マニラ・レコードディグの旅 ⑵ マンダルーヨン&ケソン編

WRITER
白波瀬 達也

マニラ首都圏のレコード店は都心部のマカティ市以外にも多く存在する。今回筆者が実際に訪問した中でも特筆すべきところがいくつかあったのでマンダルーヨン市とケソン市に分けて紹介したい。マニラ首都圏は電車で移動できるところは限られてくる。したがって以下に挙げるレコード店も基本はGrabという配車サービスを使うと良い。なお、フィリピンは交通インフラが未発達なため、朝と夕方に道路が混雑しがちだ。とてつもない渋滞に巻き込まれるのもマニラ首都圏のリアルを味わう旅の経験だが、時間を有効に使いたい場合はラッシュアワーを避けることをオススメする。

今回筆者がマニラのレコード点を訪ねるにあたり、インターネット記事を事前に収集した。しかし実際に行ってみると移転していたり、店舗がなくなっていたりする場合が少なくなかった。どこの国のレコード店も同様だが実際に稼働しているレコード店はFacebookやInstagramのアカウントを持っていることが多いので、あらかじめチェックしておくと良いだろう。

■ TRESKUL RECORDS & CAFE

マニラ首都圏の都心部マカティ市を北上し、パッシグ川を渡るとマンダルーヨン市になる。この街にマニラ首都圏最高峰のレコード店、TRESKUL RECORDS & CAFÉがある。同店はジャズ、ソウル、ロック、ニューウェイブ、ヒップホップ、フィリピンを中心としたアジア音楽、和モノなどをDJ目線で幅広くセレクトしている。カフェスペースを併設させた店舗はとにかく居心地が良い。是非一服しながらレコードを探してほしい。筆者はマニラ首都圏で多くのレコード店に足を運び、フィリピン音源を探していたのだが、十分な知識を持ち合わせていなかったので、このレコード店の簡潔かつ的確なレビューが非常に役立った。

このレコード店を運営するのはフィリピンでは著名なDJ兼トラックメイカーのARBIE WON。幸い筆者はARBIE WONが月に一度、マカティ市のKartel Rooftop BarでおこなっているDJイベントに足を運ぶことができた。米国のソウル・ファンクを基軸にフィリピンや日本の音源を織り交ぜるプレイは見事。雄大な夜景を見ながらEPOや山下達郎が流れた時の感動は筆舌に尽くしがたいものがあった。

ARBIE WONは自身のレコードレーベルI FOUND IT! RECORDSから1970年代後半から1980年代前半に活躍したフィリピンのファンクバンド、SSS KOFFEEの7インチ音源を再発する予定だ。このレコードは日本でも発売予定なので是非チェックしてほしい。

TRESKUL RECORDS & CAFE
641 Boni Avenue Cifra Buiilding, Mandaluyong
https://ja-jp.facebook.com/treskul/
https://www.instagram.com/treskulrecords/?hl=ja

■ SATCHMI

マンダルーヨン市のレコード店でもう一つ紹介したいのがSMメガモールにあるSATCHMI。人口急増中のマニラ首都圏には近年巨大なショッピングモールが次々できている。SMメガモールはその代表的な存在だ。日本で言えばイオンをイメージすると分かりやすいだろうか。このようなショッピングモールにレコード店が入っているのが面白い。TRESKUL RECORDS & CAFÉがDJをはじめとするコアなレコード好きにアピールする店とするならば、SATCHMIはレコードに初めて触れる人たちへの入り口になるような店だ。カフェスペースを併設させたヒップな雰囲気の店内では若い世代にレコードの魅力を伝える工夫がたくさん見られる。店内には低予算で組めるレコード、アンプ、スピーカーが展示され、壁にはレコードの使い方を説明したイラストが掲載されている。

新聞紙に包まれ中身が見えないレコード(ミステリー・レコード)が300ペソで売られていたのには舌を巻いた。いわばライフスタイルとしてレコードを楽しむきっかけを提供している店と言えそうだ。SATCHIMIはオールジャンルの新品レコードと中古レコードをバランスよく陳列している。国外の音源(大半がUS盤)を扱っておりフィリピン音源はない。ベーシックな音源が中心なので、ここに行かないと入手できないようなレコードは多くない。ただし中古レコードは基本的にすべて600ペソ均一(約1200円)と比較的リーズナブルなので一見の価値はある。ちなみに筆者はここでEL CHICANO / VIVA TIRADOとBETTY WRIGHT / BETTY WRIGHT LIVEを購入した。

