ELLA RECORDS SHIMOKITAZAWA / 敏腕バイヤー葛原繁喜さんが作る新しい感覚のレコードショップ

WRITER
小川充

――下北沢はほかにもレコード店がいろいろあって、ライバルも多いかと思いますが、そのあたりについて懸念はなかったですか?
だいたい渋谷、新宿、お茶の水、下北あたりにレコード屋が多いのですが、でもそうしたレコードの町で一度お店をやってみたいなと、逆に思っていました。幡ヶ谷はレコード屋がなかったので、そうした中でほかのカフェやショップと一緒になって、町のひとつのカルチャーを作っていくという面白さがあったのですが、今度はそうしたレコード・ショップの集まりの中で、自分たちの力でどこまでやれるかというチャレンジの楽しさがあると思います。

――幡ヶ谷店と下北沢店の違いで何かありますか? 置いてあるレコードの違いとか、コンセプトとか。
基本的に商品のセレクトはそれぞれの店の店長に委ねているので、置いてあるレコードもその店長の個性や趣味によって違ってきます。幡ヶ谷店の店長はディスコとかが好きで、和モノとかディスコ系のチョイスが多いですね。ほかに定番もののロックとかアンビエントなどもありますが、全体的にはジャンルを絞ったセレクト・ショップ感が強いです。それに対し下北沢店は広くて、レコードの量も置けるので、こちらで売れる、売れないを決めつけるのではなく、お客さんの趣味に委ねていろいろ置くという風になっています。オールジャンルに万遍なく、年代も1960年代くらいの古いものから近年のクラブ系のものまで置いて、値段も10万円以上の高いものもあれば、安い特価品もあります。幡ヶ谷は路面店なので、お客さんが店に入って、自分の趣味に合わなければすぐ出てもいいわけで、その点でセレクト・ショップに合っている。でも下北店はビルの3階なので、わざわざ足を運んでもらう必要がある。せっかく来店してもらったら、たとえ欲しいものが見つからなくても、そうした労力に見合うようにしたい。それでお土産的なレコードも用意しておこうということで、1枚100円からの特価品コーナーがあるんです。

――下北店の壁に飾ってあるレコードを見ると、竹内まりやなど和モノから、レッド・ツェッペリンやマーヴィン・ゲイなど定番のロックやソウルがありますね。
時流から今は和モノはどうしても外せないというのはありますね。一方で流行りは流行りで追いつつも、ベーシックなものはしっかり置かないと、と思います。いつかブームは終わるし、今までもそうした流行り廃りは見てきているので、そうしたブームとは関係のないところでの定番は、店としてきちんと押さえておかないといけないと思います。それから下北沢という土地柄から、ロック系が多くなるのもあります。商品には店頭買い取りや国内買い付けなど国内盤から、アメリカなど海外の買付け盤が混ざっていますが、買い付けは3年前くらいがピークで、今は傾向として帯付きの有無を含めて国内盤が多くなってきています。それは、海外からのお客さんが多く来店するということもあって、国内盤がよく売れるようになっているからです。ここ2、3年で特に傾向が強いのですが、最初はebayなどで国内盤を買っていた海外のお客さん、それは主にレコード・バイヤーだったりするのですが、直接日本に来て買い付けした方がいいやということになり、うちのような店にも来店しているわけです。ELLA RECORDSはもともと通販からスタートしているので、ebayやヤフオクなどは有効活用してきているのですが、そうした土台は今も変わらなくて、ウェブ・ショップでしっかりと売り上げのベースを作ったうえで、実店舗で面白いことをやったり、いろいろな試みをやったりというビジネス・モデルができるわけです。店舗が売り上げ至上になると、どうしてもギスギスした感じになってしまうので、そのあたりでは緩い雰囲気を出してお客さも楽しめるように、そのぶんウェブでしっかりというのがうちのやり方です。

