GLIM SPANKY インタビュー ~ PERSONAL BUYER

WRITER
濱安紹子

60〜70年代のヴィンテージなロックやブルースの香りを漂わせるGLIM SPANKYの音楽。松尾レミさん(Vo)と亀本寛貴さん(Gt)、メンバー2人とも平成生まれであると聞くと少し驚いてしまうのは、古き良き時代のロックに対する愛情と造詣の深さが感じられるからでしょう。

しかし、実際にお会いした2人の印象は音楽から受けるそれとは打って変わり、すごくアットホームで和やかな雰囲気。同じ高校の先輩・後輩という間柄ながら、まるで姉弟のようなフランクな関係性(実際は亀本さんが一学年上)で繰り広げるノリとツッコミの掛け合い、その絶妙さ加減がたまりませんでした。メンバーとして曲を生み出し演奏している2人ですが、聴く音楽の方向性や捉え方は微妙に異なるよう。ただ、共通しているのは、レコードや音楽に対する真摯な姿勢と情熱。貴重なエピソードを臨場感たっぷりにお伝えしたいと思います。

——まずは、パーソナルバイヤーの印象を教えてください。
:Instagramの広告でちょくちょく拝見したんですよね。面白そうだなって思ってたし、他のアーティストさんがやってるのを見て、僕もやらせてよって思ってたのでお話聞いた時には『よっしゃ!』って(笑)。

:私も同じく、Instagramで発見して興味を持ってました。最近海外で毎月1回レコードが送られてくるサービスがあるらしいんですよ。ユーザーが事前登録した内容に沿って好みに合いそうなものをセレクトして送ってくれるシステムみたいで私も興味を持っていたんですが、よくよく考えると誰がセレクトしたものなのか分からないし、本当に自分の好みにあったものが届くかも不明ですよね。それに対して、自分の好きなミュージシャンがセレクトしたものだったら、音楽的にも信頼できるのかなって。自分も好きなミュージシャンの好きなものを知りたいって思う方なので、いいサービスだなって思いました。

——確かに、誰がどうやって選ぶかってすごく重要ですよね。よくあるオンラインサービス上に出てくる関連曲やサジェッションってあてにならないこともありますし。
:本当に(笑)。サブスクとかならまだいいですけど、それがレコードだとうーんってなっちゃうかもしれません。

:レコードって色々な楽しみ方があるじゃないですか。レアリティが高いものやコレクション性の高いもの、いわゆる骨董的な価値をレコードに見出して、良いオーディオで楽しむみたいな嗜み方もあるとは思いますけど、僕はもっとライトなものとして広まってもいいのかなと。サブスクサービスよりもちょっと贅沢な楽しみ方ができるものっていう、今っぽい位置付けで入っていってもいいのかなって思います。

:初回盤に価値を見出す人もいれば、そんなの関係なく作品の内容に価値を見出す人もいる。例えばThe Beatlesの『Abbey Road』なんて世界中で色々なバージョンの盤が出ていて、それをコレクションする人もいると思うんですが、私としてはそこにはあまり興味がなくて。それよりも、アメリカとかで60年代に勝手に個人で数枚だけ作っちゃったっていうようなレアなレコードの方が興味ありますね。今日もそういう類のレコードを持ってきました。

——レコードとの出会いはいつ、どんなものでしたか?
:上京して大学入った時ですね。僕らが高校までいた長野県の飯田市にはレコードを買えるお店がほとんどなくて。あってもハード○フに10枚程度中古レコードが置いてあるくらい(笑)。上京してレコード屋に初めて訪れた時は、松尾さんに『レコード買おうと思うんだけど、何買ったらいいかな』って聞きましたもん。でも結局その時、Jimi Hendrixの『Electric Ladyland』が400円で売ってたんで思わず買っちゃったんですけど、帰って聴いてみたらまあ、酷い状態! 全然ちゃんと音出ない!! 初めて買った記念すべきレコードがそれでした。うん、失敗です。

:しかも、ジャケットも気に入らないって文句言ってたよね(笑)。

:お金なかったから文句言えないんだけど、やっぱり初期のが欲しかったなと。

:結局、何だかんだ言ってそういうとこ、こだわるんじゃん(笑)。

——松尾さんは? お父様がレコードマニアだったという情報は伺っていますが。
:そうなんです。お腹の中にいる時からレコードを聴いてたんでしょうね(笑)。レコードに関して覚えている最初の記憶は2〜3歳の頃。ホームビデオの映像が残ってて、その中で私、細野晴臣さんの「北京ダック」を聴きながら父と踊っているんです。

