レコード店とディスクガイド8軒目 100000tアローントコ(京都・市役所前)

WRITER
吉本秀純

レコードやCDのみならず書籍や古着なども充実したフリーダムにしてリーズナブルな品揃えで、京都らしくもこれまでにない独自のスタンスで存在感を放ってきた100000tアローントコ。店長の加地さんは、2013年に京都に点在するすべてのレコード店に声をかけ、今では定期的に開催されるようになった≪京都レコード祭り≫の発起人としても活躍。いち中古レコード店にとどまらない行動力と来るモノは拒まない度量の大きさで、京都の音盤シーンを活性化させている。そんな京都のレコード店界隈に新たな風を吹き込んでいる加地さんに、100000tアローントコの品揃えや最近の京都の音盤事情などについて語ってもらった。

――アローントコは、オープン当初からレコードやCDだけでなく音楽関連の書籍などもかなり充実していて他にない品揃えだなと思っていましたが。
もともとはレコード屋だけをやろうと思っていたんですけど、友達が引っ越すから本を処分したいと言うので軽く引き受けたらかなり大量にあって。それが今もキープされている状態ですね。音楽と関係のない書籍も多かったんですけど“ま、いいか”と思いつつ、音楽関連の本もあまり中古に出回らないような珍しいモノが結構ありました。

――最近は服なども増えてきていますよね?
そうですね、持ち込まれると拒否できないというか(笑)。(店内の一角を指して)今はそこに鍋もありますもんね(笑)。実際に服だけの大量買い取りというのもあって。昔に歌手として活躍された平山みきさんがよく買い取りで呼んでくれて、かつてはレコードも少しあったんですが、今はもう完全に古着屋として認識されていて(笑)。しかも全部黄色やん! と思いつつ、処分したいから来てと言われた時にお伺いしています。


レコード店なのに子ども服まで販売。7インチバック以外にも加地さんが言うように古着のほか生活雑貨なども並ぶ。

――平山さんのファンにはたまらない話ですけど(笑)。ところで、加地さんは今のお店以前にどこかのレコード店で働いていた経験はあるんですか?
今はもうなくなってしまいましたけど、(京都の)ビーバー・レコードで、バイトとして6年くらい働いていました(2009年に閉店)。ビーバー・レコードがサブカル色だけを濃縮したようなセカンドハンズという小さなお店を一時期にやっていたんですけど、そこの店主が僕の幼なじみで、バイトに空きができたから来えへんかと誘われて。

――なるほど。そこから京都のレコード店コネクションとも繋がって。
僕は大阪に住んでいたので、最初はそういうのが全然なかったんですけど、ひとつ繋がるとそこからパパパッと繋がっていって。京都は、誰かが新しい店を始めたよとなってもそれは誰かの知り合いで、その人たちが宣伝してくれてという横の繋がりがあるので、似たような感じで店が回っていくというサイクルはすぐに出来たし、そこから今もあまり変わっていないと思います。


レコード棚を見るだけで、いかに加地さんがアーティストや文化人に愛されているかがよくわかる。サインは、音楽家のみならず、作家、イラストレーターなど多岐に渡る。

――そして、京都に点在する様々なレコード店が一同に介して2013年からZEST御池の広場で開催されるようになった≪京都レコード祭り≫も、加地さんが発起人となってスタートしたんですよね?
そうですね。もともとは僕が京都のすべてのレコード店を回って出ませんか?と交渉して始めたもので。2年目までは全部の店を回ってたんですけど、3年目からは逆に行ったら迷惑そうやなという店は行かないようにして(笑)、今はだいたい固定のメンバーが決まって毎年続けています。

――最近はZEST御池以外の場所でも頻繁に行われるようになって、1日では回り切れない京都のレコード店の層の厚さを再認識させられました。
京都は何だかんだと他のイベントは多いですけど、レコードはないなというのが発端だったんですけど。でも、やっぱり普段から一匹狼気質の人たちがそれぞれ自由にやっているという感じやったから、今まで共同作業で何かをやるということがなかったので、最初は他のイベントと比べても意見のブツかり合いとかがゴリゴリと生々しいものがあって。すげぇな!こんなに揉める?というくらいのものもありました(笑)。今はそこを乗り越えて、みんな仲良く楽しくやっています。

――仲のいいお店同士でというわけではなく、すべてのお店に声をかけて開催したという点も大きなポイントだったように思います。
若干知っている者同士でやっても意味がないと思っていたし、≪京都レコード祭り≫という名前でしたかったのもあったので。あとは、僕が基本的に(京都ネイティヴではない)ヨソ者やったから出来たというのもあると思います。最近はZESTのイベントが発端になって、東急ハンズでも年に2回行うのがレギュラー化して、高島屋やノースフェイスでも開催しましたけど、すべてZESTの≪京都レコード祭り≫を見たり聞いたりして向こうから声をかけてもらったものですね。


レジ横の面だしのコーナーには、加地さんのお気に入りのジャケットが並ぶ。手にしているのは、紹介もしていただいた浅野ゆう子の7インチ。

――そんな京都のレコード店全体を活性化させる動きの一方で、アローントコ自体の最近のお店としても傾向も聞かせてもらえますか?
やっぱり、来るお客さんがちょっと変わったかな。最近どこのお店でもそうで、レコード祭りの活動も相まってのことやと思うんですけど、レコード・ブームみたいなことが言われるようになってから若い女の子のお客さんも増えましたよ。“お、何かが起きている”と思うくらい。それは前にはなかったことですね。(同じ日に)3人ぐらいそういう子がいると感動します(笑)。だから、そういう子らも入ってこられるような開放的なイメージが広がっていってるのかなと。

――品揃えなどの面ではどうですか?
オールジャンルの店なのでそこは入ってくるものに左右されるんですけど、京都の中古レコード屋ってオールジャンルのお店がすごく多いんですよね。オールジャンルのお店がすごく固まって存在しているというのも京都の特徴で、それもまたすごく変わっていると思います。

――なるほど。大阪や東京だと、同じエリアでは微妙に被らないように棲み分けができていたりしますけど。
そうなんですよ、オールジャンルで被っているんですけど。それでも成り立っているのは京都にはまだまだモノが眠っているということで、最近はまたずっと誰も住んでいなかった家の解体や整理などで出てきたレコードが出回ることが増えて、モノが市場に戻ってきて還流しだしている感じがすごくあります。だから、今は何がいつどこから入ってくるか予断を許さない状態で、オールジャンルの店はそれで店の内容がガラッと変わったりしますから。

――少し前までジャズが充実していたのが、急にロック/フォークが強化されたり。
前はそんな店とちゃうかったやん、みたいな(笑)。ウチも最初はジャズばっかり入ってきてたのが、今はどんどんと減って逆にロックばかり入ってくるようになっていたりして。それが中古レコード店のおもしろいところやし、これからもオレがやってるよというフリをしながら(笑)、入ってくるものに振り回されながら変幻自在にやっていきたいですね。


買い取り中心に振り回されながらやっていると言いつつも、状況をポジティブに捉えているからこそ、こういったコーナーを作れてしまうところもアローントコのおもしろさ。他にも音楽評論家・湯浅学のレコードというコーナもあり。

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 100000tアローントコ

 100000tアローントコ
住所:京都市寺町御池上るモーリスビル2F
電話:090-9877-7384(加地)
営業時間:12:00〜20:00
定休日: 無休
URL: http://100000t.com

Writer 吉本秀純
撮影 米田真也

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