TENDRE インタビュー ~PERSONAL BUYER

WRITER
濱安紹子

様々なユニットやプロジェクトに参加する傍ら、2017年にソロデビューを果たしたTENDRE(テンダー)こと、河原太朗さん。ベーシスト / 歌手 / 音楽家 / プロデューサーの肩書きを持ちながら、鍵盤やサックスといった多種多様な楽器も自在に操るマルチプレイヤーです。「最近は日本語の歌詞を大切にして曲を作っている」と語る彼の言葉の置き方と表現は、とてもユニークでありながら実直な印象。ジャズミュージシャンの両親を持つ彼の実家は大量のレコードコレクションを有しており、彼自身もその影響を多分に受けているようです。丁寧に淹れたコーヒーのようにレコードを味わい、古着屋巡りのように中古レコード屋巡りを楽しんでいるというTENDREさん。インタビューを通して、そのカラフルで豊かな感性に触れてみたいと思います。

——パーソナルバイヤーの印象はいかがでしたか?
自分の周りも含めて、アナログを手にする人が増えている気がしているんですが、レコードの選び方って人によって違うし、定まっているわけじゃないですよね。僕自身、ジャケットに一目惚れして買ってしまうこともあるし、友人に薦められて買うこともある。そんな中で、「あの人が選ぶレコードを」ってキャッチコピーの通り、好きなアーティストが選ぶレコードを手にできる選択肢があるのはすごくいいなって。レコードって嗜好品であって特別なもの。そのアーティストがどういう意図を持ってレコードを手にしているのか、どういう音楽をレコードで聴いていたりするのか、その感覚を知ることで音楽性の幅も広がるし、そのアーティストのことをもっと知ることができると思います。

——レコードは昔から聴いていたんですか?
実家にめちゃくちゃあったんですよね。物心ついた頃から両親が流すレコードの曲をよく耳にしていました。高校になってからブラックミュージックに興味を持ち出して色々聴いてましたが、当時自分のお小遣いで買ってたのはほとんどCD。何しろ膨大な量のレコードが家にあったので、敢えてレコードを買おうという気には中々ならなかったんですよね(笑)。なので、実は自分で買い出したのはここ数年のこと。今じゃ暇があればしょっちゅう中古レコード屋へ行ってるし、結構な勢いで収集しています。

——レコードの魅力ってどんなところだと思いますか?
レコードに針を落として音楽と向き合う時間って僕にとってすごく有意義なもの。自宅でじっくりとコーヒーを淹れる感覚に似ているのかもしれません。日常の中でその時間を作れている環境っていいなって最近改めて思うんですよね。

——コーヒーとレコード、言われてみれば確かに。自動販売機やコンビニでも買えるしインスタントでも味わえるけど、丁寧に入れたコーヒーってまた違う味わいと特別感がありますよね。
そうなんです。デジタルとアナログの聴き比べっていうのも楽しみのひとつ。気に入った曲に関しては、レコードで聴いたらどういう風に聴こえてくるんだろうって気になっちゃうんですよ。僕が曲を作る人間だからかもしれないけど、こういう帯域でこういう風に楽器が鳴ってるんだとか、レコードだとそういう発見が楽しい。制作者の意図を深く知りたいって時や、これはレコードで聴かないともったいないって思う作品に出会ったら、なるべくレコードを買うようにしています。

——普段はどうやって音楽を聴いたり、リサーチしたりしているんですか?
サブスクサービスは複数利用していて使い分けています。曲をストックするのがApple Music、モノを探すのはSpotifyみたいな、すみ分けが自分の中になんとなくあるんですよね。だけど、サブスクで出てくる関連曲を掘って曲探しをすると、情報量が多すぎて頭に入りきらず漏れちゃうことも。「あー、あの時聴いてたあの曲なんだっけ」って思いながら辿り着けないことがよくあります。あとは、SNSやネットで曲を探すこともあります。『COLORS』とか、『Tiny Desk Contest』っていうYouTubeの番組で海外の新しい音楽をチェックしています。

——色々なサービスを駆使されてるんですね。
アナログな探し方もしていますよ。友人に教えてもらうこともあるし、中古レコード屋巡りも大好きです。よく、ツアーの合間にその土地の中古屋さんを訪れたりします。古着屋へ行くのと近い感覚なのかも。中古屋って場所や地域によって眠っているものが違うし、その中で掘り出し物に出会った時やジャケ買いで成功した時は嬉しいですね。

