90年代から現在までのレコードシーンを知り尽くす男、清水武順氏にインタビュー。

WRITER
Kiwamu Omae

――今もBBQでストーンズ・スロウとのビジネスは継続しているわけですけど、もう一つ今も関係が続いているディミトリ・フロム・パリとはどのように出会ったのですか?
多分、90年代の後半だったと思うんですけど、僕がマンハッタンの店頭にいた時に、彼がフラッと店に来て。まだ、僕も彼のことを知らなかったんですけど、欲しいディスコのプロモオンリーのレコードがあったみたいで、「自分の持っているビョークの超限定のプロモ盤と交換して」って言ってきたんですよ。けど、「それとこれとは全然価値が違う」って言ったら、「こっちのほうがプレス枚数が少ないから価値がある」って言い張って(笑)。そんなことを言うお客さんはいなかったんで、この人は面白いなって。その後もちょこちょこと店に来るようになって、僕も彼のイベントに行ったり、一緒にご飯に行ったり。僕がヨーロッパに行く時には、パリでお世話になったりして。そんなことをやっているうちに、まだレキシントンにいた頃、彼の日本でのブッキングマネージャーをやって欲しいって言われて。それでとりあえず一回やってみようかって引き受けてから、そのまんまもう10年以上続いているっていう感じですね。


ディミトリ・フロム・パリと清水氏

――レキシントンでのビジネスも広がる中で、最終的には独立して、BBQを立ち上げることになった経緯を教えてください。
お店がまだ渋谷警察署裏にあった頃は、スタッフが自分も含めて5人だけだったのが、最終的にはバイトも合わせると150人くらいの規模の会社になっていて。その一方で、本業の小売りがどんどんと厳しくなってきて。あの頃って、ブート(非正規盤)のミックスCDの売り上げとかが凄かったじゃないですか。だから、売り上げを作るためにはそういったミックスCDを売ったり、アナログもブートがたくさん入ってきたりして。けど、社長の平川さんは、そういうのに嫌気が差していて。そんなためにこの商売をやるならば、いっそのこと会社を畳もうって。それで閉店しようっていう話になったんですけど、そこにちょうどレキシントンを買いたいっていう会社が出てきて。平川さんも我々も自分が持ってる会社の株を全部売って、抜けることになって。それでレキシントンからはディストリビューションの事業だけ、自分で持っていくことにしました。ディストリビューションの事業は、人の繋がりでやっていた部分が大きかったので、自分が抜けたら誰も出来ないだろうし。それで、レキシントンにいたスタッフ4人でBBQを作って、ディストリビューションとDJやアーティストの公演を始めました。

――今では、BBQの事業としてレコードの買い付けも行なってるそうですね。
ここ5年ぐらい、中古レコードのシーンが復活しているっていうことで、いくつかのレコードショップに委託されて、アメリカに行って買い付けをやってます。去年だけでも5回行きました。レキシントンで最後に買い付けに行ってから10年くらいブランクがあったんですけど、レコードの買い付けを再び始めたのを、なにげに一番喜んでくれたのが平川さんでしたね。残念ながら、平川さんは4年前に亡くなってしまったんですけど、自分の作り上げたものが今でもちゃんと活かされてるっていうのが、すごく嬉しかったみたいです。


アメリカのレコード買い付け時の1枚

――10年ぶりにレコードの買い付けに行くようになって、以前との違いはありましたか?
決定的に違ったのがテクノロジーの部分で。昔は電話かファックスしか無い時代で、今みたいに携帯もインターネットもカーナビも無かった。あの時代は何だったんだ?っていうくらい衝撃でしたね。けど、あの時にアナログでいろいろやっていたことが、今でも活きているなっていうのはすごく思います。レコードの買い付けって、なんだかんだ行ってみないとわからないし、ネットの情報は、あくまでもネットの情報でしかない。一番大事なのは、そういった情報をいかにどれだけ拾える触覚を持っているかっていう。それはやっぱり昔の買い付けの時に養ったものが活きていると思いますね。

――10年ぶりに買い付けをやってみて、アメリカのレコード屋事情はどうでしたか?
それが意外と変わっていなくて、ビックリしました。もちろん、昔からのレコード屋は無くなっていたりもするけど、新しいレコード屋はどんどんオープンしている。それに昔っからの親父が、何も知らずにやってるのとは違って、今のことをわかっている人がレコード屋をやれば、当然面白くなる。あと、やっぱり昔も今も感じるのは、日本とはレコードの土壌が全然違う。レコードが一過性のものじゃなくて、ちゃんと根付いていて、昔から変わらずレコードが好きな人はレコードを買いに来て、要らないものは売っていくサイクルが出来ている。ただ、日本もそうですけど、レコードの価値観が昔とは違いますね。一部の人たちかもしれないですけど、今の子たちってトレンドとしてレコードが好きなだけで、音楽が好きなわけではない。ネットが作っちゃった部分なのかな?とも思いますけど、レアなレコードが良いレコードみたいにもなっている。曲の良さとか音楽の良さがレコードの価値ではなくなっているのは、ちょっと寂しいですね。

――清水さんならでは買い付けの流儀みたいなのがあれば教えてください。
アメリカに買い付けに行く時は、かなり色々な地域に行ってしらみつぶしにレコード屋を回ります。いろいろネットの情報もあるし、人からの情報もあるんですけど、自分の目で見ないと気が済まないので。今、買い付けに行ってる他の業者さんって、わりと決まったところだけ行ってる気がしてて。けど、日本と違って、こんなに小さい町にもレコード屋があるのかっていうくらいレコード屋がありますし、未だに「日本人が来たのは初めて」って言われる時もあって。そういうこともあるので、極力しらみつぶしに、行けるだけ行くようにしてますね。あと、どんなお店も必ず最低、2回は行きます。タイミングで全然違うので、1回行って良くなかったからダメって思わずに。もちろん、逆もありますよ。最初に行ってすごい良かったのに、次に行ったら全然ダメだったって。逆にアメリカは、それだけレコードが回っているっていうことですよね。

――バイヤーやディストリビューターとして長年、レコードビジネスに関わってきて、最後にDONUTS MAGAZINEの読者に伝えたいことがあれば聞かせてください。
レコード屋、CDショップにしても、もっとお店に行って欲しいですね。ネットでレコードを買って、デジタルで音源をダウンロードして、ストリーミングでレコードを聴いているだけじゃなくて、レコード屋へ実際に足を運ぶべき。あと、レコードが好きならば、レコード屋で働くのもお勧めです。レコード屋で働けば、そこで得る知識の広がりが半端ないし、聴く音楽の趣味も広がる。それからライヴとかにも足を運んで欲しいです。僕も仕事ではレコードとかCDとかのスタジオ録音物を扱っていますけど、やっぱりライヴを観る方が好きだし。ミックスCDも良いけど、結局、クラブでDJを生で聴くほうが好きだったり。レコードもオンラインで買うよりも、レコード屋で買うほうが好きだし。全てにおいて結局、自分は現場主義なんだなって思いますね。

Text & photos by Kiwamu Omae
撮影協力 HMV record shop 渋谷
清水武順 instagram

世界中のレコードを、その手の中に
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