SIRUP インタビュー ~PERSONAL BUYER

WRITER
矢島由佳子

2017年9月に1stシングル『Synapse』でデビューを果たして以降、Honda「VEZEL TOURING」のCMへの起用などを通し、瞬く間に人気&重要アーティストのポジションへと駆け上がっているSIRUP。今年4月にLevi’s®︎とコラボし発売した初の7インチレコード『LOOP/Do Well (Yaffle Remix)』は即完売を記録し、11月3日に予定されている1stフルアルバム『FEEL GOOD』のアナログ盤リリースへの期待が高まっている。今回のインタビューでSIRUPは、その名前の由来である「SING(歌)」&「RAP(ラップ)」の独特な歌唱スタイルをものにするまでのルーツと、新しい音楽に出会い続ける喜びを語ってくれた。

——まず、「パーソナルバイヤー」のサービスに対してはどういった印象をお持ちですか?
単純に、めちゃくちゃ面白いなと思いました。どのレコードが届くかはわからないけど、「俺が選んでる」というところが入り口となっているので、お客さんにとって音楽の広がりにはなるだろうし、それが面白いなって。自分のルーツにあるものばかりを選んだので、SIRUPの音楽を聴いてくれている人なら絶対に好きになると思うんですよね。自分ではチョイスしない音楽かもしれないけど、これがいい出会いになったら嬉しいなと思います。

——ネタバレにならない程度に、今回チョイスしたレコードの内容を教えてもらってもいいですか?
ヒップホップとソウル、ブルースに寄ってますね。新旧問わず、自分が聴いてるものを選びました。最近のものもあれば、昔のものもあります。

——SIRUPさんの音楽遍歴を聞かせてもらえますか?
今までで一番細かく言いましょうか(笑)。本当の始まりはどこなのかって、難しいところなんですけど……意識を持って音楽を聴きだしたのは宇多田ヒカルさんだってよくインタビューとかでも言ってるんですけど、小学生のときはMr.Childrenをよく聴いていたし、中学の頃はJ-POPの中でもR&B的なものが流行っていたのでSkoop On Somebody、ゴスペラーズ、CHEMISTRYとかを聴いてました。ゆず、コブクロ、平井堅さんとかも聴いてましたね。あとは、安室奈美恵さんの曲で“Don't wanna cry”とかが好きだったんですよ。

——若い頃から、R&B的な歌モノに反応してたんですね。
そうですね。ロックだと髭(HiGE)、GO!GO!7188、LOVE PSYCHEDELICOとかを聴いてました。EGO-WRAPPIN’を聴きだしてから、深くなっていったと思います。その間も、母がシェリル・クロウやエリック・クラプトンが好きだったので一緒に聴いていて、そういう形で洋楽にも若干触れてたのかな。胎教でシャーデーを聴いてたらしいんですけど(笑)。

——いい胎教ですね(笑)。高校生の頃は?
高校1年生のときに、スティーヴィー・ワンダーとアリシア・キーズを先輩に聴かせてもらって、そこからソウルとR&Bにハマっていったんです。派生的にアリシア周辺のヒップホップを聴いたり、TSUTAYAでネオソウル的なものを借りて聴いてたりして。そのときも宇多田ヒカルさんやMr.Children、m-floは全部聴いてましたね。

それで、本格的に音楽をやりだした19とか20歳くらいのときから、The Soulquarians周辺を意識的に聴きだしたんです。コモン、モス・デフ、エリカ・バドゥ、ディアンジェロとか。そこから派生してRHファクターとかジャズも聴き始めて、ビリー・ホリデイ、サラ・ヴォーンとかジャズシンガーを知り、ソウルはダニー・ハサウェイ、マーヴィン・ゲイ、サム・クックなどを聴いてました。あと、大学のときはインディ・ネオソウルが流行っていて、それもすごくディグってましたね。そこからだんだんエレクトロとの融合が始まって、その中で一番ハマったのはMUSIQ SOULCHILDで。僕の聴いていた順序で話すと年代が飛んだりもするんですけど……そのあと自分の中にアンビエントR&Bが入ってきたのかな。フランク・オーシャンとかOdd Futureあたりが気になりだしたんですよね。フランク・オーシャンくらいから、R&Bというものが男女の恋愛もののみではなくなって、精神世界にも入ってくるようになってきて、ロックだとArctic Monkeysとかと整合性があるなと思いながら聴いてました。

