親子三代続く京都の老舗レコード店「クレモナ」

WRITER
白波瀬達也

京都市は人口規模に比べてレコード店が多いことで知られる。2013年以降、京都中の店舗が大集結する「京都レコード祭り」が開催されるなど、新しい動きも活発だ。筆者自身、市内の複数のレコード店にお世話になっているが、なかでも頻繁に行くのは上京区にある「クレモナ」。ジャズを中心にロック、ポップス、歌謡曲などのアナログレコードをリーズナブルな価格帯で扱う名店だ。

リーズナブルな価格が魅力。ジャズの品揃えが充実している。

■戦前から続くクレモナの系譜

京都のレコード店の多くは、三条から四条にかけての市街地にあるが、クレモナはそこから少し北側に位置する今出川の落ち着いたビルの3階にある。店主の寺井正雄さん(1968年生まれ)がこの場所に店を構えたのは2016年4月。まだ新しい店だ。しかし、京都で長年レコードに親しんできた人々にとって、クレモナはなじみ深い名前でもある。というのも正雄さんの祖父の代からこの店名でレコードを販売してきた歴史があるからだ(ちなみにクレモナとはイタリアにある街の名前で、ヴァイオリン職人が多く暮らす「聖地」として知られる)。

正雄さんによれば、クレモナの原型は、祖父、寺井宗一さんが1935年に創業した「テライ蓄音器店」(京都市左京区)にまでさかのぼる。この店ではクラシック音楽のSP盤をメインに扱う、京都屈指の老舗だったが、戦時体制下で閉店を余儀なくされた。

店主の祖父が経営していたテライ蓄音器店

一方、戦後間もない1946年に同業者と共同経営という形で下京区寺町にレコード店「クレモナ」を立ち上げ再起を図った。しかし同店は長く続かなかった。1952年に宗一さんが病死したため、やむなく閉店となったのだ。そして共同経営者が独立し「津田蓄音器店」を立ち上げた。

■二代目クレモナの誕生

創業者の寺井宗一さんが死去した時、息子の敏博さん(正雄さんの父)は高校在学中だったが、卒業するやいなや津田蓄音器店に入社。そこでレコード稼業のイロハを学んだ。敏博さんはしばらくレコード店に雇われる形で生計を立てていた。だが結婚後、子どもが増え始めると、家族を養うだけの収入を得ることが難しくなった。そこで1974年に一念発起して独立。左京区の修学院駅のすぐそば、北山通り沿いにレコード店を構えた。新しいレコード店の名は再びクレモナ(「のちのクレモナ修学院店」)となった。

店主の父が開店した二代目のクレモナ

この店ではオールジャンル(ジャズ、ロック、フォーク、歌謡曲など)の新譜を中心に展開した。一方、当時は中古レコードを扱う店は少なかった。そこで1980年代中頃に新店舗「クレモナ京極店」を開いた。 正雄さんはその頃の様子を次のように述懐した。

「ちょうどCDが出始めの頃で、父とほんまに普及するのかなって話をしていたことを覚えています。実際、レコードとCDが入れ替わるのには結構時間がかかりました。中古を扱うレコード店としては、うちとかHOTLINEが早い方だったと思います。積極的に買い取りを進めていって、京極店は中古レコード店らしくなっていったんだと思います」。

今では京都に多くの中古レコード店が存在するが、クレモナ京極店はその草分け的存在でもあったようだ。

次ページ:寺井正雄さんが3代目店主になるまでの軌跡

白波瀬 達也(社会学者 / フィールドワーカー)

白波瀬 達也(社会学者 / フィールドワーカー)
都市問題・地方文化に関心を持つ社会学者。主著『貧困と地域 あいりん地区から見る高齢化と孤立死』(2017年、中央公論新社)。大学時代は音楽研究部部長。「三度の飯よりレコード掘り」が信条。ジャズ、ソウル、ラテン、レゲエ、ヒップホップ、ハウス、アンビエントなどを好む。日頃は研究活動に従事しつつ、不定期で大阪や奈良でアナログレコードにこだわった音楽パーティを開催している。
http://collective-music.com
http://kunimikojicla6.tumblr.com

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