Nulbarich(JQ)インタビュー ~PERSONAL BUYER

WRITER
濱安紹子

ざっとプロフィールを眺めてお分かりの通り、謎多きアーティストというイメージの拭えないJQさんですが、実は「好きなレコードはオリジナル盤を買いたくなる」というコレクター精神と、「HIPHOPカルチャーに感銘を受け、DJを目指し、渋谷のレコード屋に足蹴く通っていた」という、世代感を伴う共感度の高いエピソードの持ち主。自身のレコード愛とともに、特定層にはガシガシと響くであろう、音楽的原体験や昨今のアナログ・リバイバルについても語っていただきました。

——パーソナルバイヤーの印象はいかがでしたか?
レコードに対して取っ付きにくさを感じていたり、何から聴いたらいいかわかんないっていう人、結構多いと思うんですよね。でもその一方で、中にはオリジナル盤しか聴かないみたいなレコード好きやコレクターもいると思うんです。そんな少々玄人向けのシーンにライトに入り込める場所として、すごく良いなと思いました。

——レコードとの出会いはどのようなものでしたか?
クラブに行き始めたのがきっかけです。HIPHOPが掛かっている箱でループミュージックに出会い、「自分もDJやってみたい」「曲を作ってみたい」って思うようになり、それからレコードを買い出すんですけど、はじめはクラブのブース前で、DJが掛けてるレコードのジャケットをひたすら撮りまくってましたね(笑)。DJが今掛けてるレコードをちょっと分かりやすいように置いてくれるんですよ。それをチェックしてレコ屋へ探し行く感じでした。

——かなりアナログな曲の探し方ですよね(笑)。
最初は何の知識も情報もなかったんで(笑)。DJを始めてからは、HIPHOPのトラックに使われているサンプリング元の曲を調べて買ったりしてました。ジャズとかソウルとか昔の音楽が多かったかな。逆に、自分で曲を作るようになってからは、こういうのをサンプリングしてみたいっていうネタになりそうなものを掘るようになりました。高田馬場にある、おじいちゃんが1人でやってるような中古レコード屋へ行って、良さげなレコードをとりあえず直感で買ってみたり。試聴できないお店だとジャケ買いすることが多くて、買って聴いてみて「これじゃなかった」ってこともしょっちゅうで(笑)。

DJやってる時は1時間位のセットリストを考えるわけなんですけど、その中に、世間的には知られていないけど自分的に気に入ってるマニアックな曲を混ぜるのが好きで、それを掛けた時のお客さんの反応をブースから伺うんですよ。それで盛り上がってる時もあれば、「あぁ、やっぱダメだな」ってなる時もありましたね(笑)。

——DJ経験者なら共感しそうなお話ですね。ちなみに、ルーツ的なところで言うとやはりHIPHOP?
そうですね。リアルタイムではなかったですけど、特に90年代のHIPHOPにどっぷりハマりました。それまでAメロ・Bメロ・サビみたいな展開の音楽しか知らなかったので、例えばFugeesの「Killing Me Softly With His Song」みたいな、シンプルなループ音の上に歌とかラップが乗ってるループミュージックがすごく新鮮で。クラブでそれを聴いてみんなが踊ってる光景というのも衝撃的でしたね。

90年代のHIPHOPで主流だったサンプリング文化のおかげで、色々なジャンルや年代の音楽と出会えたのも僕にとっては大きいですね。だけど、古いジャズなんかの場合、調べて勉強して知るわけではなく、サンプリング元を掘っていく過程で知ることが多いので、「これを知ってるなら、あれも知ってるでしょ」っていうような大物アーティストとかを、普通に知らなかったりすることも。振れ幅がすごいし、飛び飛びの知識が多いんですよ(笑)。

——HIPHOP好きならではの音楽との出会い方ですよね。
2000年代になると、サンプリングするのが世界的に厳しくなってきて、文化自体が薄れてきちゃった感じはあります。僕の世代的には2000年代初頭がリアルタイム。当時は渋谷界隈にレコ屋がたくさんあって、しょっちゅう行ってました。レコ屋のショッパーを持って歩くのが定番で、DMRとかCISCOとかMANHATTANとか、ショッパーの店名見てそいつの好きなジャンルが分かるみたいな、そんな時代でした。クラブに行くのも渋谷界隈。JAZZY HIPHOPが流れる「オルガンバー」ってところや、丸山町にある「HARLEM」「VUENOS」「ASIA」といった、ニュースクールがメインで流れるところへ行ってました。当時それらの箱でよく掛かってた曲や自分が掛けていた曲も、今日持ってきたレコードの中に入ってます!

——では、この流れでご持参頂いたレコード3枚をご紹介して頂けますか

■Grandmaster Flash Grandmaster Flash & the Furious Five「The Message」

「HIPHOPが好きなら歴史も学べ」と当時の先輩に言われ、70・80年代HIPHOPの立役者的なアーティストを掘っていた時があって、その時に出会ったのがこの「The Message」。歌詞の和訳を見たことがあるんですけど、結構過激な内容だったのを覚えています。歴史的名曲なのでレコードで持っていたいと思って買いましたが、当然ながらオリジナル盤は高くて買えないので再発で。(再発盤は)謎に「Made In England」(オリジナル盤はアメリカ)で、45回転なんですよね。45回転の方が音質が良いって言われているんですけど、DJ目線で言うと(回転が早いので)擦りづらくて結構迷惑な代物(笑)。そのうちオリジナルを買ってもいいかなって思ってます。思えば、DJをやってた時はそうやって45回転でもいいかなって買って、いつも後悔してましたね……。ただただ、プレイがしづらいっていう(笑)。



