DJ PUNKADELIXが魅了されたジャケットデザイン

WRITER
富山英三郎

音とアートワークの完成度が高い3枚

――今回選んでいただいた3枚もまた、音とアートワークの完成度が高いわけですね。では、1枚ずつ紹介していただけますか?

音もジャケットもエポックメイキングな作品
FUNKADELIC/『COSMIC SLOP』(1973)

高校生の頃に出会ったファンカデリックは、私のルーツ的なアーティスト。ロックを追いかけていると、必ずどこかでP-FUNKにぶつかるんです。パーラメントとか、その他のアーティストももちろん愛聴していますけど、ファンカデリックが一番サイケでアバンギャルドなので好きですね。ご察しの通り、私のDJ名義であるPUNKADELIXもここから取っています。

ジャケットに関しては、ペドロ・ベルというイラストレーターが初めてジャケットに起用された作品でもあって。音楽的にもファンカデリックを代表する一枚ですし、ブラックミュージックの新しい方向性を示したという点で、エポックメイキングな作品。このアルバム以降ほとんど彼が描いているので、ファンカデリックと聞いたときにメンバーのキャラクターよりも、この絵を思い浮かべる人も多いと思います。ペドロは、ジョージ・クリントンなどと一緒に、P-FUNKにおけるビジュアル的な世界観を構築していった人。正直に言うとちょっと気持ち悪さもあるんですけど(笑)。この感じがすごくP-FUNKのファンタジー性や面白さを象徴している気がします。中面のタイトルの入れ方とかも凝っていて、P-FUNKの神話性とリンクしている点もいい。美しいというわけではないですがユーモラスで力強いアートワークです。

デビッド・ラシャペルの写真を起用したジャケット
Lil' Louis & The World/『Journey With the Lonely』(1992)

リル・ルイスは、ハウスやテクノといったエレクトロニックミュージックの中でもっとも影響を受けたひとりです。じつはこの写真、ファッション・フォトグラファーとして有名なデビッド・ラシャペルが撮影しているんです。私も最初は気付かなくて、ある時たまたまクレジットを眺めていたときに発見したんです。でも、よく見るとこの水の滴り感とか、お花の感じとか、ポートレートとして普通ではありえない雰囲気はラシャペルっぽいですよね。このアルバムは大学時代に買って、ちょうどファッション写真に興味を持った時期だったので感動したのを覚えています。リル・ルイスらしいエロティックな感じが気持ち悪くていいですよね。なんで百合の花を持っているんだろう? っていう(笑)。

以前、リル・ルイスとはDJでご一緒する機会があって、サインをしてもらうならこのアルバムがいいと思ってお願いしたんです。マジックの色が落ちてしまったんですけど、それがいい感じに馴染んでいるのも気に入っています。お会いしたときに話したら、リル・ルイスはアートにもとても造詣が深い方で、その時は写真を勉強していると言っていました。彼の要望でこのジャケ写が撮影されたのかまではわからないですけど、音楽とアートワークの質感がぴったりハマっている秀逸な一枚ですね。

モノとしての魅力にも溢れている一枚
LUCA LOZANO/『KING BLADE』(2017)

昨年、まさにジャケ買いした一枚。ルカ・ロザーノはオールドスクールっぽいベースラインのテクノやロウハウスサウンドをリリースしている、すごく好きなアーティストです。まずは彼の音がタイプという前提がありつつ、このアートワークを見て「ヤバい!」と思いました。このタギング(個人やチームを表すサイン)でできたアイコンのようなグラフィックのパンチ力すごいなって。これは伝説的なグラフィティアーティストのBLADEによるものなんですけど、曲名も『KING BLADE』ということで彼に捧げた作品だそうです。

BLADEは70年代からニューヨークの地下鉄に多くの作品を描いていました。シュープリームもトリビュートしています。

この12インチを買って開けたら、レコード袋の紙がポスターになっていて。さらにステッカーも封入されていて。こういうサプライズは嬉しいですよね。モノトーンでパンキッシュなジャケットに対し、このポスターは色もポップで80年代テイスト。その対比も面白いなって思いました。もちろん、音も最高にかっこいいです。

――どれもクセの強い3枚ですね。「気持ち悪い」が褒め言葉なのも面白い。
「うわっ、かっこいい!」とか、「うわっ、気持ち悪い!」とか胸がゾワッとするものに魅かれるんです(笑)。

――ご自身がアーティストのCDジャケットをデザインをするときは、どうアイデアを膨らませていくのですか。
アーティストさんの内側にあるものを表現したいという気持ちが強いですね。作品への思いはもちろん、単純にその方が好きなものとか。そのためになるべくお話を聞くようにしています。そこから、さまざまな要素を合体させていく感じです。

――先日、MAYUDEPTH名義で初のEP『Sneakpeek』を発売されましたが、このジャケットはどう生まれたのですか。
一昨年くらいから音楽制作もするようになって。同時期に、フォトグラファーである佐野方美さんの写真集『SLASH』の装丁をやらせていただいたんです。当時、佐野さんの膨大な写真を見ながら試行錯誤していたこともあって、自分の音源にも彼女の作品を使いたいと思うようになったんです。佐野さんは都市の断片を切り取ったシャープな作品が多いのですが、写真集ではその合間に自然や生物の写真を挟み込んでファンタジックな展開で見せています。私の楽曲もテクノなんですけど、人の声など有機的なものも取り入れていたので、木や森といった自然をモチーフの写真を使うことでコントラストを出したいと思ったんです。

EP『Sneakpeek』。3月2日(金)には、レジデントを務める「MOTORPOOL」は本EPのリリースパーティーとしても開催される。

――最後に、PUNKADELIXさんが考えるレコードの魅力を教えてください。
紙のテクスチャー感が好きです。それと、ジャケットを見て想像する、音を聴いて想像する。そのふたつを自分の感覚で楽しむのが好きなんです。レコードはそういう時間を育むことができるのでいいですね。

――ジャケットや音から感じるものを大事にされているんですね。今日はありがとうございました。

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PUNKADELIX

PUNKADELIX
国内外で活動しているアートディレクター/デザイナー、近藤麻由によるソロプロジェクト。学生時代より東京、そして滞在していたニューヨークでレコードを買い集めるようになりDJとしてのキャリアをスタート。テクノ、ハウスをベースに国内外でプレイ。2012年にはオフィシャルミックスCDをリリースしたほか、2018年1月にはMAYUDEPTH名義でEPをリリース。

取材・文:富山英三郎
撮影:則常智宏

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