世界初となるロックステディ・ディスクガイド The Rocksteady Bookがリリース 石井志津男×Tommy Far East

WRITER
Yutaman



Rocksteadyのディスクガイド本『The ROCKSTEADY BOOK』がリットーミュージックよりリリースされる。レーベルOVERHEAT Recordsを主宰し、フリーペーパーRiddim(現Riddim online)の発行を30年以上続ける石井志津男氏が監修を担当し、資料提供はFar East Records Japan代表のTommy Far East氏という、鉄壁の布陣による1冊だ。意外なことに、Rocksteadyに特化した1冊は世界で初という。 一度でもその音楽に触れたことのある人間なら、その甘美なメロディー、とろけるような歌声に心掴まれたことがあるはずだ。ただでさえ暑いジャマイカが60年代後半、本当に溶けてしまうほど暑かった、たった3年の間に生み出された珠玉の名曲たち。その核心に何があるか石井、TOMMY両氏に聞いた。

--まずは単刀直入に、お2人にとってRocksteadyの魅力とは?
Tommy Far East(以下、T):ジャマイカという激しく、暑い国から想像できないほど、優しく甘い音楽というのが、一番簡単な表現でしょうか(笑)。とはいえ、人それぞれ感じ方は違うと思うので、それはあくまで僕にとってですが。

石井志津男(以下、石井):「いなたい」というか、結局ラブソングが多いじゃない? 黒人のR&Bとか、自分の場合はそういう“感じ”に理屈抜きにはまってるだけだね。もちろんインストでも、波長が合うというか、グルーヴが合うというか、血は違うけど、どこか演歌チックなのかもしれないね。


石井志津男


ーーそれは「日本人にも響く」ということの文脈ですね。
T:あの「いなたさ」を考えると、そこかもしれませんね。

ー-暑過ぎた夏の副産物としてできたという逸話が有名です。
T:SKAというものがアップビートではじまって、「いい加減、暑くて疲れるよね」といってテンポが遅くなっていったという風には言われています。ただ、もちろんそこは諸説あって。

石井:そういう説の方が夢があるけど(笑)。まあ、所詮流行歌だから、飽きると思うよ。SKAがウワーとなって早い曲調が3年くらい続くと、ゆっくりなのも新鮮に聴こえるということもあると思うんだ。

ーーそして、とにかく魅力溢れるRocksteadyですが、こういったガイド本は世界初なんですね?
石井:そうだと思う。この前デビッド・カッツ(ジャマイカ音楽研究家&セレクター)が来日していて、一冊あげて「海外でもこういう本は出たことなかったよね?」って聞いたら、「ない」と。あいつも世界屈指のレゲエ博士みたいなもんだから、あいつが「ない」と言えば、ないんじゃないの(笑)? 当然いい曲もいっぱいあるから、これまでもSKAの本とかレゲエの本の中で紹介されたりってことはあるんだけど「Rocksteadyに特化した一冊」というものは、なかった。

ーーなぜ、出てなかったんでしょうか?
T:情報量が少なかったからじゃないですか? ジャマイカで、たかだか3年間しか作られなかった音楽で、僕がレコードを集め出したのが26年くらい前なんですが、当時は当然インターネットもなかったし、そもそも情報が本当にないジャンルなんです。特にこの、60年代のジャマイカの音楽は、演奏していた当人たちも覚えていないし、資料も残っていないんです。
 リロイ・シブルスみたいな、Rocksteadyを聴いてる人には有名な人でも、本人ですらすでに忘れている曲がいっぱいあるくらいの昔のことで、やっぱり「本にまとめるほど情報が集まらなかった」というのが、一つの理由だと思います。

石井:毎日の「レコーディング」という仕事の中で、当時は一日に何曲も彼らはやってるわけです。だから覚えていることと覚えてないことがあるし、ましてやスタジオも何ヶ所かあって都度座組みも違って、プロデューサーも、作ってるミュージシャンも違うから、その全貌を誰も把握できてない。だからむしろジャマイカよりは、海外のやつの方が実はよく知ってるなんてこともあるわけ。

