浦朋恵 インタビュー

WRITER
中村悠介(IN/SECTS)

最近は“肉コラムニスト”として関西ではテレビ等で見かけたことがある方も少なくないはず。誰が言ったか“南海サックス人情派”、今回はバリトンサックス奏者の浦朋恵さんにご登場いただきます。彼女が考えるアナログレコードの愉しさとは?浦さんが経営する大阪ミナミの“お酒が飲めるレコード屋”こと「DIDDLEY BOW」にて、まずはレコードとの出会いからお聞きしましょう。

――最初にレコードに興味を持たれたのはいつ頃でしょう?
自分で初めてレコードを買ったのは大学生1回生の頃ですね。世代的にはCDなのでそもそもレコードを買う、という考えがなかったんです。

――ではレコードを初めて買ったきっかけは?
大学生の頃、よくライブを観に行ってたんですけど、そのつながりからですね。(東心斎橋にあったレコード店)「ジャボズレコード」の横山さんと知り合ってお店に行かせてもらったのが最初ですね。

――初めて行ったレコード店はいかがでした?
もう感動しました(笑)。実家には矢沢永吉とか歌謡曲とか親のレコードはあったんですけど、それとは違うレコードの世界があることは知らなかったんですよ。岐阜の田舎出身なので周りにお店がなかったこともあって。

――どんなレコードの世界に感動されたんです?
壁とか棚にびっしりレコードがあって家で転がってた感じとはぜんぜん違うし、なにこれ!?って。その時に買ったのが50年代の(白人ジャイヴ歌手の)ルイ・プリマのレコードなんですけど、最初に惹かれたのはジャケットの世界観ですね。紙質とか色合いとか。ウワ!って。

――中古盤のジャケットの紙の風合いが?
そうですね。時の試練に耐え、ここまでモノとして残っているということが衝撃でしたね。

――レコードの音質についてはなにか衝撃はありました?
はい。うまく言えないんですけど、なめらかに聞けたというか、独自の艶っぽさがあるところにびっくりして。お店の機材の音圧とかも関係あったと思うんですけど聞かせてもらったら、すっごい迫力で。こんな音楽があるのか、って感動しました。

――そこからレコードの魅力に取り憑かれていった、と。
そうですね。好きなレコードがあれば同じ時代とか同じジャンルの音楽を教えてもらって自分の嗜好が分かりましたね。プレイヤーとしての耳でも聞いてみたり。かなり参考になりました。

――レコードを聞き始めたときに浦さんが分からなかったことってあります?
全部分からなかったです(笑)。「ジャズボレコード」でレコードプレイヤーとかスピーカーの線とか、全部教えてもらいました。ステレオで音が変わってくるから、レコードであればすべて万歳っていうわけではないですよね。でもそれがまた魅力で。自分好みの音を作っていけるのが面白いところですね。

――それにしても「ジャズボレコード」からの影響はかなり大きいですね。
そうですね。ここをきっかけに他の中古レコード屋さんに行ったりすることができるようにもなりましたし。最初はなかなか知らないお店には入りにくいと思うんですけど。レコード屋さんごとに同じレコードでもジャンルの扱いが違うことを知ったりしましたね。

――現在はレコード店にどのくらいの頻度で行かれますか?
月に2、3回はウロウロしてますね。普段から(特定のレコードを)探しまくってるわけじゃないので買うものはその時の気分ですね。いつもは欲しいレコードがあれば、まず近所のレコード屋さんに行きます。(盤質の)状態も確認したいし。それで無かったらネットを探します。

――よく行くレコード店は?
友達がやっている「ナイトビートレコード」とか。あと「タイムボム」や、お店から近いので日本橋の「DISC JJ」もよく行きますね。あとは「ディスクユニオン」とかかな。

――いまレコードはどのくらい持っていますか?
1000枚くらいです。それ以上は脳ミソが把握できない(笑)。7インチは少なくて。やっぱり紙の大きなLP、ビッグサイズが好きですね。

――レコードを売ったりもされます?
売ったり、また買ったりですね。私、引越が趣味なんです。2年に一回くらいは引越するのでそのタイミングで。レコード棚からはみ出したら売ろう!(笑)みたいな。

