マイアミ・レコード掘りの旅 ⑵ ディグ編

WRITER
白波瀬 達也

 「マイアミ・レコード掘りの旅 ⑴ バックグラウンド編」でマイアミの地政学的特徴を紹介したので、⑵ディグ編では実際に訪問したレコード店の紹介をさせていただく。マイアミには訪問すべきレコード店が多数存在するが、特定のエリアに集中していないのが難点。公共交通も発達していないので基本は車での移動。ただし現在はUber(配車アプリ)を使えば簡単に目的地にたどり着くことができる。タクシーが拾いにくい郊外でもUberがあれば心配無用だ。

MUSEO DEL DISCO

 マイアミで筆者が最も大きなインパクトを受けたのが空港近くに位置するMUSEO DEL DISCO。同店が位置するコーラル・テラスというエリアは住民の80%以上がラティーノ。それを反映するかのように店内にはラテン音楽が各国別に網羅されている。中古の商品がないのが残念だが体育館のような広さの店舗に大量陳列されているレコード、CD、DVDはラテン音楽好きなら垂涎ものだろう。MUSEO DEL DISCO は「AMAZONで手に入らないような音源が見つけられる」と地元客はもちろんラテン音楽の好事家からも評判だ。

 なお筆者はラテン音楽にさほど明るくないので、同伴してくれたマイアミ在住のコロンビア系アメリカ人の勧めに従いARTHURO “ZAMBO”CAVERO(ペルーのアフロ系歌手)やALEJANDRO DURAN(コロンビアの歌手兼アコーディオン奏者)のCDなどを入手した。店員も親切なので希望を伝えさえすれば、膨大なカタログからベストなものをセレクトしてくれるはずだ。

MUSEO DEL DISCO
1301 S.W 70th Avenue,
Miami, FL 33144
http://museodeldisco.com/SSL/index.aspx

YESTERDAY AND TODAY RECORDS

 YESTERDAY AND TODAY RECORDSはマイアミのインディペンデント系のレコード店の老舗だ。1981年に開店した同店はロック、プログレ、ジャズ、ソウルなどの中古レコードを主に扱う。YESTERDAY AND TODAY RECORDSが位置するオリンピア・ハイツはラティーノの割合が80%近くにも及ぶエリア。当然、ラテン音楽も充実している。

 ドーナツマガジンの読者におなじみの名盤DONALD BYRD / STREET LADYは17ドル、MARLENA SHAW / WHO IS THIS BITCH, ANYWAY?は25ドルで買えた。このように定番商品が日本より幾分安いのが嬉しい。しかし、ここはマイアミ。「らしい商品」こそディグしたい。というわけでコロンビアのコンポーザーとして知られるFRUKOのLPやブエナ・ビスタ・ソシアルクラブで再注目されたキューバの歌姫OMARA PORTUONDOが1970年代にリリースしたLPなどを購入。日本だと滅多に見ないし、仮にあってもかなり高額。このようなレコードを30ドル以下で買えるところがYESTERDAY AND TODAY RECORDSの魅力だ。

 余談になるが同店の隣にあるマイアミ発祥のチェーン店DON PAN INTERNATIONAL BAKERYもオススメだ。筆者はキューバン・サンドイッチにトライしたが、サイズがでかすぎて食べきれず半分お持ち帰り。ラティーノの立派なガタイに妙に納得した次第。チャンスがあればこちらにも立ち寄ってほしい。

YESTERDAY AND TODAY RECORDS
9274 S.W. 40 ST
Miami, FL 33165
http://www.vintagerecords.com

BROOKLYN VINTAGE & VINYL

 BROOKLYN VINTAGE & VINYLはマイアミの中心部から少し西側にあるアラパタというエリアにある中古レコード店。両腕にびっしり入ったタトゥーが印象的なDIANE PEREZが店主だ。店名に「BROOKLYN」とあるので由来と尋ねてみたところ、彼女が敬愛するBEASTIE BOYSの出身地にちなんでいると教えてくれた。なお、当の本人は生粋のマイアミっ子だそう。

 他のエリアと同様、アラパタもラティーノの集住エリアだが、BROOKLYN VINTAGE & VINYLはオルタナティブロック、パンク、テクノなど、マイアミの他店に比べてインディー色が強いセレクションだ。一方で地元に根ざしたローカルな雰囲気もあり、ジャズ、ソウル、ラテンなど扱うジャンルの幅は広い。全体的に値段もリーズナブル。筆者は同店でNORMAN CONNORS / MR. Cを7ドルにて購入することができた。店内にはソファーがあり、ゆっくり視聴することもできるのでオススメだ。

BROOKLYN VINTAGE & VINYL
3430 NW 7th Ave
Miami, FL 33127
https://www.facebook.com/brooklynvintageandvinyl/

LUCKY RECORDS

 ファニーな猫のロゴマークが印象的なLUCKY RECORDSはマイアミの新たな流行発信拠点となっているウィンウッドにある。同店は地元のDJ YNOTとニューヨークのレコード・レーベルNATURE SOUNDのオーナーDEVIN HORWITZによって2017年に設立された。このエリアはもともとプエルトリコ系の移民と黒人が多く暮らす工業地帯。すぐ近くには大規模なホームレス支援団体の拠点があったり、野宿状態と思しき人々が路上に佇んでいたりする。

 一方、近年はウィンウッドがマイアミビーチに変わる新たな開発対象になっており、同地にあった倉庫群が流行のレストランやアート・ギャラリーにリノベーションされるなど、周辺環境は激変しつつある。LUCKY RECORDSこのような地域特性を象徴するようなレコード店だ。同店はアジア料理を提供する洒落たレストラン「1-800 LUCKY」を併設させており、主な客層は感度の良さそうなヒップスター。彼らの好みに合うように中古と新品のレコードがセンス良くセレクトされている。

 取り扱うジャンルの中心はソウル、R&B、レゲエ、ジャズ、ロック、ダンスミュージックなど。ヒップな佇まいの割に価格帯は良心的。フリーソウルのクラシックMIDNIGHT AT THE OASISを収録したMARIA MULDAURのLPが3ドル、ECMからリリースされたEGBERTO GISMONTIのSOL DO MEIO DIAが7ドルといった具合だ。
 先に紹介した3店舗に比べるとローカル色は薄いが、一服しながら最旬のカルチャーを味わうのには最適なレコード店だ。筆者にとってはLUCKY RECORDSのようなヒップな店と貧困地域の雰囲気を残す周辺環境のコントラストがマイアミの現在を象徴しているように思えた。

LUCKY RECORDS
143 NW 23rd St,
Miami, FL 33138
http://luckyrecordsmiami.com

白波瀬 達也(社会学者 / フィールドワーカー)

白波瀬 達也(社会学者 / フィールドワーカー)
都市問題・地方文化に関心を持つ社会学者。主著『貧困と地域 あいりん地区から見る高齢化と孤立死』(2017年、中央公論新社)。大学時代は音楽研究部部長。「三度の飯よりレコード掘り」が信条。ジャズ、ソウル、ラテン、レゲエ、ヒップホップ、ハウス、アンビエントなどを好む。日頃は研究活動に従事しつつ、不定期で大阪や奈良でアナログレコードにこだわった音楽パーティを開催している。
http://collective-music.com
http://kunimikojicla6.tumblr.com

世界中のレコードを、その手の中に
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