——なんてラブリーな思い出!
:休みの度に東京や名古屋へ行ってレコードを買い集めているような父でした。同じようなレコードマニアとレコードの交換会をしたり、DJの友達を呼んでレコードを聴きながらホームパーティしたり、仲間内でZINE(個人の趣味で作る少部数の自主制作フリーペーパー)を作って交換したり。小さな頃からそういう文化の中で育ってきたし、自宅には常に大量のレコードがあったので、私にとってレコードはとても身近な存在でした。

——レコードの魅力ってどういうところだと思いますか?
:所有欲が満たせされるところですかね。私にとってヴィンテージの洋服みたいなイメージ。サブスクやCDと比べて音が違うっていうのは前提なんですけど、物体が大きいだけあって持っていると心が満たされる感じがあるんです。自分でこの1枚を選んで買って所有しているんだっていう満足度。1枚の価値が大きいというか。聴きまくったら削れちゃうし、劣化しちゃうものだけど、だからこそ大切にしようと思います。

:僕ね、最近PCもターンテーブルも同じミキサーに繋いで、同じアウトプットの環境で聴いてるんですよ。そうすると、同じ音源をサブスクとレコードで流した時の差がすごく分かるんですよね。例えば今日持ってきたRyan Adamsのアルバム。結構アコースティックな作品なんですが、レコードで聴いたときに感じたドラムのアンビエント感というか、部屋鳴り感がサブスクで聴くと感じられないんですよね。あと、シンバルの余韻だったりベースの奥深さだったりとかも、サブスクだとすごくのっぺりして聴こえてしまう。感覚的に言うとサブスクはポスターで、レコードはジオラマみたいに感じるんです。生楽器をマイク録りしている作品は特にそう感じる傾向が強いですね。

:ああ、分かる。

——普段はどうやって音楽を聴いているんですか?
:サブスクを聴くようになってCDは買わなくなりましたね。CDを買う人も結局リッピングしてスマホで聴くわけじゃないですか。そう考えるとCDってすごく中途半端な立ち位置だなと思いますね。好きなアーティストの作品を所有したいって欲は、レコードの方が満たされるんじゃないかなと。さっきの満足度って話に戻っちゃいますけど。CDって一度スマホに取り込んだらもう手に取る機会自体がなくなっちゃうでしょう。でも、レコードなら聴く度に手に取って掛けないといけないわけだから、ものを買った意味合いがすごい感じられると思うんですよね。

——確かに、CDは一度取り込んでしまったら棚から出さないですね。松尾さんはどうですか?
:私もCDは数年買ってないですね。自分から買うのはレコードばっかり。

:友人や知り合いのミュージシャンからサンプルCDをもらうことがあるので、CDを聴くこともあるんですが、そのためだけにCDプレイヤー持ってるって感じ(笑)。普段はあまり使わない。

:分かる分かる!

——では本日持って来て頂いたお気に入りのレコードを紹介してください。

■Various Artists『Pulp Fiction』

:じゃあ僕から。今回セレクトするレコードの中にもサントラをちょっと入れたいなと思ってて。かっこいい映画にはかっこいい音楽が流れているもんじゃないですか。それに僕、オールディーズ感がある曲が結構好きなんですが、このサントラにはサーフミュージックとか、古めかしい感じの曲が多くて、全体的に好きなんですよね。Ricky Nelsonの曲とか超いいです!

■Ryan Adams『Ashes & Fire』

:Ryan Adams自体がすごく好きなんで、好きな作品はたくさんあるんですが、その中でもこれは家で1人で音楽を聴きたい時にすごくいいんです。普段家で1人でいる時ってそんな「イエーイ!」みたいなパーティムードじゃないじゃないですか。1人でまったり飲む時とかちょっとだけ落ちてる時とか、そんな時にもマッチするんですよ。

:落ちてる時とかあるんだ(笑)。

:あるさ、人間だもの。で、そんな時って音楽聴くことさえしんどかったりするじゃないですか。だけど、そういう時ですら聴けちゃうのがこのアルバムのすごさ。Ryan Adamsって失恋の歌ばっかりなんで、そういうムードにフィットするって説もありますけどね。とにかくめちゃくちゃ再生してます。

■Jean-Yves Labat『M. FROG』

:これは中古屋で一昨日買ったばかりのレコードで……て、やば! ちょっと破れた(ジャケットを抑えながら)!! 73年にリリースされたアルバムなんですが、意味が分からないサイケデリックな曲もあれば、マイナー調の70年代初頭っぽい曲もあってとにかく変(笑)。ジャケもヘンテコだし、すごくマジカルな1枚です。私、レコード屋に行って入り浸るのがサイケデリック・ガレージのコーナーなんですよ。そこであまり有名じゃない名盤を探すのが好きで。マイナーなアーティストのものってジャケットの作りもかなりしょぼいんだけど、当時のサイケデリック・カルチャーの香りがそのまま残っているような気がしていいんです。レコード屋に行くと、ジャケを見て制作年数とか参加ミュージシャンとかチェックしつつ、その場でネットで調べたりもしますが、ある程度は直感で買ってますね。



