tofubeats インタビュー

WRITER
中村悠介(IN/SECTS)

日本語による新しいポップ・ミュージックのフロンティアで…という説明はここでは無用でしょう。現在、自身初となるサウンドトラックを手掛けた映画『寝ても覚めても』の公開も待たれるトラックメイカー/DJ、そして歌い手でもあるtofubeats。この若き音楽プロデューサーにとっての“レコード”とは?

ーーまず初めてのレコード体験はどんなものでした?
実家にレコードプレイヤーはいちおうあったんです。でも親がそれで聴いているのは見たことがなくて。自分で意識してレコードを聴こうと思ったのは中1の時ですね。お年玉かなにかでベルトドライブのプレイヤーを買って中古レコードを聴き始めたという感じで。

ーーレコードで聴こう、と思ったのはどんなキッカケですか?
ヒップホップを聴くようになって。それで聴きたいと思うようになった感じですね。

ーーヒップホップのDJを見たりして?
そうですね。お金的に(ダイレクトドライブの)タンテを買うのは無理だったんですけど。

ーーでは、最初に買ったレコードを教えてください。
最初は中古で買ったんですけど、それをちゃんと覚えてなくて。新譜はデ・ラ・ソウルの『THE GRIND DATE』。初めて買った7インチはG.RINAさん、12インチ(シングル)はI-DeAだったと思います。

ーーそれまではCDを買って聴いてたんですよね?
そうですね。レンタルすることが多かったですけどね。

ーー最初にレコードで音楽を聴くことをどのように感じました?
音を出すまでの設定が大変だったことは覚えてます。でもそれが新鮮だったというか。針圧とかもよく分かってなかったし。最初はほんとにそんなところからですね。

ーーその設定などはどこで学びました?
ホームページで見ながら試行錯誤して。でも当時はネットも遅いし、もうガサガサの(笑)リアルプレイヤーの映像を参考にして針圧の調整とかやってましたね。「DJ親分のページ」っていうのがあって、そこで調べて。あとは掲示板ですね。

ーーレコードならではの手間を煩わしいとは思いませんでした?
その手間が良さみたいなところだと思って。その分の思い入れが出てくるというか。デカいとか重たいとかも含めて。それが聴く時に心理的に作用してくる、と。サウンド的に僕は(CDと比べて)どちらが優位だっていうわけじゃないんです。そこは好き嫌いですよね。

ーーでは中1の時からレコード店に?
学校の帰りに学ランでJETSET(神戸店)とか行ってましたね。知らないがゆえに入れる(笑)みたいなところもあって。ジャズの専門店に入ってしまっても、分からんのが当たり前やし、と。

ーーとりあえず入ってみる、と。
そうですね。3,000円以上のレア盤しか置いてない店も買えないけどガンガン行ってましたね。なんも分からんので、とりあえず入ってみるという感じで。

ーーなるほど。現在はどのくらいの頻度でレコード店に行かれますか?
中古レコード店には月1、2回くらいです。イベントで行った先では中古のお店には行きますね。

ーー新譜のレコードは?
新譜はネットで。あとはリサイクルショップで買う感じで。ハードオフは週1で行って、なんとなく見てる感じですね。

ーー中古レコード店での買い方は決まってますか?
中古の時はなんの狙いもなく行きますね。自分が好きそうなレコードがありそうな流れ、例えば趣味が自分となんとなく近しいとか、それがある時はじっくり見ます。その流れがなかったらさっと帰りますね。

ーーどのジャンルから見ますか?
ダンクラかハウス、ヒップホップ、80's~70'sディスコとかからですね。まぁその時々ですけど。

ーー通販でもよく買いますか? Discogsなどの。
Discogsはめちゃくちゃ使ってますね。欲しいものが10ドルなら買っちゃおうというのはあります。

ーーどのくらいのペースで?
だいたいDiscogsでは月に1回ドサっと買いますね。送料は高いですけど、そこは仕事道具と割り切って。送料は中古レコード屋に行く電車代だと(笑)。でもレコード店に行ってその帰りにお茶して、みたいな時間は大事なんですけどね。今は昔に比べて小忙しくて(笑)

ーーお茶までを含めてレコード体験、と言えるかもですね。現在、家ではどんな環境で音楽を聴かれていますか?
レコードかデータですね。聴く分にはやっぱりレコードは便利なので掃除したり料理したりする時にもかけたり。CDは全部取り込んでしまうのでパソコンで聴いてます。半分半分くらいですね。

ーーそういえば先日の地震は大丈夫でした?
神戸の地震を経験してることもあって、普段聴くもの以外は全部箱に入れてるんです。繋いでないドラムマシーンとか機材も箱に入れてますね。レコードは大丈夫でした。

