ロンドン・レコード掘りの旅 ⑴ SOHO編

WRITER
白波瀬 達也

 この10年ぐらいの間、欧米ではレコード市場が年々大きくなっている。こうした傾向はイギリスでも顕著だ。2007年に21万枚の販売数だったレコードは、年々上昇し、2017年に410万枚まで急増。こうした現象は「ヴァイナル・リヴァイヴァル(Vinyl Revival)」という言葉で注目を集めており、街中にある多数のレコード店も活況を呈している。
 言うまでもなくなく、イギリスで最もレコード店が集まるのがロンドン。なかでも高密度に優良店が集中するのがSOHOだ。ここはロンドンのウェストエンドの中心部に位置する2.6平方キロのエリアで、カフェ、レストラン、ライヴエンターテイメント、ナイトスポットなどが充実した盛り場だ。
 SOHOはゲイタウンとしても有名で、ゲイクラブやゲイバーも数多く存在する。毎年開催されるPRIDE IN LONDONは数万人を集めることで知られる世界的なゲイパレードだ。この自由でエキサイティングな街の路面にレコード店がひしめく。SOHOおよびその周辺地域が観光地としての要素を持っているので、初めてロンドンに滞在する人にはオススメだ。以下では2018年9月に筆者が訪問し、印象的だった店舗を4つ紹介する。

SOUND OF THE UNIVERSE

 優れたコンピレーションのリリースで世界的に定評のあるレーベルSOUL JAZZ RECORDSのレコード店。クラシカルな雰囲気を漂わす茶色のタイルの外観がとにかくかっこいい。取り扱いは70年代のジャズ、ソウル、レゲエなどブラックミュージックが中心。今回の渡英で最も足を運んでみたいと思っていた店のひとつだ。
 1階では新品のレコードを扱っている。旧譜の再発が中心で、当然のことながらSOUL JAZZ RECORDSのカタログも充実。地階では中古レコードを扱っており、視聴も可能だ。ラインナップはディスクユニオン御茶ノ水レアグルーヴ館に近いが、価格帯はやはりやや高めだ。
 意外にもオススメは地階にある書籍コーナー。レコードと同様、中古と新品の両方を扱う。やはりブラックミュージックに関する本が多く、なかでもレゲエ関連本が充実していた。筆者はここでロイド・ブラッドリー(Lloyd Bradly)の「Sounds Like London : 100 Years Of Black Music In Britain」(2013年刊行)を購入した。


 タイトルが示す通り、ロンドンのブラックミュージックの長い歴史を移民やユースカルチャーの関わりから論じた極上の一冊だ(にロイド・ブラッドリーはレゲエの歩みを記した古典『ベース・カルチャー レゲエ〜ジャマイカンミュージック』の著者としても知られるイギリス屈指の音楽ライター)。
 ちなみにSOUL JAZZ RECORDSはジャマイカの名門レーベルSTUDIO ONE音源のコンピレーションで有名だが、この記事ではUKラバーズのコンピレーションを「Harmony, Melody & Style : Lovers Rock In The UK 1975-1992」を推したい。


 この盤にはSOUND OF THE UNIVERSE / SOUL JAZZ RECORDSの設立者であるスチュアート・ベイカー(Stuart Baker)による分厚いライナーノーツと写真を収録したブックレットが同梱されており、UKラバーズの展開が深く理解できる内容となっている。

SOUND OF THE UNIVERSE
Location: 7 Broadwick St, Soho, London W1F 0DA

PHONICA

 2003年に開店した新譜のダンスミュージックのレコードを扱うお店。一部CDの取り扱いもある。様々なジャンルを扱うが、なかでもハウスのラインナップが充実。日本で例えるなら東京のTECHNIQUE、大阪のNEWTONE RECORDSに近い感じの品揃えか。Tシャツなどオリジナルグッズの他、レコードバッグなどのギアーも充実している。ロンドンで現行のダンスミュージックを求めるならPHONICAが最適ではないかと。試聴機が多数あり、並ぶことなくチェックできる。ただし一日につき6枚まで。

PHONICA
https://www.phonicarecords.com
Location: 51 Poland St, Soho, London W1F 7LZ

SISTER RAY

 1987年に開店した老舗中古レコード店。1階では中古CDを、地階では中古レコードを扱っている。オールジャンルだが目利きの良さを感じるセレクトで多くの客を集めている。イギリスらしくUK出身のアーティストの作品の取り扱いも充実している。ただし地元だからといって安いわけではない。20ポンド(約3000円)ぐらいの価格帯のLPが商品の中心だ。日本のレコード店では日本人アーティストの作品が比較的安く買えるが、そのような状況を想定してはいけない。筆者はFAIRGROUND ATTRACTIONの名作「THE FIRST OF MILLION KISSES」のオリジナルLPを5ポンド(約700円)ぐらいで買えるのではないかと高を括っていたが認識が甘かった。なお、ウェブショップは存在せず、あくまでも店頭販売が中心のようだ。

SISTER RAY
Location: 75 Berwick St, Soho, London W1F 8RP

RECKLESS RECORDS

 1984年に開店したオールジャンルの老舗中古レコード店。SOHOでは最も歴史のあるレコード店の一つで、アメリカのシカゴの支店も有名だ。ラインナップはSISTER RAYと同様、気の利いたオールジャンル。アメリカおよびイギリスのジャズ、ロック、ソウルなどが中心。価格帯は日本の一般的な市場に比べるとやや高めだが、客がひっきりなしに出入りしていたことから界隈では高い信頼を得ている名店と思われる(価格高騰が進む欧米のレコード市場のなかではfair priceという位置付けのようだ)。特定の世代や性別に偏ることなく老若男女が集う様子から、イギリスのレコード事情がホットであることを再確認できた。ホームページからFacebookやInstagramにアクセスできるので、そこで雰囲気をチェックするのもオススメだ。

RECKLESS RECORDS
https://reckless.co.uk
Location: 30 Berwick St, Soho, London W1F 8RH

白波瀬 達也(社会学者 / フィールドワーカー)

白波瀬 達也(社会学者 / フィールドワーカー)
都市問題・地方文化に関心を持つ社会学者。主著『貧困と地域 あいりん地区から見る高齢化と孤立死』(2017年、中央公論新社)。大学時代は音楽研究部部長。「三度の飯よりレコード掘り」が信条。ジャズ、ソウル、ラテン、レゲエ、ヒップホップ、ハウス、アンビエントなどを好む。日頃は研究活動に従事しつつ、不定期で大阪や奈良でアナログレコードにこだわった音楽パーティを開催している。
http://collective-music.com
http://kunimikojicla6.tumblr.com

世界中のレコードを、その手の中に
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