フィラデルフィアのレコードマスター、Rich Medinaに独占インタビュー。アフロ・レコードやヒップホップの始まりについて多くを語ってもらった。

WRITER
Yayoi Kawahito

――あなたにとって最も貴重なレコードは?
壁に飾ってあるのは、かなり貴重なのが多い。いくつかは長年かけて制作した僕の作品の記録だから。後は、とても重要な人達のサイン入り。この質問は決めるのが難しいね(笑)。



(写真左)Orchestre "Rail Band" – Nanthan (1973)
コレクションの中で最も貴重だと言えるかどうかは分からないけど、Rail Bandは渇望の一枚、アフリカン7インチ。非常にレアで、とても高価なレコード。

(写真中)Orchestre Poly Rythmo De Cotonou - Dahomey – Cote D'Ivoire Cherie (1975)
Orchestre Poly Rythmoは、お気に入りのバンドの一つ。コートジボワールのアーティストでJames BrownのファンクとFela Kutiのアフロビートを独特に融合させているんだ。とても攻撃的でアフリカン要素がある曲。だからこのレコードは僕にとって、とても大切。正直あと、1,000枚くらいここからピックアップ出来るに違いないけど(笑)。

(写真右)Mono mono - Layipo (1974)
これは状態の良いものを見つけるのが難しい。レコード自体は見つかるんだけど、大抵は綺麗なコンディションでは無いね。

――Fela Kutiはあなたにとってどのようなアーティストですか?
Fela Kutiのレコードを最初に買い始めたのは1992年で、彼の作曲の素晴らしさに心を奪われたよ。Felaはナイジェリア国家に反抗し、群れから離れ狂暴で、国のシステムを一切信じなかったんだ。植民地時代のやり方を信じず、音楽を通してその事柄を世に明らかにしてきた。そういった事を踏まえた上で、彼のサウンド、メッセージ性、人としてどれだけたくましくあるべきかという姿に感銘を受けたよ。アメリカと植民地化された世界の至る所で、人種や奴隷問題などが起きている。James Brownもとてもタフな男だったけど、Fela Kutiはまた別の意味でのタフさを持っていた。何故なら彼の音楽は植民地時代との戦いに根ざしていたから。

――デジタルが主流の中、まだレコードを聴く理由とは?
神様が頭の両側に耳をつけ、人間はステレオ再生で音を聴くことができる。レコードはたとえモノラルプレスであっても、ステレオ形式で再生されるから聴きごたえのある音かつ、良く聴こえるんだ。例えば、電子レンジで調理した食べ物と、ストーブで調理した食べ物の違いみたいな感じ。同じ食事でも異なるタイプの栄養価値でしょ。MP 3はとてもハイで、レコードで同じ曲を聴いてもそれほど気にはならない。それは、ステレオのパワーであって最大の魅力だと思う。

――7インチ好きで知られていますが、なぜLPではなく7インチなんでしょうか?
ジュークボックスの時代で育ったからね。70年代では7インチのレコードは、プロモーション用のコピーで数々の音楽レーベルがラジオ局、様々なエリアのDJ達に配布していた。販売前にプレイする為に。後は、小さくて運ぶのが便利。時折、曲のヴァージョンが異なる場合もある。

――コレクションの中で、変わったレコードを見せてもらえますか?

Roosevelt Franklinはセサミストリートで、黒人初のキャラクターなんだ。ほらこの髪型見て、クリーンでしょ。このレコードの購入時、たくさんのノートが入ってた。コレクションの中でも、変わったレコードと言えるね。子供の頃、最も重要な学習番組の1つだった。それを観て、数字の数え方などを学んだんだ。高いレコードでは無いし、見つけるのも簡単。10歳の息子がいるんだけど、キッズ用のレコードコレクションは彼の寝室に置いてるよ。彼の部屋には、ターンテーブルと幾らかのレコードを置いてある。もし彼が聴きたいと思えば聴けるようにね。無理矢理ではなく自然な形で、レコードと触れ合えるように。彼の人生には選択肢を与えるけど、後は本人次第だから。父親はいつもツアーで飛び回り、レコードを回して生活をしてる。

(写真左)この人、Jose Felicianoのみたいでしょ。盲目のギター奏者。ただこのクレイジーな韓国男性は、サングラスをかけて、ロックギターのフレットクリップを弾いてる。なぜ彼はフレットクリップを持っているんだろうね(笑)?