——TENDREさんはベースや歌唱、作詞作曲に加えて、たくさんの種類の楽器を弾かれていますが、これまでどういう音楽的な影響を受けてきたんですか?
両親の影響は大きいと思います。ジャズシンガーである母親のステージで歌わせてもらったり、両親のミュージシャン仲間のピアニストさんにピアノを教えてもらったり。でも、実は最初にちゃんとやった楽器は管楽器。中学校の時に入った吹奏楽部でトランペットを担当したのがスタートです。で、その2年後くらいに、バリトンサックスを弾いてた先輩に頼まれて何故かバリトンサックスに転向。その後高校になってからも、部員が減ったという理由で他の楽器を任されることが増えてきて、気づいたら色々な楽器をやってたみたいな(笑)。まあ、そういう経験が今に活きているのかなと。高校からは吹奏楽とバンドを両立してやってました。

影響を受けたアーティストは、はっぴいえんどですね。母親が日本人アーティストで唯一好きだったバンドで、僕も小さい頃からしょっちゅう家で聴いていたんですが、大人になって改めて歌詞の良さというか言葉の使い回しの凄さに気づきました。ここ最近僕は、日本語の歌詞を大事にするということに重きを置いていて、色々な曲の歌詞を意識的に見ているんですが、昭和の歌詞って改めて見るとすごいんですよ。結構えげつないことを言ってたり(笑)。それに比べて、最近の歌詞の中には当たり障りないものが多いなって感じることがあります。言いたいことは昔も今も沢山あるはずなのに、収まりやすさや分かりやすさを求めている傾向があるような。別に攻撃的なことを言えって訳ではないんですが、表現の柔軟性って昔の方があったような気がしています。今は日本語と英語を一緒に歌う曲が多いですよね。言い方が悪いかもしれませんが、英語で逃げているような曲も少なくないのかなと……。例えば、「Baby」ってめちゃくちゃ便利なワードなんですよ。正直僕も使いたくなる時があるんですが、なるべく容易いBabyは使いたくないし、Babyを上回る言葉を探していきたいなって(笑)。

——容易いBaby(笑)! 確かに多用されているワードですね。
いや、「これはどう考えてもBabyだろ」って思うことがあったら使うかもしれませんけどね(笑)。パーソナルな言葉を模索して自分なりのスタイルで歌詞を伝えていきたいなと常々思っています。

——では、本日ご持参いただいたお気に入りレコード3枚をご紹介してください。

■はっぴいえんど 『風街ろまん』

先ほどお話したように大好きなバンドの名盤です。実家にあったのを母親に頼み込んで譲ってもらいました。年季が入り過ぎて、シミがやばいし埃臭いですね(笑)。ブックレットやアートワークも大好きな要素のひとつなんですが、レコードではそれを大きなサイズで堪能できるのが良いですね。……(ジャケットに挟まっていた紙切れを見つけて)ん? なんだこれ。僕が昔落書きしてた何かが出てきました。誰の似顔絵なんだろう、これ(笑)。戻しておきましょう。

▲レコードジャケットの中から出てきた、味わい深い謎の似顔絵

■Bill Evans Trio『Bill Evans Trio With Symphony Orchestra』

Bill Evansはジャケットのアートワークがすごく好きなんですよ。ついつい収集してしまって、これ以外の作品も沢山持っています。友人に貸して返ってこなくなったのもあって、正直にお話しすると、本当はその貸して返ってきてない作品を紹介したかったっていう裏事情も(笑)。いや、この作品ももちろん大好きですけどね! 今考えると、僕がレコードを収集するようになったきっかけはBill Evansなのかも。彼は本当に数多くの作品を出しているんですよね。実家にある数枚のレコードだけじゃ飽き足らなくて、自分で探して買い集めることになりました。

■The Crusaders『Street Life』

色々な曲のサンプリングネタとして使われている作品。メンバーだったJoe Sampleが元々好きで、彼の作品を掘っていく中で出会ったアルバムです。僕が音楽を作る上で最も影響を受けた作品、と言っても言い過ぎじゃないかもしれません。実家でもよく流れていていたんですが、自分用にもう1枚買いました。なんというか、実家にも1枚置いといてほしい作品なんですよね(笑)。そう言えばJoe Sampleで思い出しました! 彼の作品の中でボーカルが入っている曲があるんですが、母親に無茶振りされてステージで歌わされた思い出がありますね。中学生の声変わりする少し前くらいの時で、思うように歌えなくて悔しい思いをした記憶があります。

