レコードとShingo Suzuki(Ovall) - 人生を変えた3枚 -

WRITER
山本 将志

Shingo Suzukiが選ぶ「人生を変えた3枚」

――まず意外だったのが、フルート奏者デイヴ・ヴァレンティン『LEGENDS』を選ばれていますね。
トラックを作りたいと思ったのが1990年半ば、大学を卒業する頃にMondo GrossoやMonday満ちるさんに影響を受けたのがきっかけでした。それで、AKAIのMPC2000XLを買ったんです。Monday満ちるさんの『オプティミスタ』を買ったときに、作品のコピーに「デイヴ・ヴァレンティンなど多彩なゲスト陣…」って書いてあって。そこで「デイヴ・ヴァレンティンって誰だ?」となったんです。それで探してみると、こういうフルートのおじさんだったんです(笑)。聞いてみると、テクニカルな面とソウルフルな面を併せ持つ人だということがわかりました。

――フルートはこれまでの話には出てきませんでしたが、フルートの音は好きだったんですか?
すごく好きです。大学のジャズ研にフルート奏者の友達がいたんですよ。彼にジャズフルートを教えてもらってから好きになりました。今日、持ってきてないですけど、ビル・エバンスのアルバム『ホワッツ・ニュー』が好きで。黄金のピアノ・トリオの代が終わって第二期に入った時で、フルート奏者にジェレミー・スタイグが入っていて。あと、エリック・ドルフィーやヒューバート・ロウズも好きですね。

――フルートの音に惹かれた理由は?
フルートってクラシックミュージックで想像するような綺麗な音かなって思ったら、もっと肉体的なんですよね。ダーティーに歌うようなイメージだったり、感情高まって鼻水垂らしながら吹くようなイメージだったり。そういうソウルフルな音もある。ドレスを着たお姉さんが吹くだけのものじゃないんですよね。デイヴ・ヴァレンティンのフルートはまずそのサウンドが極上。そして非常にインテリジェントな演奏であり、さらに冷静な面と情熱的な面、この両面がせめぎ合うから好きなんです。フルートにはいろいろな種類がありますけど、アルトフルートの音が一番好きです。やっぱり低い音に惹かれるんだなと。僕もフルートは持っているのですが、音階を吹けるくらいで止まってます。これから練習してさらに演奏できるようになりたいですね。

――では、2枚目はシャーデーの『By Your Side』。これも名曲ですね。
2000年にWAVEで購入しました。これ、『Lovers Rock』がリリースする前のプロモーションだったのか、100円で売られてたんです。簡易的な包装で、サイドAもサイドBも同じ『By Your Side』が入ってるだけっていう(笑)。でもプロモーションだったら「Promo」って表記はあると思うんですけどね…。

――たしかに何のために作られたのか気になりますね…。
シャーデーは大好きなバンドです。シャーデーはじつは、バンド名なんですよね。シャーデー・アデュがバンドのボーカリスト。彼女のスペシャルな声、ストイックで鉄壁のバンドサウンド、タイムレスな楽曲群。これらが渾然一体となる、音楽。理想のバンドのひとつです。Ovallもシャーデーのように唯一無二の音を出せるようなバンドにしたいなって思ってます。『By Your Side』は、イントロ、間奏に入る絶妙なフレーズ。これはサイン波系のエレクトリックピアノを柔らかくしたようなのような音色で、まず惹きつけられる。ビートルズのようなシンプルなコード進行で作られていて、派手ではないし、わかりやすいサビがあるわけでもない。でも曲全体として温度感も完璧だし、演奏のバランスや、一音一音吟味していることも分かる。聞けば聞くほど奥が深いですよね。そういうところは、Ovallでも意識しています。

――3枚目はディアンジェロの『voodoo』ですね。他のレコードと比べジャケットデザインの主張が強いですよね。ディアンジェロのギラギラ感が有り余っていて。
このジャケット、なかなかできないですよね。なんちゃってでもできない(笑)。裏のジャケットの写真には、アルバムタイトルが『voodoo』というだけあって、白目向いて鳥を持ってる人だったり、裸でパーカッションを叩いてる人だったりが写ってて……何もかもが漆黒過ぎます。

――この作品には、どんなドラマがありますか?
Ovallを今のメンバーでやり始める少し前の作品でしたけど、すごく衝撃的な作品でした。自分がやりたい音楽の方向性の足掛かりとなりました。この作品を聴いては夜な夜なディアンジェロの曲をみんなでセッションしたり。とにかく一音一音、出音の説得力が違う。ピノ・パラディーノのコシのあるグルーヴィーなベース、クエストラブの肉厚なドラム、チャーリー・ハンターのスピード感あふれる8弦ギターで演奏される『Spanish Joint』。そしてディアンジェロのローズピアノ。これは、プレイヤーを買ってでもレコードで聞いたほうがいい一枚。CDでもその音楽の素晴らしさは十分伝わるのですが、こと音色に関してはレコードで一聴しただけで違いがわかります。レコーディングされた音がダイレクトに伝わってきて、鳥肌ものです。2000年にリリースされたアルバムですが、音楽の歴史を変えた一枚と言っても過言ではないと思います。ブラック・ミュージックの分岐点。リリースから20年近く経ってますけど、未だに影響力のある一枚だと思います。

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Ovall

Ovall
Shingo Suzuki(ベース)、mabanua(ドラム)、関口シンゴ(ギター)によるバンドプロジェクト。リリース前にも関わらず「朝霧 JAM 2009」に出演。2010年3月に1st アルバム『DON’ T CARE WHO KNOWS THAT』をリリース、iTunes HIP-HOP チャート で 1 位、タワーレコード bounce 年間チャートで総合8 位(洋邦メジャーインディ含む)を記録。 またFUJI ROCK、SUMMER SONIC、GREENROOM、RINSING SUN、SunSet Live など大型フェスへ多数出演し、話題のバンドとしてシーンに大きく浮上。 2013年、2ndアルバム『DAWN』のリリース後にメンバーのソロ活動やプロデューサー、ツアーミュージシャンとしての活動も急増し、多忙を極めた3人はOvallとしての活動休止を宣言。2017年、ファンやアーティストから復活の要望が絶えず、メンバーもその思いに応える形で再始動をした。
http://ovall.net/

取材・文:山本 将志
写真:則常 智宏

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