T:それはありますね。僕らも研究して、追求しているじゃないですか。いろいろな情報を集めて、何が真実なのか、その中には真実もあれば間違いもあって、「こうだったんじゃないか」「こうだったんだ」と、より真実に近づこうとしてきたわけです。それが蓄積されて、やっと徐々に、こういった形になってきたということなんだと思います。


Tommy Far East


ーー石井さんはそのタイミングを見計らって、「一冊マスターピースを作らないと」ということだったんでしょうか?
石井:そんな義務感じゃないよ(笑)。個人的にはRocksteadyがすごく好きだったけど、音楽だから、自分の中でも流行りみたいなものもあるから思いっきり打ち込みのダンスホールが大好きな時だってあるわけ。でもオレはこの「いなたい」音楽を、ずっと好きだったのは事実。ただこれを知った当初の80年代は、それを言うのも憚られるというか、「ちょっと軟弱なんじゃないか」みたいな(笑)。
 当時ヒップホップがきて、打ち込みのダンスホールもガーッときて「Rocksteadyが好き」とか言うと格好悪い、または「ナツメロじゃねえか」みたいな感じが自分の中にあって、あんまり大声では言えなかった。それでも92年に、結局好きで「The Rocksteady Night」っていうイベントをやったんだけど、その前の年にはシャバ・ランクスの来日も仕掛けているから、思いっきりダンスホールをやりつつも、自分の中でバランスはとってきたわけ(笑)。だからずっと好きなんだけど、声を大にしては言ってこなかった(笑)。
 そうしたらトミーと出会って、トミーも「古いのが好きだ」って言うんで嬉しくて、けしかけてというか(笑)、今回の本もトミーのレコードばっかりなんだけどね。

T:僕は資料的にはもちろん揃えてきたんですが、石井さんは80年代からジャマイカに行かれてて、お話させていただいていると、繋がる話がすごくあるんです。それで「昔はそうなんですね」「今はこんな感じですよ」とか、そもそも石井さんはレゲエ・ディスク・ガイドを最初に出されているんで、「そのRocksteady版というか、このジャンルの定義をはっきりさせるものを出したいな」という話の流れで、この本が実現した気がします。

ロックステディにフォーカスした世界初の本が登場!

ジャマイカにおいて、スカがレゲエへと発展する過程のわずか3年ほどの間に存在しただけにもかかわらず、そのスウィートなメロディと和める音楽性によって、今も世界中の音楽ファンを魅了しているロックステディにフォーカスした1冊。アーティストの招聘やフリーペーパー/webサイト『Riddim』の運営で日本のレゲエ・シーンを牽引してきた石井志津男監修のもと、世界的コレクター/DJのTOMMY FAR EASTが提供する貴重なレコード・アーカイヴ、著名人による愛聴盤紹介、アーティスト・インタビュー、対談などで、“敷居は低く、奥は深い”ロックステディの世界へとご案内します。

The ROCKSTEADY BOOK
監修:石井“EC”志津男
資料提供:TOMMY FAR EAST
定価:本体2,200円+税
仕様:A5判/192ページ
発売:2018年9月25日
刊行:リットーミュージック
www.rittor-music.co.jp

レゲエレコードの魅力とは?


石井“EC”志津男
1980年、映画『ロッカーズ』の配給を皮切りにジャマイカ音楽に接触、重度のウイルス感染。その後、OVERHEAT Recordsを1983年にスタート、同年にレゲエ・マーケットを拡大したいという思いからフリーペーパーの『Riddim』の発行を始め、レゲエ・コンサートの主催やアーティスト・マネージメントをする。The Rocksteady Legendシリーズのライヴを現在も継続中。

TOMMY FAR EAST
Far East Records Japan代表。若干17歳にてジャマイカン・オールディーズのセレクターとしてのキャリアをスタート。アルトン・エリス、プリンス・バスター、ストレンジャー・コールといったアーティストの来日公演でプレイのほか、近年は海外でのDJ活動が増えてきている。選曲のモットーは“エクスクルーシヴ”。2016年から“Duke Reid Classics”としてデューク・リードのオフィシャル音源リリースも手がけている。

Photos by Michaël

世界中のレコードを、その手の中に
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