——ロックも結構聴かれてたんですか?
GorillazとかBlurとか、大学時代の友達に教えてもらってわりと聴いてましたね。23、4歳くらいのときが、一番いろんなジャンルを聴いていた時期でした。25歳のときに「KYOtaro」名義で自主制作でアルバムを出すんですけど、ちょうどそれくらいに、チャンス・ザ・ラッパーが『Acid Rap』を出したんですよね。自分がこれまでで一番「おお」と思ったラッパーは、やっぱりチャンスなんです。『Acid Rap』は永遠に聴き続けられると思った。歌に近いスタイルだったというのもあるけど、それだけじゃなくて、チャンスには圧倒的な個性を感じたんですよね。

——レコードは、昔からよく聴いてました?
歌い始めたときに、兄貴の友達のDJの家で、ナズとかファボラスのインストを使って曲を作っていて、そのときにレコードをディグったりしてました。いいインストが入ってるかどうかで選んでましたね。KYOtaro時代に一番よく歌ってたトラックも、MUSIQの“Forthenight”のインストをアレンジして形にしたものだったりします。

——そうやってレコードにはクリエイター側ならではの楽しさや快感もありますが、レコードを体験したことのないリスナーにその楽しさや魅力を伝えるとすると、どういう部分になると思いますか?
デジタルで聴いてるよりも、音圧・音質が全然違う。情報量が削ぎ落とされてない分、質感が違うというか、生感があるんですよね。友達の曲をレコードで聴いたときに、いつもの5倍くらいよく聴こえて、感動したけどめっちゃ悔しくなって(笑)。

——今日はお気に入りのレコードを3枚持ってきていただいていますが、その悔しさを晴らす機会になったとも言える、SIRUPとしての初レコード『LOOP/Do Well (Yaffle Remix)』も入っていますね。自分の曲を初めてレコードで聴いたときは、どう感じました?

■SIRUP『LOOP』

もう、全然違いましたね。“LOOP”とか、キックとかの聴こえ方が違うし、声も質感が違うというか……言葉で言い表すのは難しいんですけど。僕の曲はレコードノイズを入れてるものも結構あるので、レコードで聴いてもらったほうがジャストな感じになる曲もありますね。あと、ドラムとベースだけ生で録ってる曲とかは、レコードで聴くと音像がすごくいい感じだと思います。

しかも『LOOP』のジャケットは、アナログで出すのが決まる前から、「レコードにしたいな」と思って作っていたんですよ。この色褪せ具合は、黒の下地にオレンジを塗って、それを写真で撮ってデータ化することであえて作っているんですけど、レコードにしないと絶対にわからないと思うんです。タイトルのグラフィックも、手書きにこだわったりしていて、「これはもう絶対にレコードにすべきやろ」という感じだったので、すごくいい機会でした。今年また『FEEL GOOD』をあえてレコードで出すのも、音質を楽しんでほしいし、ジャケットのデザインのメッセージも強く伝わってほしいからですね。



——お気に入りのレコード、あとの2枚は、スティーヴィー・ワンダーが22歳のときに完成させた『Talking Book』(1972年)と、今年9月にレコード盤がリリースされたばかりのGoldlink『Diaspora』を持ってきていただいていますね。それらを選んだ理由は?