■Nujabes feat. Shing02『Luv(sic) PART TWO』

JAZZY HIPHOPが流行ってた2000年初期当時、絶対と言っていい程クラブで掛かっていた記憶があります。特にオルガンバーとかで掛けてるDJが多かったですね。Nujabesさんは日本のJAZZY HIPHOPを確立させたとんでもないアーティストで、この盤は当時周りでDJやってたやつはみんな持ってるんじゃないかってほどの名盤。リアルタイムで僕の基盤を作ってくれた大切な作品でもありますね。

■BENNY GOODMAN『BEST 20』

ジャズに関してはサンプリング用に買うことが多いので、曲がいっぱい入っているベスト盤とかの方がありがたいんですよ。ジャズ好きの人からしたら、かなり邪道な買い方でしょうね(笑)。中古屋って試聴できない場合が多いので、知ってるアーティストの作品の中でも、できるだけ曲がたくさん入ってるものをって基準で選びがちでしたね。このアルバムは、トラックを作り始めた時にサンプリングネタを探しに行って出会った1枚。古いジャズのレコードはネタ用として結構持っているし、自分の作品にも使っています。33回転の場合、敢えて45回転にしてサンプリングしたりしてね。ちなみに、有名曲の元ネタに関してはオリジナル盤で欲しくなっちゃうんですが、それに関しては完全にコレクト欲によるものです。結局、針を落とす勇気がなくて観賞用になっちゃう(笑)。

——JQさんの音楽へのスタンスが、段階的に分かる3作品ですね。ところで、レコードの魅力ってどんなところだと思いますか?
データやCDで表現しきれない音や温かみを、レコードは表現してくれるんですよね。時代がどんどん便利になるにつれて人は、ヒューマニズムとか温かさを求めてアナログなものに手がいくんじゃないですかね。レコード鑑賞ってすごく人間味のある音楽の聴き方だなと思うし、僕は好きですね。あの独特のノイズや歪みもたまに摂取したくなる。普段サブスクサービスも利用していますが、家でゆっくりしたい時はレコードに針を落とします。自分の空間を良質なものにしてくれる気がするんです。

今の時代にレコードで音楽を聴くのって、ゲームボーイとかファミコンやるような感覚に近いのかなと。解像度の高いハイクオリティなゲームがある中で、敢えて“BACK TO THE BASIC”的な昔のやり方を楽しむ。でもそれってファッションも然り、どのジャンルでも結構あるんじゃないですかね。時代が一周した今、カセットテープやVHSがファッショナブルなものとして扱われてるみたいですが、僕世代が聞いて驚くのは、CDコンポやポータブルプレイヤーが今の10代にとって既に新しいものになってるということ。CDをPCにインポートせずに持ち歩けること自体がすごいって話らしいんですが、その発想って僕らCD世代からすると逆じゃないですか。データを取り込んでたくさん曲を持ち歩けることがすごいってなってたものが、買ったCDをその場で聴けるなんてすごいってなっちゃったわけでしょう。ちゃんと時代が回ってるんだなって感じちゃいますね(笑)。アナログブームのリバイバルとして戻ってきてる感じもありますが、昔ながらの聴き方で音楽を楽しむ良さ、僕はすごく理解できます。

——今回パーソナルバイヤーとして、ピックアップしていただくレコードはどんな内容ですか?
僕はブラックミュージックをベースにして育ってきた人間なので、やっぱりブラックミュージックの魅力に迫るようなものをメインにしたいなと思っています。楽しみにしていてください!

申込者へのプレゼント用メッセージカードを記入してもらいました。

■リリース情報
2019年11月6日発売
『2ND GALAXY』
VICL-65261 ¥2,000+税
CD ONLY ※初回プレス分のみ3面紙ジャケットの特殊仕様 在庫が無くなり次第、通常盤へと移行

1. Intro
2. Twilight
3. Look Up<シチズン「クロスシー」 TVCMソング>
4. Kiss Me<アニメ「キャロル&チューズデイ」OP曲 ※リアレンジセルフカバー>
5. Get Ready
6. Rock Me Now
7. Lost Game<映画「HELLO WORLD」主題歌・フルバージョン>
8. Outro(The Message Part.1)

<各配信情報>
https://jvcmusic.lnk.to/2NDGALAXY


■ライブ情報
Nulbarich ONE MAN LIVE -A STORY- at SAITAMA SUPER ARENA
12月1日(日) さいたまスーパーアリーナ

http://nulbarich.com

 

※本記事は2019年11月に、PERSONAL BUYERのサイトにて公開されたものです。

▼PERSONAL BUYERの詳細はこちらをご覧ください
【NEWS】新ゲストバイヤーに Nulbarich(JQ)の参加が決定!!

Nulbarich(JQ)

Nulbarich(JQ)
シンガー・ソングライターのJQが (Vo.) がトータルプロデュースするNulbarich。
2016年10月、1st ALBUM「Guess Who?」リリース。その後わずか2年で武道館ライブを達成。即ソールドアウト。日本はもとより中国、韓国、台湾など国内外のフェスは既に50ステージを超えた。
生演奏、またそれらをサンプリングし組み上げるという、ビートメーカー出身のJQらしいスタイルから生まれるグルーヴィーな音は、バイリンガルなボーカルと溶け合い、エモーショナルでポップなオリジナルサウンドへと昇華する。
「Null(何もない)」けど「Rich(満たされている)」。
バンド名にも、そんなアンビバレントなスタイルへのJQの想いが込められている。

http://nulbarich.com/

インタビュー:濱安紹子
写真:則常智宏

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