荒田洸(WONK)インタビュー ~PERSONAL BUYER

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PERSONAL BUYER

——パーソナルバイヤーの印象から教えてください。
この話をいただく前からOvallさんがやられているなどで知っていましたが、レコードを選んであげるということだけでも付加価値があるのに、それに加えてアーティストが選んであげるということで、さらにサービスとしてワンランク・アップがあるんじゃないかなと思います。リスナーの方も届いたレコードをただ聴くんじゃなくて、アーティストたちのチョイスというフィルターを通過することによって、より深く味わうことができるんじゃないかと。より音楽を深く聴く楽しみが増えるというか。CDやデジタルで持っていた音源でも、レコードで聴くことによって新たな発見があるもので、たとえばこの曲のこの部分には薄っすらとシンセが入っていたんだと気づかされたり。リスナーの方たちに対する一種の啓蒙活動的なところもあるんじゃないかと思います。

——レコードの魅力は何だと思いますか?
今の話につながりますが、レコード盤を扱うことによって細部まで音楽を聴くようになるし、大切に扱おうという意識も生まれますね。それからジャズ・バーやソウル・バーに行くと、基本的にレコードをかけていると思いますが、そうした場所ではレコードをきっかけにコミュニケーションが生まれることがある。マスターにこの曲は何ですかと訊ねたりして、それからいろいろ会話が弾んでいったりと。レコードのほうがそうしたコミュニティが生まれやすいかなと思いますね。この前も大阪で知り合いがやっているソウル・バーに行ったんですけど、そこでマスターが薦めてくれたのがディズニーの古い映画のサントラで。音はノイズが入っていて良いとはいえないけど、それが逆に味となってディズニーの歴史の重みを感じさせてくれる。東京に帰ってからすぐ探して買いましたけど、それはレコードだからこその味わいですよね。

——影響を受けた音楽を教えてください。
小学3年生くらいでヒップホップに出会って、当時はクーリオとか聴いてました。それから並行してプリンスとトニー・ベネットを聴き始めて、ヒップホップとそのルーツであるファンクやジャズにも入っていった感じです。トニー・ベネットはジャズの中でもポップス寄りのシンガーですが、その後中学生の頃に母にブルーノート東京へ連れていってもらって、マッコイ・タイナーのビッグ・バンドを観たんです。それからインストのジャズというか、より本格的なモダン・ジャズにもハマっていきました。WONKのやってる音楽はその延長線上にあって、ヒップホップぽいビートの上でジャズがあって、ライヴではファンク的なアプローチもやるといった具合です。僕個人のドラマーとしてはスティーヴ・ガッド、ザ・ルーツのクエストラヴ、それからビートメイカーのBudamunkさんからの影響が大きいです。ドラムを始めたきっかけがスティーヴ・ガッドで、彼はスタジオ・ミュージシャンとしてエリック・クラプトンからチック・コリア、アル・ジャロウなどいろんな人たちとやってますが、そうした仕事をインターネットでひとつひとつ調べて参考にしましたね。ライヴもたくさん観て、福岡までそのために行ったこともあります。

——今日持ってきていただいたレコードを紹介してください。
3枚持ってきましたが、まずセロニアス・モンクの『Thelonious Himself』。ピアノ・ソロのアルバムで、思い入れの深いレコードです。ジャズ・ピアノではマッコイ・タイナーとかオスカー・ピーターソンも好きですけど、彼らのようにテクニカルでバンバン弾くタイプとモンクはまた違っていて。精神病を患っていたところもあったのですが、生き方がカッコいいというか、ある意味でラッパーのようでもあり、そうした生き方が音楽にも表われているアーティスだと思います。異端児というか、当時の定番的なピアノ・スタイルをほとんど無視した独自のスタイルでやっていて、それで押し切って自分の個性で突き進んでいくのは本当にスゲーなと思います。WONKの名前もモンクからとってますが、それくらい憧れのあるアーティストです。