――ウェブ・ショップが発達した今、ヤフオクなどでは店舗で買うより安く商品を手に入れることができる場合もあり、実店舗はそうしたものに負けないものやサービスを提供していく必要がありますが、ELLA RECORDSはそのあたりどう考えていますか?
僕が現時点での中古レコード・ショップの完成形だなと思うのは、ディスク・ユニオンさんとフラッシュ・ディスク・ランチさんなんです。それぞれ全く違う店の形態で、ディスク・ユニオンさんはシステマティックなオペレーションでチェーン展開し、フラッシュさんは個人経営でオーナーの個性を前面に出す、いわば対極にある店と言えますよね。フラッシュさんは老舗で、アメリカのレコード・ショップの形を日本に持ち込んだ最初のひとつですが、かつて僕自身はそうした店の在り方を体験した後、いつしかそのやり方にマンネリを感じて否定してしまう時期もありました。でも、まわりまわって、そうしたレコード・ショップが今の若い人たちにとって新鮮に映る時期が来ているのではないかと。レコードを買うという目的はウェブでも果たせるけど、レコード・ショップでレコードを買うという体験は実店舗でないとできない。下町でもんじゃ焼きを食べるのと一緒なんです。そうしたレコード・ショップ体験ができる究極の店のひとつがフラッシュさんだと思います。そして、ELLA RECORDSはディスク・ユニオンでもフラッシュ・ディスク・ランチにもなれないから、そのふたつとは違う第3の道を探していくことが、この世界で生き残っていく方法かなと思います。うちとしてはお客さんにとって居心地のいいレコード・ショップでありたいなと思っていて、インテリアとかに凝るのもそのひとつです。今はやっていませんが、知り合いや仲間、または自分がいいなと思うカフェと提携し、コーヒーを飲めるスペースを作るとかを考えるかもしれません。

――レコード・バッグなどオリジナル・グッズも、そうしたお店の演出方法のひとつと言えますね。
下北沢店オープンのときに作ったレコード・バックは、ステューシーのデザインをやっていたケヴィン・ライオンズさんに頼みました。幡ヶ谷店のときはCEROなどのTシャツを作っているNANOOKさんにショッパーのイラストを頼んでます。あと、下北店のオープン・イベントでDJ MUROさんを呼んで、お店にあるレコードをプレイしてもらってその場で売って、ということもやりました。パドラーズ・コーヒーを借りて、MUROさんとMUROさんの娘さんがDJするというイベントをやったこともあります。DJイベントに関しては昼の時間帯に開催してますが、僕も含めて1990年代のクラブ・カルチャーを通ってきた世代は今は結婚して子供もいるという人が多いので、そうした同世代の人たちが子連れでも来られるようなイベントを意識しています。

――最後にお勧めのレコードをお願いします。
ちょうど買い取りで入ってきたレコードから3枚で、その人の趣味がいいなと思って選びました。ちょっとサブ・カルの匂いがするというか、そんな持ち込みがあるところが下北という町らしくもあり……。でも、こういった音の趣味って、まわりまわって今のメインストリームだったりするし、若い人にとって新鮮に聴こえるんじゃないかと。


Daniel Johnston / Laurie (1992)

片思いしているナードなレコード男子にお勧めです。

Ryuichi Sakamoto(坂本龍一) / The Sheltering Sky (Music From The Original Motion Soundtrack) (1990)

倦怠期のカップルにお勧めのレコードです(笑)。和モノのひとつと言えるかもしれませんが、その中でもアンビエント寄りのものでしょうか。

Blaine L. Reininger / Playin’ Your Game (1983)

クレプスキュールから出ていて、レコードが好きな人が「コレ、いいね」と言いそうなレコードです。バリー・ホワイトのカヴァーですけど、ちょっと変わったアレンジで。クレプスキュールとバリー・ホワイトの結びつきが、マヨネースとカップ・ラーメンとでも言うか(笑)、いいんです。ギャルに聴いてもらいたいですね(笑)。

 

ELLA RECORDS SHIMOKITAZAWA

ELLA RECORDS SHIMOKITAZAWA
〒155-0031
世田谷区北沢2-25-8 東洋興業ビル3F-3A-3
080-4057-0220
OPEN 14:00 CLOSE 20:00
月曜定休

By 小川充
Photos by Daisuke Urano

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