ELLA RECORDS SHIMOKITAZAWA / 敏腕バイヤー葛原繁喜さんが作る新しい感覚のレコードショップ

WRITER
小川充


幡ヶ谷と下北沢に店舗を構えるELLA RECORDS。もともと通販からスタートした中古レコード・ショップで、下北沢店は今年6月にオープンしたばかりの新しい店だ。吹き抜けの高い天井に、壁面は白く塗ったむきだしのコンクリートというシンプルだがスタイリッシュな空間に、レコードなどと一緒にソファやテーブルが配置されたお洒落なお店である。今回は下北沢店にてELLA RECORDS全体のオーナーである葛原繁喜さんに話を聞いた。

――ELLA RECORDSは最初に通販の専門店として2005年にオープンしましたが、どのような経緯でスタートしたのですか?
あの頃は実店舗のレコード・ショップが全盛期で、ウェブ・ショップは主流ではなかったんですよ。当時の僕は渋谷のレコード・ショップの群れの中をチョロチョロしていたひとりだったけれど、お店を作るようなお金もなくて……。お店をオープンするには、これまでの商売のやり方とは違う方法を見つけなければ食べていけないなと思い、単純に一番コストのかからないウェブからスタートしたわけです。

――ちなみにELLA RECORDSという名前は、エラ・フィッツジェラルドから来ているのですか?
よく言われるのですが、特にそうしたわけではなく、単純に語呂がいいからです。あまり店の名前にメッセージ性を持たせようとは考えてなくて。でも、僕の頭のどこか片隅にエラ・フィッツジェラルドがあって、たまたま思い付きであっても、知らず知らずのうちにそれが出てきたのかもしれないですね。

――そもそも葛原さんは中古レコードのディーラーというかバイヤーをやっていましたよね? アメリカなどで中古レコードを買い付け、それを日本の中古レコード・ショップに卸すという。
ええ、1995年頃からそうしたバイヤーを始めて、10年くらいやってきて、そろそろ自分でもお店をやろうかなと思っていました。やるのであれば従来の店舗ではなくて、当時ポツポツと出てきたウェブ系の商売のやり方でやろうと。

――その頃はまだウェブ・ショップが少なかったので、入り込む余地も大きかったわけですね?
例えばレコード祭りといった催事も、店舗を持たないウェブ・ショップは断られてしまう実店舗至上主義のような時代だったので、いろいろとチャレンジしがいはありましたね。

――ウェブ・ショップのオープンにあたり、告知などアピールにはかなり力を入れないといけないですよね?
いえ、実際のところオープンしたら一気に問い合わせが来たという感じですね。簡単に言えば日本全国からアクセスできるわけじゃないですか、店舗と違って。いろいろな人から様々な問い合わせが来て、それに伴って取り扱うジャンルも大幅に増えて、その中で自分でできる範囲のレコードを扱っていくようにしていきました。カントリーはできないけど、ジャズだったらできるという風に。そうやって試行錯誤しながらできることをやっていき、その中でルールとしては仕入れ値だけは安く抑えて、それを適正に手頃なプライスで売っていく。レア盤を仕入れたけど、高過ぎて売れないというようなリスクを避けるわけです。

――傾向としてはマニアックなレア盤、人気が高騰していたようなものより、オーソドックスなレコードや定番を中心としたわけですね?
当時はタイミングがよくて、ロサンゼルスに行ってもニューヨークに行っても、レコード・ディーラーがそうした定番ものを持て余していたんです。日本から来るバイヤーは皆、レア・グルーヴとかスピリチュアル・ジャズ、ヒップホップばかり買っていって、こうした普通のレコードは残ってしまうんだと。でも、そうした中にはブルーノートのレコードがあって、3ドルとか5ドルで買えてしまう。ニュージャージにある大きなレコード・ショップが潰れてしまうから、一枚3ドルでいいよとか。今はもうそんなことはないかもしれないですが……。