ーーレコード以外は?
スピーカーがコーンの部分から落ちてぶっ壊れましたね。でも仕方ないわ、と。高いシンセは大丈夫だったので良かったですけど(笑)

ーーあらら。ではあらためてレコードの良さを考えるとどんなところでしょう?
まず見やすい、持ちやすい、ですかね。クレジット、プロデューサー等がちゃんと裏ジャケに書かれてあるところもいいですね。見やすいという点ではレーベルやジャケットで覚えやすいというのもありますよね。

ーー確かに、レーベルも色などで記憶しやすい。
考えるとレコードは邪魔臭いんですよね。でもそれがゆえにモノとして、もらった時に嬉しいし、ひとにもあげたくなるんですよね。そういえばレコードを探してる時に“レコード見てるな〜”という気になってたんですけど、最近はCDも“CD見てるな〜”という気にもなってきたので、これも(データが主流となりつつある)時代なのかもですね。

ーー他にレコードならではの特徴を考えるとどんなところが?
やっぱり同じ音楽聴くのでも過程が違うとちょっと変わって聴こえる、というのも特徴だと思いますね。丁寧に扱わないといけないデメリットが音に関してはシビアに出るというか。平たいところにターンテーブルを置くとかスピーカーをきちんと設置するとか。それで聴き方自体が変わってきますよね。

ーー“聴く”心持ちを変えさせる、と。
あと、例えばレコードをBluetoothスピーカーで聴く、まぁそれもなくはないですけど、みんなそんなことはしないと思うんです。ポータブルじゃないがゆえの心構えが自動的に発生するのがいいなと思いますね。ちゃんと座って聴くとか、好きじゃない曲も飛ばさないとかもそうですよね。

ーー確かに。わざわざ飛ばさない、と。
アートというと大仰ですけど、そういうものが2,000円とかポスターを買うくらいの値段で買えるということでもありますよね。しかも音も付いて(歌詞カード等の)印刷物も入ってる、と考えるとおもしろいな、と。もちろんレコードはプロダクトですけど、それとはちょっと違って見えるというか。そこも良くできたメディアだな、と。

ーーさきほど“レコード店の帰りにお茶して、みたいな時間は大事”と仰っていましたが、レコードを買いに行く、ということに関してはいかがですか?
僕が考えるレコードの一番良いところは、レコードを買いに行くという用事ができることだと思うんです。その用事ができると人生の中でひとりで時間を過ごす方法がひとつ増えるというか。

ーー中古レコードをぼんやりと見に行く、という優雅な時間。
もちろんレコードでしか出ていない音楽はたくさんあるし、そんな音楽に出会える可能性が高まるってこともありますし。CDで聴いてたものをわざわざレコードで買って聴き直すべき、とはまったく思わないけど、単純にいろんな可能性が広がるっていう意味で。

ーーその可能性というところでは、自身の『FANTASY CLUB』はレコードでもリリースされましたよね。アルバムとしては初のアナログ化。
そうですね。レコードでも出しているのは、レコードで聴きたいっていうひとに応えたいっていうことなんですね。今回はスタッフの理解があって出すことが出来たんですけど、特に今作はアルバムの意味を考えて作ったので、レコードにして良かったとほんと思いましたね。でもいつも(レコードで)出せるとは限らないので嬉しかったですね。

ーーそういえば、レコードは売りますか?
売りますね。でも高値で買ってくれるところには売らないです。逆に。

ーーそれはなぜ?
掘り出し物って嬉しいじゃないですか。だからハードオフとか、そういうところに雑に(笑)売りますね。それで儲けようとかは考えないように。でも今はハードオフでもちゃんと値段が付けられるので、あんまりそういう感じでもないんですが。みんなが買えなくなる状況って良くないというか。自分のレコード、例えば「水星」(2012年発表)とか高くなっているものがありますけど、それはめちゃくちゃいやなんです。

ーー応えられてない、と。
ポピュラー音楽ってみんなが聴けて民主化されてるところがいいのに、って思いますよね。自分の好きなディスコのレコードが5,000円くらいしてるとそれだけでちょっと萎える(笑)。もちろんそれでも良いと思える曲は世の中にはたくさんあるんですけどね。

後編は、アナログならではの思い入れたっぷりのレコードをご紹介。

tofubeats

tofubeats
1990年生まれ。神戸在住。トラックメイカー/DJ。
学生時代からインターネットで活動を行いジャンルを問わず様々なアーティストのリミックスやプロデュース、楽曲提供を行う。2017年には3枚目となるアルバム『FANTASY CLUB』を発表。2018年9月公開の映画、濱口竜介監督『寝ても覚めても』のサウンドトラックを担当している。
https://tofubeats.persona.co/

取材協力:アララギ
取材:中村悠介(IN/SECTS)
写真:関 愉宇太

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