——どれも元々はご実家にあった思い入れのあるレコードなんですね。
なお、今回既に選盤を終えられたとのことですが、どういう曲を選んでくださったんでしょうか?
アナログ映えを意識した部分はあります。ムード的なものだけではなく、レコードで聴くと良さを再発見できそうな作品が多いのかなと。古めの作品が多いですが、新しいアーティストの曲も入っていますよ。中には自分がレコードで持っていない作品も含まれているんですが、これアナログで聴いたらきっと良いだろうなって想像で選んでいたりもします。基本的にはジャズやソウルが多いんですが、ロックやポップス系など、ちょっと意外性のある作品も入ってるのでお楽しみに! ぜひ聴き比べしてみてほしいですね。

——興味深いお話をありがとうございました!

申込者へのプレゼント用メッセージカードを記入してもらいました。

<今後の活動予定>(※)
10月2日に2枚目のEP『IN SIGHT』、10月24日に初のアルバムとなる『NOT IN ALMIGHTY』をリリース予定。

「IN SIGHT - EP」release tour
10月13日(日)北海道・札幌 BESSIE HALL ※SOLD OUT
10月15日(火)宮城・仙台 LIVE HOUSE enn 2nd ※SOLD OUT
10月20日(日)福岡 the voodoo lounge ※SOLD OUT
11月4日(月)大阪・梅田 Shangri-La ※SOLD OUT
11月5日(火)愛知・池下 CLUB UPSET ※SOLD OUT
11月15日(金)東京・恵比寿 LIQUIDROOM ※SOLD OUT
11月18日(月)東京・恵比寿 LIQUIDROOM(追加公演)
11月20日(水)大阪・梅田 Shangri-La(追加公演)
https://smash-jpn.com/live/?id=3184

※本記事は2019年10月に、PERSONAL BUYERのサイトにて公開されたものです。

▼PERSONAL BUYERの詳細はこちらをご覧ください
【NEWS】新ゲストバイヤーに TENDREの参加が決定!!

TENDRE

TENDRE

ベースに加え、ギターや鍵盤、サックスなども演奏するマルチプレイヤー、河原太朗のソロ・プロジェクト。Yogee New Waves、Ryohu、sumika、Chara、SIRUPなど様々なバンドやアーティストのレコーディングやライブに参加し、共同プロデュースなども務め、その活動は多岐に渡る。2017年12月にTENDRE 名義での6曲入りデビュー EP 『Red Focus 』をリリース。同作がタワーレコード “ タワレコメン”、 HMV“ エイチオシ ” 、 iTunes “NEW ARTIST” 、 スペースシャワー TV“ ミドルローテーションに選ばれるなど、各方面より高い 評価を獲得。 2018 年10月には、tofubeatsによるリミックスも話題となった配信限定シング ル『RIDE 』を含む1st アルバム『NOT IN ALMIGHTY 』をリリース。

2019 年4月/5月と連続してシングル『 SIGN 』『CHOICE 』をリリース。前者はオ ーストリアのスポーツサンダル・ブランドTevaとコラボレーションした MVも話題を集め、その楽曲はJ-WAVE”TOKIO HOT 100” で最高位4位を記録。また、 Hondaが手がける”旅×バイク”の新プロジェクト のテーマソングとして新曲『ANYWAY』が起用されるなど、その注目度は益々高まっている。 今年もARABAKI ROCK FES 、 VIVA LA ROCK 、 GREENROOM 、 FUJIROCK FES 、 RISING SUN ROCK FES 、 SWEET LOVE SHOWER 、Local Green Room、sunset liveなど国内の主要フェスへの出演が続々と決定している他、 今年6月に開催された東名阪のワンマン・ツアーは追加公演を含む全公演がソールドアウト。

2019年10月2日に待望の新作『 IN SIGHT – EP』のリリースが決定。

http://tendre-jpn.com/

インタビュー:濱安紹子
写真:則常智宏

世界中のレコードを、その手の中に
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