(写真中央)これはアメリカの古い雑誌に付いていたレコード。ストーリーに出てくる台詞とか、テーマソングが入っているよ。

(写真右)「Beat It」「All night long」「Rock it」「Island In The Stream」「Flashdance」「 Billie Jean」「 Girls Just Want To Have Fun」 などのカバー曲をフューチャーしたレコード。ヒップホップのシーンとは関係ないレコードだけど、幾つかのバーションはクールなカバーソングだから紹介するよ。

これらはアメリカヴィンテージコミックにレコード付録付き。聴いた通り、読むのは面白い。いくつかは単なるストーリーライン台詞で、いくつかはテーマソングだね。

――レコードを掘っていて、クレイジーな経験はありますか?
以前に一度、Kenny Dopeと、アムステルダムからKC The Funkaholic、確かSpinnaも一緒だったと思うけど、ニュージャージーのカムデンにあるBroadway Eddie’sと呼ばれるレコ屋について話していた。随分昔に閉店し、跡地はそのまま服屋になったんだ。でも、建物の屋根裏部屋にまだレコードが残っている事を探し当ててさ。そこでマスクをして、のど飴を舐めながら15時間くらいレコードを掘ったよ。帰りに車に乗るのはとても難しかった。トランク一杯とバックシートがレコードで埋まったからね。後はインドネシア・ジャカルタでのレコードショッピングは狂ってた。大きなオープン市場に行くと、小売店が集まっていて、オープンストア状態。一面にレコードが積み重なってた。地面から腰くらいにかけての高さのレコードがそこら中に積み上がってて。そこで7時間は過ごしたと思う。すべての棚を隅々まで掘って、約100枚くらいのレコードを家に送ったかな。

――これからの夢や目標は?
フィラデルフィアのコーネル大学、リンカーン大学、バーンズ美術財団でヒップホップの歴史について教えている。過去8〜9年の間に教育、社会に対する行動主義の道に取り組んできた。本当にその過程を楽しんでいるよ。後は、DJとしてより良いパーティーをもっとする事、教師としてのより多くの機会を設ける事、後は息子の思春期。そして、いくつかの作品を市場にも出して行きたい。長年にわたって本当に多くのことをやってきて、ただアーティストであり続けてきた。でも音楽業界をあまり気にしてなかった…長い間ね。その業界の中にはいなかったし、契約を結ぶことにはあまり集中してなかった。お金を儲ける人々のために音楽を演奏せずにきたし、この業界の一部にいるけど、ある意味では一部には属してない。それらを理解した上で、市場に作品を出したいと思っている。そして、学び続ける事。僕の現時点の人生で、目標を維持するのはとてもシンプルなんだ。

Rich Medina

Rich Medina
Rock Steady Crew、The Universal Zulu Nationメンバーに属する、インターナショナルDJリッチ・メディーナ。30年以上の経歴で、プラチナムレコード・プロデューサー、レコーディング・アーティスト、詩人、ジャーナリストとして活躍してきた。マンハッタン・ミートパッキング地区APTから始め、9年間続く伝説のパーティーLil 'Ricky's Rib Shackから、Fela KutiのトリビュートイベントJump-N-Funkなどでアフロビートサウンドでフロアを揺さぶる。現代のルネッサンス教養者であり、先見の明のあるレコードコレクター。

Interview by Yayoi Kawahito
Photo by Koki Sato

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