レコード店とディスクガイド4軒目 Hawaii Record(大阪・中津)

WRITER
吉本秀純

関西を拠点にDJとして活動する店主が、ミックスCDを販売するレーベルの発展形として2000年代初頭に大阪・中津の小さな商店街の一角にオープンさせたHawaii Record。洋楽メインだった当初から徐々に邦楽中心の品揃えにシフトし、最近のシティ・ポップ系の“和モノ”再評価の気運が高まる前から、その新旧の良質な作品を独自のスタンスでキャッチして積極的に紹介してきた。現在に至るまでのお店の変遷と、その大きな転機となった音楽家との出会いなどについて、店主の久保さんに語ってもらった。

街のレコード屋としてちゃんと紹介していく

――始まりは、ご自身を含むDJのミックスCDを販売するハワイレーベルが実店舗に発展していった感じでしたよね。
そうですね。もともとはDJやミックスDJをやっていることの延長だったのと、店舗をオープンしたのが16〜7年前なので、前のレコードブームの名残りがまだあった頃やったんですよ。だから、当時は洋楽のR&Bやヒップホップ、テクノが流行っていて12インチ盤が中心だったのが、今は和モノでアルバムが中心になって完全に売れ筋が変わっているし、店をやり始めた頃はまだフリーソウルなども人気があったから『サバービア』に載っていたレコードを品揃えすればいいのかとか、試行錯誤をしていましたね。でも、その後にちょっと世の中が変わってきたし、自分もレコードとの向き合い方みたいなものがわかってきたので、最近は独自の路線を出せるようになってきたのかなと。

――オープン当初は90年代と地続きな感じだったと思います。
うん、その頃にすでに90年代再評価みたいな(笑)。オープン当初から和モノも置いていたけどそこまで動いてなかったし、今のシティ・ポップのブームも当時のフリーソウルの日本版と僕は思っているけど、以前は歌い方がちょっとでも歌謡曲っぽかったらアウトという感じやったから、山下達郎はイケるけど大貫妙子はダメみたいなところがあって。それが今は逆の方が好まれる。

店内には所狭しとレコードのほかにも音楽雑誌、雑貨なども。UAやオザケンといった90年代にヒットしたアルバムなども数多い。

――現在のように邦楽〜和モノ中心にシフトしていく契機になったのは、何だったんですか?
ウチの転機としては、10年くらい前にYossy Little Noise Weaver(以下YLNW)とか名古屋のGuiroが出てきたことがすごく大きくて。なんか世の中のムーヴメントに追随していくよりも、自分たちで作り上げていくことの方がレコード屋の使命やと思うと、むしろこういう音を街のレコード屋としてちゃんと紹介していくのがウチみたいな店の役目かなと思って。例えば、フリーソウルが出てき始めた頃に共感しつつイイなとトキメイた感じにも近かったし、この先にこういう新しい音楽が出てくるんやという予感がしたんですよね。

――2組ともカテゴライズはしにくいけど音楽性が高い良質なグループですね。
Guiroはceroが敬愛するバンドとして後に広く知られるようにもなりました。
その頃は自分自身がやっていたイベントでも、流行っている海外のヒップホップやR&Bにそれに合うような日本人の曲をどう混ぜていくかということをやっていたし、レコード屋としてもそれをやっていたつもりだったけど。そのYLNWとGuiroで変わったというか。“こっちの方が新しいんやよ”ということで、こっち(邦楽の新しい動き)に軸を移すようになっていた感じかな。

――なるほど。そこから新旧の邦楽モノをより独自に掘り下げていく方向に。
あと、ジャンルは違うけど『obscure sound[オブスキュア・サウンド] 桃源郷的音盤640選』のような感じもわかるなというか。ニューウェイヴとかニューエイジを時代によって変わった価値観で捉えて新しいサウンドとして提案していくのと同じように、昔に自分が聴いていた薬師丸ひろ子の『古今集』という捕らえどころがないアルバムを聴き直してみたり。いろんな音楽を聴けば聴くほど音楽的な要素の解析はできるようになってくるけど、それがわからへん(解析しきれない魅力がある)作品が凄いなとなって、吉田美奈子がプロデュースした飯島真理のアルバムなどもおもしろいと思うようになってきて。そのあたりを自分の中で解析し切れていないままでも伝えていきたい、となっているのが最近です。

レジカウンター前には、ジャンルで分けられた棚があるけれど、久保さんと話をする中で欲しいものを買う方が、お店の個性を存分に味わうことができそう。

――そのあたりはまだ誰も手を付けていない部分だと思いますが、最近に再評価が進んでいる80年代の邦楽モノと紙一重のところにある作品でしょうね。
それこそ菊池桃子のラ・ムーとかも、当時は中途半端な感じというか(笑)。ブラコンとしてすごく良い内容だけど、歌がヘタやみたいな聴き方しかされなかったし。

大阪・中津の商店街の一角にあるのが、Hawaii Records。パン屋さんのほかにも、若い店主が営む店もちらほらあり、界隈を散策がてら訪れるのも良し。

――時代の流れとしては、新譜にしても旧譜にしてもハワイレコードが10年くらい前から追求してきたところに向かってきていますよね、確実に(笑)。
そう。でも、こんなにこっちに来てるんやというのが逆に怖くて(笑)

――シンリズムやスカートが登場してきた時も、かなり早い段階から推されていましたし。
ただ、YLNWもGuiroも10年ほど前に知った後はリリースが止まってしまったので、しばらく待たなければいけなかったけど(笑)。その後にceroや知り合いを通してシンリズムやスカートのことも教えてもらって、やっぱり新しい人が出てきていると思えたし。その間にYLNWもハナレグミやミスチルのサポートなどで活躍するようになって、今となっては元デタミネーションズの〜ではなくてちゃんとYLNWの〜と認知されているので、世の中はいい感じになってきているというか(補足:YLNWは7月4日に久々なる新作アルバム『Sun and Rain』を発売)。どの音楽家にしても、誰かの真似やジャンルとか何かのムーヴメントに関係なく、本質的に素晴らしいと思えるものが新しい音楽として出てきているところがすごく励みになっています。

次ページ:時代性と店主の個性が見えるレコード紹介!

Hawaii Record

Hawaii Record
住所:大阪市北区中津3-17-11
営業時間:金・土のみ 15:00〜20:00
定休日:日〜木曜
HP:http://hawaii.main.jp

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