ちなみにSATCHMIはポータブルのレコードプレイヤー「MOTORINO」を作っているメイカーでもある。日本では販売されていないようなので、同店に行く機会があれば、現地調達も検討してみてほしい。

SATCHMI
4F SM Megamall Fashion Hall, EDSA Cor Julia Vargas Ave, Ortigas Center, Mandaluyong
https://satchmi.com
https://www.facebook.com/Satchmi/
https://www.instagram.com/satchmiteam/

NORTHWEST ESTATE AND COLLECTIBLES

マンダルーヨン市のレコード店は最旬という言葉がふさわしい。一方、ケソン市のそれはオーソドックスな安定感がある。NORTHWEST ESTATE AND COLLECTIBLESはマニラ首都圏の数あるレコード店の中でも穴場中の穴場だ。まず立地が面白い。郊外の生活感のある住宅エリアにあり、外観からここがレコード店であるのか容易には分からない。恐る恐る扉を開けると広い店舗の本格的なレコード店だった。

NORTHWEST ESTATE AND COLLECTIBLESはオールジャンルを扱う「町レコ屋」的な雰囲気だが、フィリピンの商品の中心はUSのオリジナル盤。筆者はCURTIS MAYFIELD / SOMETHING TO BELIEVE INなどをかなりリーズナブルな価格で購入できた。この店のもう一つの魅力は1枚100ペソのセールコーナー。かなり在庫量が多いので掘り出しものがたくさん見つかるだろう。忘れずにチェックしておきたい。

NORTHWEST ESTATE AND COLLECTIBLES
170 K-1st Street, Diliman, Lungsod Quezon, Kalakhang Maynila
https://m.facebook.com/Northwest-Estate-and-Collectibles-166194386769424/

VINYL DUMP THRIFT STORE

もう一つケソン市にあるレコード店を紹介しよう。VINYL DUMP THRIFT STOREはクバオ・エキスポという地元客で賑わう商店街の一角にある。NORTHWEST ESTATE AND COLLECTIBLESと同様、町レコ屋といった風情。オールジャンルのUS盤を中心としながらフィリピンのレコードも少し扱っている。ただし、フィリピンのレコードは流通量が少なく全体的に高額なので、慎重に試聴しながら購入すると良いだろう。

なおこの商店街には骨董品屋が多くあり、そこに大量のフィリピン音源が存在した。特に7インチレコードは150ペソ均一(300円程度)と格安なので、気になる音源を「大人買い」するのに適している。少々荷物になるかもしれないが、ポータブルのレコードプレイヤーを持参し、その場で試聴するのもオススメだ。手が真っ黒になるのが必定なのでウェットティッシュの持参をお忘れなく。

VINYL DUMP THRIFT STORE
Cubao Expo, Gen.Romulo Avenue, Cubao, Quezon City
https://ja-jp.facebook.com/VinylDumpThriftStore/

 

マニラ・レコードディグの旅 ⑴ マカティ編はこちら

白波瀬 達也(社会学者 / フィールドワーカー)

白波瀬 達也(社会学者 / フィールドワーカー)
都市問題・地方文化に関心を持つ社会学者。主著『貧困と地域 あいりん地区から見る高齢化と孤立死』(2017年、中央公論新社)。大学時代は音楽研究部部長。「三度の飯よりレコード掘り」が信条。ジャズ、ソウル、ラテン、レゲエ、ヒップホップ、ハウス、アンビエントなどを好む。日頃は研究活動に従事しつつ、不定期で大阪や奈良でアナログレコードにこだわった音楽パーティを開催している。
http://collective-music.com
http://kunimikojicla6.tumblr.com

世界中のレコードを、その手の中に
  • Google Playでアプリをダウンロード
  • App Storeからアプリをダウンロード

関連記事


新着記事

すべての記事をdig!