テクニクス復活の功労者であり、SL-1200MK7の開発にも深く携わった上松泰直氏に独占インタビュー!

WRITER
Kiwamu Omae

――ちなみに、国内と海外では商品展開が違っていて、海外はずっとSL-1200MK2だったという話を聞いたことがあるのですが、それは本当ですか?
全ての国ではないですが、特に欧州の一部はそうでした。たしかフランスとかは新しい機種が出るたびに持っていっても、「何も変えなくて良いから、SL-1200MK2のままで良い」って、頑なに拒否されて。最後までそういった国のためにSL-1200MK2を作っていました。

――なぜSL-1200シリーズはそこまでDJに支持されたんだと思いますか?
理由は2つあると思います。一つは頑丈で壊れにくくて、例えば過酷な状況の中でも、針飛びなどがせずに、しっかりとパフォーマンスが出来るところ。もともと、ハイファイ用にきちんと音作りもしていて、パーツとかも厳選して作っていましたので。そういう意味では同じ機種を、何十年も使っているようなDJもいますし。もう一つは、少しずつですけど、長い年月をかけて常に改善をしてきたから。DJの意見を聞いたりしながら、楽器として、いかにより良くしていくかっていうのを、細かく積み上げていったので。そこでテクニクスを使っていれば安心みたいな信頼感が出来たんだと思います。

――2010年にテクニクスというブランドが終わるわけですけど、社内的にはどんなことが起こっていたのでしょうか?
一つ大きなターニングポイントになったのが、松下電器産業っていう社名をパナソニックに変えるっていう大きな動きがあって。その時に、テクニクスというブランド名が消えてしまうかもしれないという、危機があったわけです。それは絶対に食い止めないといけないっていうことで、テクニクスというブランド名だけは残して欲しいということを社内で決裁を取って。それで、何とかサブブランドとして存続させることが出来ました。もし、あの動きをしていなかったから、今もどうなっていたのか分からないです。それが第一の大きな危機だったんですけど、第二の危機が、オーディオ事業部の販売業績の下落です。クラブミュージックブームの勢いがちょっと落ちてきて、そこにターンテーブルの売上も陰りが見えてきた。使用していたパーツの単価なども値上がりして、事業として成立しなくなって、2009年にもう作れないっていう判断になりました。

――SL-1200シリーズの終了を発表した時は、やはりかなりの反響がありましたか?
そうですね。個人的に印象深かったのが、名古屋のOTAI RECORDさんが、テクニクスにお礼の手紙を書こうって呼びかけて、ウェブサイト(https://www.otaiweb.com/sl1200/sl1200.html)を作ってくれて。そこに届いたメッセージを全部読ませてもらったら、すごい量で。「本当に今までありがとう」とか、「またいつか戻ってきてください」とか「あなたのおかげで私は音楽とすごく良い出会いを出来ました。これからも大事に使い続けます」といった内容で、誰一人、否定的なことを書いている人がいなくて。それを全部、泣きながら読んで、「絶対にまたいつか戻ってきてやる!」っていうのを心に決めました。

――今回のSL-1200MK7の登場というわけですね。
昔のSL-1200MK5、MK6の流れを組んだ、DJプレイ用として扱えて、しかも値段も手の届くところにある商品を作って欲しいっていう要望が、DJを中心にいろんなところからありまして。開発段階にも、いろんなDJに触ってもらったり、クラブに持っていって音のチェックをしてみたり。1年間ちょっとくらいそれをずっと繰り返していました。クオリティの部分も、新しい機能をいろいろ入れたりしながら、ようやく使っていただけるようなものが出来たかなって思います。価格も9万円で、2台で20万円切るというのは、性能ももちろん上がっていますので、そこは認めてもらえる範囲ではなのかな?と。

――具体的に今回のSL-1200MK7の売りとなるポイントを教えてください。
まずは品番ですね。満を持して“MK7”って付けて。この番号はずっとこの時のために取っていたので。あとは見た目のデザインとしては、全体的にブラックを基調にしていて。あとケーブルが全部着脱出来るようになっています。それから、ライトの色で赤と青で切り替えられたり、ピッチコントローラーがデジタル制御でプラスマイナス16%まで対応していて、あと78回転も対応しています。それからリバースですね。リバースをオンにすると逆回転する。トルクの調整やブレーキの調整も4段階で出来たり。そういった細かい機能は、プラッターを外すと中にスイッチが仕込んであるので、そこで切り替えるようになってます。

――逆に今までのSL-1200シリーズから、全く変えていないところは?
レイアウトですね。あとは操作感。フィーリングっていうのはターンテーブルを操作する上での命なので、そこはSL-1200MK5に合わせています。ありとあらゆる調整をして、誰が触ってもMK5とフィーリングが同じって感じるように、近づけたつもりです。

――実際にDJに使ってもらっての感想っていかがですか?
すごく良いですね。特に音に関しての評価は高いです。ずっとハイファイで積み上げてきた上で、新しい技術を取り入れているおかげで、モーターの回転ムラが無くなっていて、安定してレコードが回るので、聴いていてまずビートの安定感がある。あとは音質的にも、楽器の音などの分解能力が高くなっています。音質はSL-1200MK5やMK6と比べても良くなっていて、大箱で鳴らせば鳴らすほど違いがよく分かると思います。

――初代のSL-1200の登場から数えると、すでにほぼ半世紀が経つわけですけども、今もこうやってSL-1200シリーズがDJを中心に、幅広く愛されている理由はなんだと思いますか?
やはり、使った人が次の世代の人にSL-1200の良さをちゃんと伝えているからじゃないでしょうか? 初期の頃からDJをやっている人は、もう60代くらいとかだと思いますが、テクニクスっていうブランドを使っていた人たちが、我々の代わりになって、その良さをずっと代々と伝えてくれてるので、今でも繋がっていっているのかなって思います。もし、どこかの時点で、「他のブランドのほうが良いぞ」って言われていたら、そこでタスキが切れちゃうと思うんですけど。それをちゃんと次の世代に渡してもらえるように、こちらも支持されるものを作り続けないといけない。そういうことが一番大事なのかなって思います。

Text & photos by Kiwamu Omae

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