続いてはロバート・グラスパーの『Double Booked』。名盤中の名盤で、既にいろいろ語られてますが、ジャズとヒップホップを本当にうまく混ぜて成功したのがグラスパーだと思います。その後の『Black Radio』とかよりも個人的にはこのアルバムがいいなと思っていて、前半のトリオでやっているパート、後半のエクスペリメントの原型となるパートというアルバム構成が、一枚のアルバムとしてすごくうまくハマっているなと思います。ヒップホップに寄り添い過ぎることなく、ジャズのマナーでヒップホップをやっていて、それからいい意味で「汚い」音だと思います。ドラムの音ひとつとってもコンプレッサーやEQが極端にかかっていて、そこだけ見ても一般的なジャズとは違うベクトルを持っているのですが、そうしたところが独特のザラつきを生んでいるんじゃないかと。グラスパー以前にもジャズとヒップホップの融合はあって、たとえばジャジー・ヒップホップとか呼ばれるのもあったけど、どこか音が綺麗過ぎるところがあって、個人的には何か違うなという感じがあった。BGMとして聴き流すぶんにはいいけど、作品としてはあまり面白みがないというか。でも『Double Booked』の音の「汚い」感じ、ガンガンにテクニックを出して押し切っていくところとか、アルバムとして濃いなと思います。

最後の一枚はGREEN BUTTERの「The Smooth Route」と「Where The Heart Is」のカップリング・シングル。mabanuaさんとBudamunkさんのユニットで、『Get Mad Relax』というアルバムも出してますが、今日持ってきたのはそこからカットされた7インチです。一言でいって勉強になるレコードで、実務面でも参考にするところが多くて、WONKで制作する上でも影響を受けています。『Double Booked』ではクリス・デイヴがドラムを叩いているのですが、その前にクエストラヴがいて、それからJ・ディラという存在に遡ることができる。J・ディラがドラムの音を捩れさせたことは有名で、それからディアンジェロの『Voodoo』でのクエストラヴがさらに捩れさせ、クリス・デイヴがそれをさらに極限に持っていったわけですが、Budamunkさんの音はその上をさらに突き抜けているというか、攻めています。もう捩れとかヨレとかのレベルじゃないけれど、それが逆にとても気持ちいいですね。

申込者へのプレゼント用のメッセージカードも記入してもらいました。

——今回は、どういったレコードを選ぶ予定ですか?
自分のルーツにあるヒップホップ、ジャズ、ソウルやファンクという軸を中心に選んでいきたいと思います。WONKの根底にある音楽、ベースとなるような音楽で、今っぽい音というよりも1970年代とかの昔の音楽が中心になると思いますが、最近のものでもレオン・ブリッジスとか古い時代の音作りを踏襲した作品もあるので、そうしたものも混ぜていきたいなと。

——最近の活動や今後のイベント、リリース情報を教えてください。
7月にEPの『Moon Dance』をリリースして、その後8、9月に全国ツアーを行いますので、よろしくお願いします。

(※本記事はPERSONAL BUYERのサイトにて2019年7月に公開された記事です。)

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【NEWS】新ゲストバイヤーに荒田洸(WONK)の参加が決定!!

荒田洸(WONK)

荒田洸(WONK)
東京発のソウルミュージック・バンド。メンバーはKento NAGATSUKA(vo)、Ayatake EZAKI(key)、Kan INOUE(b)、Hikaru ARATA(ds)の4名。ジャズを背景にネオソウルやヒップホップ、ビート・ミュージックなどの要素を注入した現代的感覚のサウンドが特色。2013年に始動し、2015年のフリー・アルバム『From The Inheritance』や独創性の高いライヴが話題となり、翌年に1stアルバム『Sphere』を発表。ラヴ・エクスペリメントとの共作『BINARY』などを経て、2018年にリミックス作『GEMINI:Flip Couture #1』をリリース。

http://www.wonk.tokyo/

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