世界一のレコードライブラリーセンターに独占取材! レコード文化の中心であるニューヨークThe ARChive of Contemporary Musicとは?(前編)

WRITER
Yayoi Kawahito

アメリカのニューヨークにある非営利の音楽ライブラリー研究センターとして1985年に設立された、The ARChive of Contemporary Music (ARC)。ARCには300万曲を超えるサウンドレコーディングが収録され、9,000万以上の曲が管理されている。あらゆる楽曲を既知のフォーマットで保存し、40万件以上の録音を電子カタログに登録。昨今ではInternet Archiveと提携して書籍やGreat Project78等にて大規模なデジタル化プロジェクトにも関わっている。その他の機関、大学、民間の図書館と比べても、ここにあるコレクションはジャンルが特に豊富で、まさに「世界音楽の図書館」と表現するのが説明しやすい。そんなアメリカ最大級のアーカイブの宝庫であるARCの創立者でありディレクターのB.ジョージさんに、ARCの所有する音楽コレクション、ヴァイナル愛について話を伺った。

――The ARChive of Contemporary Music (ARC)の背景について聞かせてください。
ARCは、1950年から現在までの世界中のカルチャーと人種の音楽を集め、保存、提供しているんだ。ARCのコレクションの価値は数ではなく、コレクションの幅、構成が他とは違う。私達のデータベースとコレクションは、ケン・バーンズ(アメリカ人映画監督)のドキュメンタリー『Baseball』の曲を見つける小さなものから、音楽リサーチを必要としている数多くの会社や団体への情報提供、さらに様々なプロジェクトの為にコレクションを提供している。そして世界中のレコード会社、出版社、ディストリビューター、コレクター、アーティスト、音楽ファン達がARCに新しい資料を寄付してくれる事でコレクションは毎日成長している。ニューヨークに音楽センターを設立し、世界各地のポピュラー音楽の研究、解釈、楽しさを支援することに向けて日々前進しているよ。


私達の他文化音楽に対する関心は、イスラム、ブラジル、インド、キューバ、スカンジナビアの音楽の探究から始まり、これらの展示会や公的イベントも開催してきた。一般的に、図書館や音楽アーカイブは、人気な音楽を保存するのに疎い。ほとんどの場合、ポピュラーな音楽は「商業的」なので、貯蓄にはあまり価値がないとされ、それ以上は生き残ることが出来ないから。だけども、ARCはアメリカで初めてポピュラーな音楽から、幅広いジャンルを集めたアーカイブセンターとして今に至っている。ジャズ、ビバップ、ロック、パンク、ディスコ、ラップ、ブルース、ブルーグラス、カントリー、レゲエ、カリプソ、ザディコ(クレオール系黒人のフォーク)、演歌等、あらゆるジャンルの音楽が文化的に重要だと考えているんだ。私達が見つけた記録は、これからの将来、物凄い価値の財産になるかもしれない。なぜならこれらのアーティスト達は、リスナーを楽しませるだけではなく、音楽はその時代の背景を反映しているでしょ。

――どれくらいのヴァイナルコレクションを今までに集めているのですか?
ヴァイナル自体は250万枚くらいだね。サンフランシスコにもオフィスがあって、そっちにもおそらく50万枚は保存しているよ。

――どういった所に情報を提供していますか?
最近は主に、Internet Archiveというオンラインで書籍をデジタル化して貸し出しているんだ。Internet Archiveから貸し出されたこの機械で本をスキャンし、デジタルのデータフォーマットにしている。これらの書籍はきっと音楽ファンやリサーチャー等がチェックしているんじゃないかなと思うよ。特に他の図書館に無いようなマニアックなものもWeb上で借りることが出来て、リサーチなどにも適応してるからね。

――どういったプロジェクトに関わっているんですか?
去年はTASCHENから出版されたArt Record Coversの制作に関わったんだ。この本の約180枚のヴァイナルカバーをARCから提供したよ。また現在は同じ様なコンセプトで、7インチのパンクに特化したヴァイナル・アートブックの制作に携わっていて、どのヴァイナルを載せていくのか徐々に決めている所なんだ。これはTwilight Zonersについてのページの制作段階だよ。


――サイン入りのレコードが沢山壁に飾られていますが、見せてもらえますか?


The Rolling Stones 「England's Newest Hit Makers」(1964)

これは知人のコレクターの家で見つけたんだ。汚れていたレコードのジャケットを綺麗に拭いて、裏をひっくり返したらなんとThe Rolling Stones全員のサインがされていて、たまたま見つかったんだよ(笑)

 

――持ってるもので最もレアなレコードを見せてください。

Robert Johnson 「Me And The Devil Blues」(Vocalion, 04108, 78rpm, 1937)

ローリング・ストーンズのギターリストのキース・リチャーズが1991年に、ARCのアドバイザーに加わったんだ。これは、彼のブルースのコレクション13,000枚以上の中からの宝の一枚だよ。ロバート・ジョンソン(1911-1938)は、独創性に富んだブルースマンであり、彼の音楽は60年代に数え切れないほど輝き、アーティストとしての経験を培った。彼の精神苦闘の一面は、その後の世代に続いたバッドボーイスタイルとして、パフ・ダディやスヌープ・ドッグ達にも大きな影響を与えた。この曲は1937年6月20日にジョンソンの最後のレコーディングセッションにて、ダラスにある倉庫の裏室でレコーディングされた。10〜15枚だけしかプレスされてなく、そのうちの1枚がARCにあるんだ。市場にもよるけど5,000〜10,000ドル(約100万円)近くの価値があるものだと思う。

――他にコレクションの中で値段が高いレコードはどれですか?


Mighty Ryeders 「Spread The Message」(1978)

これは、当時誰も知らないアルバムだったのに、今では物凄く価値のあるレコードになったね。現在では、4,000ドル以上(45万円弱)の値段になっている。何が将来的に価値の上がるレコード になるか本当に分からないよ。

 

後編では、更にARCの中を取材させていただきます。
ARCが目指す形についてもお伺いしました。お楽しみに。

B.George / The ARChive of Contemporary Music

B.George / The ARChive of Contemporary Music
The ARChive of Contemporary Musicの創立者/ディレクター。ARCを始めた当時の47,000枚のレコードは彼の個人的なコレクションから始まる。過去には、One Ten Recordsを結成し、Laurie Andersonの最初のシングル「O Superman」をリリースするなどの功績を残している。コンサルタントとしても、George Biennale(1981年、1983年)、New Music America(1984年)、NYC World Financial Center(1985-1989年)のアート、イベントの音響作品を選び、"The Peel Show"(1982 - 1985)では新しいアメリカンポップの実験的音楽を調査した。Punk、New Waveに特化した「Volume : the International Discography of the New Wave」の出版書の著作も過去に手掛けている。映画ではMartin Scorseseの「The Last Temptation Of Christ 」(最後の誘惑)やTom Hanks の「That Thing You Do」(すべてをあなたに)等の、作品のコンサルタントにも携わるなど数え切れない程の経歴を持つ革命的な音楽愛好家である。

by Yayoi Kawahito
Photos by Still 1

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