――現在のストリーミングなどでの音楽の聞き方をどう捉えていますか?
ありだと思います。けど、こう見えて私けっこう繊細なんで(笑)ケータイからイヤホンで音楽を聞くのはしんどいんです。長時間は耐えられない。それもあるし、音は空気を挟んで聞きたいというのがあって。

――それはなぜです?
自分が演奏してるから、だと思いますね。ライブハウスみたいに音楽は空気を通して聞くのが普通というか、自然という感覚があるのかなと思いますね。だからやっぱりステレオで聞きたいんですよね。

――なるほど。家ではどんな風にレコードを聞かれていますか?
最初の頃は正座して聞く(笑)じゃないけど、タイトルとか解説を噛み締めつつ。ウキウキですね(笑)。まぁ、それはCDと同じなんですけど、レコードは片面が20分くらいなのでA面で聞くのを止めて、あ、洗濯機まわそ(笑)とか。例えば50分のCDを一枚ずっと集中して聞けないですよね。レコード片面くらいの時間がちょうどいい。あと注意点としては、自分で言うのもなんなんですけど、モノを大事にする方なんで(笑)レコードの近くにはお茶とか置かないようにしたり。

――CD世代の浦さんにとって針を落として聞く、というプロセスについてはどう考えます?
やっぱりピッとボタンをただ押すのとは違うし、そのひと手間というか、そのわざわざ感が面白いんじゃないかと思いますね。

――ずばりレコードを知らない方にその魅力をどう伝えます?
レコードを買うときは、ジャケットの印刷の質感から見てみて! 買ってジャケットを開けたら匂いを嗅いでみて!(笑)と言いたいです。1950年代のシールド(未開封)のレコードを開けたら、これが50年代の匂いかぁ〜と思ったり。多分違うと思うんですけど(笑)。でも発売されて50年以上も経っているモノが今も残っている、それだけでも面白いと思うんですよ。匂いとか触感とかモノとしての魅力もあると思います。

――音が鳴る骨董でもある、と。
そうですね。でも、ただコレクターのためのアンティークというより、聞くものだということを忘れないで欲しいとは思いますけどね。それは自分がレコードを出してるものとして音楽を聞いて欲しいと思うので。

――過去のレコードでも、デジタルリマスタリングが施されているようなCDをどう捉えています?
私はどちらかで言うと当時発売されていたフォーマットで聞きたいと思ってますね。デジタルよりフィルムで撮った写真の方がいいっていうこともありますよね。デジタルだと聞こえ過ぎて、気にせんでええとこまで気にしてしまう(笑)ってこともありますし。レコードには当時、演奏されていた場所の空気も含めて録音されてると思ってるんですけど、その空気の粒子が見え過ぎるのは違うかなと思いますね。もちろん、そこを聞きたい!っていうひともいるとは思うんですけど。最終的には聞くひとの好みになりますよね。

――最終的には好み。ちなみにそれはお肉も一緒?
そうです(笑)。それぞれの歯のコンディションがありますから(笑)。咀嚼力のあるひとは硬い肉じゃないとと肉を食べた気がしないってひともいますからね。霜降りのステーキは脂ばっかりって言う人もいますし。

――浦さんはどんなタイプです?
私は霜降りももちろん大好きだし、ギャートルズみたいな気分で硬い肉を食べるのも好きだし。吉野家の牛丼も好き。

――高けりゃいいってもんじゃない、と。
そうです。そこもレコードと一緒だと思いますね(笑)。

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浦朋恵

浦朋恵
バリトンサックス、クラリネット奏者。2010年にソロアルバム『ロッキン・アット・ザ・食堂街』をリリース。これまでEGO-WRAPPIN’のツアーサポートを始め、さまざまなミュージシャンと共演。2014年にはベストアルバム『ウラチャンのブンガワン・ソロ』、2017年にはオリジナルアルバムとしては4作目となる『That Summer Feeling』を発表。同年、山本アキヲ、椛島隆とともに“インスト”、“エキゾ”、“45sオンリー”をテーマにしたレーベル「TONGS INTERNATIONAL」を始動している。近年は肉コラムニストとして活動も。1981年生まれ。岐阜県高山市出身、大阪在住。

取材協力:DIDLLEY BOW
撮影:関愉宇太

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