■スティーヴィー・ワンダー『Talking Book』

『Talking Book』は、スティーヴィーが目が見えないからだと思うんですけど、ジャケットに点字がついていて、そういう感動もレコードならではですよね。このアルバムは、自分の人生でかなり聴いたものです。めっちゃ聴いた曲しか入ってない(笑)。



■Goldlink『Diaspora』

逆にGoldlink『Diaspora』は、これから聴こうと思っている、好きなアーティストがリリースしたばかりのレコードを、と思って選びました。SIRUPの影響元としてチャンスの名前を挙げることが多いですけど、実はGoldlinkも、相当僕のスタイルに影響を及ぼしてます。このアルバムは、Goldlinkにとってのマスターピースになりそうな作品ですよね。



——最近は、どういった形で新しい音楽に出会うことが多いですか?
サブスクで、友達のプレイリストとか新譜をチェックしますね。あとは、友達とか好きなアーティストがInstagramのストーリーで上げてるものを聴いたり。ジョルジャ・スミスとか、音源をリリースする前から、自分の好きなアーティストが彼女の歌ってる映像をストーリーに上げてたんですよ。それで「めっちゃいいやん」と思って、ジョルジャ・スミスのInstagramもフォローするようになったんですけど、当時はまだ全然無名だったのに、音源出したらすぐ売れた! みたいな(笑)。自分の好きなアーティストが好きなアーティストって、大体好きになるじゃないですか。そういう意味でも、「パーソナルバイヤー」の企画は親和性が高いなと思ったんですよね。

——新しい音楽に出会う価値や喜びって、人生においてどういうものだと感じていますか?
自分の周りでも、それまではあんまり音楽を聴いてなかったのにSIRUPを聴くようになってから、他の音楽も聴くようになった、ライブとかで外に出向くようになった、と言ってくれる人がいて。それってすごくいいなと思うんです。今、世の中って大枠でシステム化されてるから、やっぱり、頭がかたくなると思うんですよ。だから、まったく価値観の違う人が作ってる音楽に触れるのはいいなと思う、というか。自分がいいなと思う音楽って、大体は自分にフィットするんだけど、その中に全然違うところが必ずあって、その「違うな」と思うものを一個でも新しく自分の体に入れられるのが音楽との出会いだと思うんです。そうすると、自分がいいなと思うものが増えていくんですよ。自分の中で面白いものが増えて、感覚が豊かになる。自分の見えることが広がって、「こういうふうに考える人がいるんや」「こういうことをこういうふうに感じるんや」と思えると、他人のことを許せるようにもなる。だから、新しい音楽を聴くことって、自分の生活を豊かにする第一歩だと思いますね。大げさかもしれないけど、そういうことにつながるんだと思います。

申込者へのプレゼント用メッセージカードを記入してもらいました。

リリース情報
アーティスト:SIRUP
タイトル:FEEL GOOD
フォーマット:2LP
一般販売価格:4,500円(税抜)
発売元:TOYOKASEI
発売日:2019年11月3日(土)<レコードの日>

HMV : https://bit.ly/2KHQwrZ
Disk Union : https://diskunion.net/black/ct/detail/1007968913

※本記事は2019年11月に、PERSONAL BUYERのサイトにて公開されたものです。

▼PERSONAL BUYERの詳細はこちらをご覧ください
【NEWS】新ゲストバイヤーに SIRUPの参加が決定!!

SIRUP

SIRUP
SIRUPは変幻自在なボーカルスタイル、五感を刺激するグルーヴィーなサウンド、そして個性的な歌詞の世界観でリスナーを魅了する。 2017年にリリースしたデビュー作「SIRUP EP」が主要音楽ストリーミングサービスを賑わせ、2018年8月には2nd EP「SIRUP EP2」をリリース。 2019 年5月にはYouTubeで現在950万回以上の再生を記録している”LOOP”や、Honda「VEZEL TOURING」TVCM曲にも起用された”Do Well”などを収録した初の1stフルアルバム「FEEL GOOD」をリリースし、オリコン週間ランキング7 位、Apple Music R&Bチャートでは5ヶ月連続1位を記録中。12月に開催する初の ZEPP公演(東京・大阪)もSold Outするなど現在話題沸騰中。

https://sirup.online/wp/

写真:Leo Youlagi
インタビュー:矢島由佳子

<取材協力>
フレディ レック・ウォッシュサロン トーキョー
東京都目黒区中央町1丁目3-13

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