手狭になって、こちらへ。今は、エレベーターもあるので快適。

【そこはかとなくエキゾチックな3枚】

Martin Denny『Forbidden Island』

まずは定番のマーティン・デニーですけど、僕の中でのエキゾチック・サウンドと言えばコレで。今聴き直してみても斬新なところがあって、このニセモノ感がたまらないですね。このアルバムは有名な『クワイエット・ヴィレッジ』の前の年(1958年)に出たアルバムで、一時期はモンド・ブームなどでよく聴かれましたけど、そういうものを超えて今でも聴かれるべき音だと思います。

Bob Kojima And His Orchestra『Moshi-Moshi』

アメリカで1960年に発表されていた作品ですけど、向こうに住んでいる日本人向けに作られたのかどうなのか、どういう意図で制作されたのかイマイチわからないところがイイなと(笑)。基本的にはジャズっぽいアレンジですけど、三味線響く「チャンバラ・パレード」という曲から拙い日本語の歌入りの「黄色いサクランボ」に、最後はマーティン・デニーっぽい童謡メドレーもやっています。

Ramsey Lewis『Mother Nature’s Son』

コレはめちゃくちゃ好きなアルバムなんですけど、基本はビートルズ『ホワイト・アルバム』の収録曲を全曲でカバーしていて。『ホワイト・アルバム』って聴いていても楽園的なイメージはないですけど、この作品ではそれを見事に楽園化していて、ジャケットの雰囲気の通りのサウンドにしています。アレンジが絶品で、ペリー&キングスレイみたいな電子音が入ってくる部分もあります。

【今までにガツンとやられた3枚】

V.A.『The Mississippi Blues No.2 The Delta 1929-1932』

1枚目は映画『さすらいのレコード・コレクター』にトリビュートして、この戦前のミシシッピ・ブルースのコンピ盤を。コレに入っているサン・ハウスの「Dry Spell Blues」という曲が超強力で、むちゃくちゃガツンとやられた曲ですね。
ギターのリフとだみ声ボーカルの絡みが、ホンマに弾き語りか?という位に強烈で、キャプテン・ビーフハートとかお好きな方には絶対に聴いてみてほしいですね。

Roland Kirk『Volunteered Slavery』

ローランド・カークは『Slightly Latin』というアルバムとかも相当ガツンとやられたんですけど、一番最初に聴いて衝撃を受けたのはこの作品で、今でも特別な一枚です。カークは好き過ぎて、学生の頃にやっていたバンドでも“カーク大佐”というバンド名を付けてやっていたくらいなので(笑)。ジャズは基本的にミンガスの流れのものが好きですね。もちろんサン・ラとかも好きですけれど。

Winston Edwards & Blackbeard 『Dub Conference』

こういう名義にはなっていますけど、実質的にはデニス・ボーヴェルの作品と捉えていいアルバムです。レゲエのダブは昔から一貫して好きで、できればコレは売りたくないという盤が一番多いジャンルかもしれないです(笑)。ボーヴェルがポップ・グループやスリッツをプロデュースした時期の80年に出た作品で、すごく攻撃的でニューウェイヴの要素なども入っているような派手な音ですね。

WORKSHOP records

WORKSHOP records

住所:京都市中京区上本能寺前町485 モーリスビル3階
電話:075-254-6131
営業時間:12:00 〜 20:00
定休日:木曜
URL:https://r-p-m.jp/shop/workshop-records

Writer 吉本秀純
撮影 米田真也

世界中のレコードを、その手の中に
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