レコード店とディスクガイド12軒目 gapon records(神戸・元町)

WRITER
吉本秀純


神戸でもとりわけ集中して中古レコード店が軒を連ねる元町エリアの雑居ビルの3階に店舗を構え、米国のディーラーから定期的に入荷するUS盤を中心としたアナログ盤オンリーの品揃えでコアな音楽ファンの信頼を集めてきたgapon records。ロック/ジャズ/ソウルを中心に、発売当時にプレスされたコンディションの良好なUS盤にこだわった仕入れの姿勢とともに、日本にはあまり入ってきていないニッチな盤もギッシリと詰まった在庫豊富な店内では、リーズナブルな価格帯の良盤をメインとした品揃えで米国の中古盤店でレコードを掘っているような感覚を味わえる。神戸でも独自なスタンスで様々なアナログ・レコード好きのニーズに応え続けてきた同店について、店主・加賀瀬広基さんにお話を聞いた。

――gaponさんは入口に“CDは取り扱っていません”という注意書きが貼ってあるように、完全にアナログ盤オンリーでやっていらっしゃるお店ですが。
そうですね。最近は日本盤の買い取りの量も増えてきたのでそれを少し壁に並べたりもしているんですけど、基本的には海外のディーラーから買ったUS盤を中心に扱っています。

――お店はどういう経緯で始められたのですか?
僕は以前にどこかのレコード店に務めていた経験もなく、いきなり飛び込んで起業した方ですね。90年代の終わりくらいから個人的に海外からレコードを買っていて、神戸には海外から買い付けてという中古レコード店は少なかったので、何とか向こうの良いディーラーを捕まえて2002年12月からお店を始めました。どちらかと言うと原盤が高いものよりは、もう少し(日本の中古市場にはあまりないような)ニッチなものを仕入れようとしていて、最近だとウチでは程度の良い50~60年代のジャズのビッグ・バンドものをよく入れたりしているんですよ。

――ジャズだとクラブ・ユースなものか、ブルーノート原盤などの定評のあるモダン・ジャズ系に二極化して、そのあたりは入ってきていなかったりしますもんね。
海外からそのあたりを海外から仕入れるのはなかなか勇気が要るんですけど(笑)、年配の方が多いですけどないんだなというモノを探している方はいらっしゃって。数は多くないですけど、そういう特殊な方々のニーズにも応えながら続けています。

――海外買い付け中心の中古レコード店のなかでも、gaponさんの品揃えは独特だなと思います。
ただ、海外買い付けといっても僕はディーラーとのやりとりだけでやっているので、ちょっと珍しいケースかもしれないです。現地への買い付けはほぼ行ったことがないに等しいですし、15年以上取引しているメインのディーラーが向こうにいて、彼から月に2回送られてくるリストを見てメールでやりとりをしています。


店頭には100円以下コーナーもあり。

――なるほど。お店のホームページを見ているとかなり頻繁に新入荷があるので、相当にマメに海外へ仕入れに行かれているのかなとも思っていました(笑)。
昔は何百枚か溜まったところでまとめて送ってもらう感じでしたけど、今は小さい単位でも定期的にディーラーからモノが届きますから。基本的には週1回は更新しています。

――ロック/ジャズ/ソウルなどのUS盤が各棚にギッシリと詰まっているお店に来ると、いつも米国の中古レコード店でブツを探しているような気分にもなれます。
そう言っていただければ嬉しいですね。並べているモノのほとんどはUS盤ですし、リイシュー盤的なモノもあまり並べずに、60~70年代の向こうの最初の時期のプレスの盤で店頭を並べ尽くすというのがお店のコンセプトのひとつとしてあったので。

――やっぱりUS盤は、鳴りの良さが違いますし。
今は日本盤と両方を聴き比べたいという方が増えましたね。僕自身も最近はわりと日本盤もよく聴くようになって、違いを楽しむのがいいなぁと思うようになってきましたし。

所狭しと並べられるレコード、何枚あるのかわからないけれど一枚一枚丁寧にポップが書かれている。

――また、値段的にも2~3千円台のUS盤が主力で、あまり知られていないマイナーな盤でもリーズナブルな価格帯がメインなのもありがたいです。
高価なレア盤も入荷すれば出しますけど、どちらかと言うと2~3千円台のモノで止めたいなという想いもあって。今はもっと上がったり下がったりしているかもしれないですけど、昔はそれくらいの価格帯かなという感覚がありましたし、店頭に出しているモノの8割くらいは3千円を越えないくらいの値段でやっています。海外から入れてそれくらいの価格帯のレコードをメインにやっていくのは実は大変なんですけど、1~2千円台のモノをよく買われる方ってコレクション目的よりは実際によく聴いてはる人が多いと思いますし、そういう方に向けてUS原盤を海外から仕入れて、というのがウチのスタンスなのかなと。あと1~2千円台でも内容の良いレコードはまだまだいっぱいありますよ、というのを提示していければなという想いもあります。