――当時の日本のバイヤーが見過ごしたり、避けていたようなものを買い付けてきたというわけですね。葛原さん自身はどんなジャンルを得意としていたのですか?
僕はいわゆるクラブ・ミュージック世代で、もともとフリー・ソウルから入って、ヒップホップの洗礼を受けたというような世代です。ヒップホップの元ネタのジャズやファンクを掘ったりして、クラブ・ジャズをかじって、デトロイトに買い付けに行けばデトロイト・テクノの中古を買い漁ったりと、そんな感じです。バレアリックの初期くらいまで、ずっとトレンドを追うように来ましたね。

――その後、今度は実店舗をオープンすることになりますね?
2010年頃ですが、最初の店は世田谷区の上町にオープンしました。もともと洋服屋だったところですが、店舗というものを体に馴染ませるために、極力リスクなく、自分の中で経験を得るために開きました。

――ウェブでやっていく中で実店舗をオープンしようというのは、どのような経緯があったわけですか?
ウェブで商売するのは、ある意味で簡単なことなんです。捨てる神があれば拾う神ありで、売れ残るようなものでも誰か彼かが買ってくれる。商売としては非常に楽ですが、僕自身はもうワンランク上のビジネスがしたくなって、ウェブがうまくいっているうちに別のことをやろうと思ったわけです。店舗だと限られたスペースで、ウェブだと10万枚扱えるものが、数千枚しか置けなくなる。アクセスも限定されてしまうし、でもそうした限られた条件の中でやることが、逆に挑戦になるかなと。あと、ウェブ・ショップで働く従業員にとっても、外と繋がる場を与えられるという意味でいいかなと思いました。


スタッフの石渡朔子さん(左)merimeriyeah (ドラム担当)、鈴木洋祐(右)しんきろうのまち(ヴォーカル、ギター担当)ほか

――そして、上町の店でステップを踏んで、次に幡ヶ谷に店をオープンしますね?
上町店オープンから半年後くらいですか、幡ヶ谷にパドラーズ・コーヒーというカフェがあって通っていたのですが、その近くに空き物件が出たというのをカフェのオーナーから教えてもらって、ここに来なよと誘われて引越ししました。幡ヶ谷にはレコード屋がなかったので、自分たちが店を開くのにちょうどよかったと思います。そもそも従来のレコード屋を真似た店を作ることは考えてなくて、もっと刺激のあることがしたいと思っていたから、外装や内装などを含めて店舗のプロデュースはパドラーズ・コーヒーにお願いしました。レコード屋がレコード屋として完結するのではなく、異業種を巻き込んでもっと面白いことができればと考えたわけです。そのオーナーはアメリカのポートランドに長いこと住んでいた人で、ポートランドにあるレコード・ショップのイメージを再現したみたいですね。什器などもその繋がりのインテリア関係の人に頼んだり、レコード業界とは別の異業種の人たちにお店の箱作りは頼みました。そうしたことが、今の若い音楽好きの人たちの感性にマッチしていったと思います。

――そして、今年6月に下北沢店がオープンしました。幡ヶ谷店が順調に進んできて、二つ目の店舗を開こうとなったのですか?
幡ヶ谷店はわりと手狭で、レコードもそれほど置けないので、もっと広い店をオープンしたかったというのが第一にあります。それでいろいろ店舗の下見をしていたのですが、この下北沢の物件を初めて見たとき、とても天井が高いことが目につき、それがいいなと思って決めました。天井が高くて開放感があるというのは、僕の中で店にとってとても重要なポイントなんです。それと下北と幡ヶ谷は近いので、お客さんもふたつの店舗をはしごしてくれるかなと。

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ELLA RECORDS SHIMOKITAZAWA

ELLA RECORDS SHIMOKITAZAWA
〒155-0031
世田谷区北沢2-25-8 東洋興業ビル3F-3A-3
080-4057-0220
OPEN 14:00 CLOSE 20:00
月曜定休

By 小川充
Photos by Daisuke Urano

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