――さきほどお客さんは年配の方がほとんど、とおっしゃっていましたが。
そうですね。10代や20代の方には敷居が高いイメージがあるのか、ほとんど来られないです。値段が安いコーナーを設けたり、千円以下で買えるものもそれなりに出していたりするんですけど、これだけあると情報が多過ぎてどこから手を付けていいのかわからなくなるのか、ちょっと見て帰ってしまう方が多いですね(笑)

――確かに、いきなり来るとレコードの大量さに圧倒される感じはあるかもしれません。

アーティストから購入したレコードに同封されていたメッセージ。それをきっかけに交流が始まったそう。

“こういうので何かないですか?”と訊いていただければガイドさせてもらいますし、具体的に探しているタイトルがあればどの棚に何があるかはすべて管理しているので、遠慮なく声をかけてもらえればと。

――お店で一番よく売れるのはどのあたりですか?
やっぱりロックの定番モノが一番よく売れますね。あとは、ジャズの内容がしっかりした盤というか、あまり紹介されていないような作品でも地道に聴いてらっしゃる方が、コレは持ってないなみたいな感じで買われていくことが多いですね。ロックでは、例えばドナルド・フェイゲンとかスティーリー・ダン関連は出せばすぐ売れますし、最初のプレスの盤でもボブ・ラドウィック(注:マスタリング界の帝王とも呼ばれる米国の名エンジニア)の刻印が入っているかどうかとか、マトリックス(注:レコード盤の内側に刻印された品番で、番号が若いほど最初にプレスされたもので音が良い)を見て買われるような傾向の50~60代のお客さんが多いです。

――最後に、今後にお店で力を入れていこうとされている展開などがあれば。
外盤専門店としてやっていてアレなんですけど、少しずつ日本盤の幅を広げていこうかなと思っていますね。どちらかと言うと、すでにUS盤やUK盤を持っている人をターゲットに、その次は日本盤もどうですかと提案していくような形で。日本盤でもいろんな時期のプレスのものが存在しますし、日本盤は一般的に純度の高いヴィニールを使っていて、トランスルシッド盤と呼ばれる蛍光灯にかざすと線が見えるようなレコードもあるので、僕自身もそういうことをいろいろと調べながら提示していければなと考えています。

このおびただしい数の在庫を加賀谷さんは記憶しているという。

【お店の定番な3枚】

Bill Labounty『Promised Love』

これが彼のデビュー作でAORの本などにも載っているアルバムです。以前はカット盤しか出回っていなくて幻のデビュー盤みたいによく言われていたんですが、15年くらい前にデッドストックが見つかって入手しやすくなりました。まだAORと呼ぶには早い70年代前半のシンガーソングライター的なテイストが残っていて、そのどちらでもないニッチな感じが面白い作品です。

Donald Fagen『The Nightfly』

定番中の定番ですけど、この盤は実はセカンド・プレスで、文字の色が水色なのが初盤なんですよ。さっき少しお話したように(インタビュー参照)マスターディスクとボブ・ラドウィックの刻印があるかどうかで探していらっしゃる方が多いのがこの作品で、両面に刻印があるものと片面にしかない盤もあるんです。その条件が全部揃っているレコードは最近高くなりましたね。

The Family Of Mann『First Light』

個人的にはハービー・マンがないと中古レコード屋っぽくないと思っていて(笑)、ウチにもたくさんあるんですけど、この作品は彼がやっていた唯一のジャズ・ロック・グループでの録音です。メンバーにはトニー・レヴィンやスティーヴ・ガッドなどもいて、ハービー・マンもメンバーの一人として演奏している異色の作品ですけど、シンセの使い方なども面白くていい盤です。

【店主・加賀瀬さんレコメンドな3枚】

Jeremy Steig『This Is Jeremy Steig』

唸り声なども入れながら演奏するフルート奏者で、尖がった感じとクールな感じが同居している好きな人です。さっきのハービー・マンにしてもポール・ホーンにしても、ジャズのフルート奏者には変わった人が多いのかもしれないですけど(笑)。このアルバムは69年にリリースした作品ですけど、この人のアルバムはどれも好きですね。

Ramsey Lewis『Maiden Voyage』

ラムゼイ・ルイス自体も好きですけど、この作品に関してはやっぱりチャールズ・ステップニーのアレンジがいいなと。彼が手掛けたソウル・グループとして知られるロータリー・コネクションの「Les Fleurs」も取り上げていて、どちらが先に出たものかわからないですけれど、こちらも流麗なストリングスなどが入ったいいヴァージョンです。

ピンク・フロイド『ピンク・フロイドの道』

コレは『Relics』というタイトルで71年に出た、まだサイケデリックだった初期のピンク・フロイドの編集盤の日本盤ですね。以前に南米からレコードを探しに来たというお客さんがいて、このレコードは持っているけど帯は持っていなかったみたいで、この帯の部分だけを4千円で売ってくれという方がいました(笑)。今はもっと高くなっていて、ウチでもそれなりの値段を付けていますけど。

gapon records

gapon records
住所:神戸市中央区元町通1-11-8 千成ビル3F
電話:078-334-2270
営業時間:11:30〜20:00
定休日:水曜休
URL:http://www.eees.net/Gaponrecords/ShopManager

Writer 吉本秀純
撮影 米田真也

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