■THE CYRKLE『NEON』

フリッパーズ・ギターがこの作品を好きらしく、それを聞いてこれを買いました。幼稚園、小学校の頃は親の影響もあって渋谷系の音楽を聴いてましたから。この作品は聴くと初期のフリッパーズっぽいんですよ。大好きな60年代後半のソフトロックのテイストもあってすごく好き。THE CYRKLEはThe BeatlesのマネージャーだったBrian Epsteinが発掘したバンドで、このアルバムにはBeatlesのカバーも1曲入ってるんです。もうね、そういった全ての要素がたまらないんです。何回聴いても飽きないし、朝起きて音楽聴こうってなった時いまだに手に取ってしまう1枚ですね。



——ちなみに、2人が影響受けたアーティストは?
:うーん、難しいですねえ。Ryan Adamsももちろん好きで影響受けてるけど、ロック全般好きだし色々なアーティストの影響は常に受けてるし、これいいなって思う部分があれば取り入れたりしてるので、一概に誰とは言えないんですよね。

:私、自分の声を「この声使える」と思わせてくれたきっかけがJohn Lennonだったんです。彼の”歪み”のある成分の歌声を聴いた時、「この声の成分、私にもあるかも」って思って、それで歌うことを決めました。中学生の頃、ギターを始めたのをきっかけにThe Beatlesを聴くようになったんですが、それと同時にThe White StripesにもハマってCDを買い漁っていたので、この2組のアーティストが自分の原点的な存在と言えるかもしれません。

——歌い手になるきっかけがJohnだったわけですか?
:そうだと言えるかもしれません。私、昔教会でゴスペルをやってたんですよ。クリスチャンではなかったんですけど、友達に誘われて。ただ、歌ってると自分の声が歪むんです。当時はそれを自分の個性だとは思ってなくて、歌ってると喉を痛めちゃいそうで嫌だったんですね。声変わり前の少年みたいって周りによく言われてたし、あまり歌わない方がいいかもしれないって思ってました。だけど、Johnの歌声を聴いて自分の声と重なる部分を見つけられてから、『これでいいんだ、個性なんだ』って堂々と歌うことができるようになりました。

……あ、あともう1組影響を受けたアーティストがいたので追加していいですか?

——もちろん、どうぞ(笑)!
:先ほど話したThe BeatlesとThe White Stripesにハマってた時期に、Gorky's Zygotic Mynciっていうバンドにも色々な面で影響を受けていて。90年代のサイケバンドなんですが、メンバーはアートスクール出身でジャケットもすごく個性的。妖精が描かれているんです。私、妖精文化が元々好きなんですが、それを親に伝えたら、ある日机の上にGorky'sのアルバムがポンって置いてあって(笑)。ジャケから入ったわけですが、音を聴くとかなり個性的でオルタナもあり、ファンク的な要素もあったりで一言で言い表せない複雑な音楽性なんですよね。美術系の大学へ通ってた頃、Gorky'sにインスピレーションを得た作品を作ったこともありますし、すごく影響を受けたバンドであることは間違いないです。

——ちなみに、今回はお2人にそれぞれ好きなレコードをピックアップしてもらうことになりますが、どんな内容になりそうですか?
:私に関してはマニアックなのばかりではなく、ちゃんと聴きやすい音楽も入れるのでご安心ください。微妙に専門性が違う私たちだからこそ、私たちにしかできないチョイスをする予定です。

:といいつつ、まだ全然決まってないけど(笑)。とにかく楽しみにしていて欲しいです!

——本日は貴重なお話、ありがとうございました!

■リリース情報
5th Single『ストーリーの先に』発売中!

出演イベントはGLIM SPANKY公式ウェブサイトをご覧下さい。
http://www.glimspanky.com/

申込者へのプレゼント用メッセージカードを記入してもらいました。

※本記事は2019年12月に、PERSONAL BUYERのサイトにて公開されたものです。

▼PERSONAL BUYERの詳細はこちらをご覧ください
【NEWS】新ゲストバイヤーに GLIM SPANKYの参加が決定!!

GLIM SPANKY

GLIM SPANKY
REMI MATSUO(松尾 レミ)-Vo.Gt./HIROKI KAMEMOTO(亀本 寛貴)-Gt.
ロック、ブルースを基調にしながらも、新しい時代を感じさせるサウンドを鳴らす男女二人組ロックユニット。
アートや文学やファッション等、カルチャーと共にロックはあることを提示している。
ハスキーで圧倒的存在感のヴォーカルと、 ブルージーで感情豊かなギターが特徴。
ライブではサポートメンバーを加え活動中。

http://www.glimspanky.com/

インタビュー:濱安紹子
写真:則常智宏

<撮影協力>
Aoyama ZERO
東京都渋谷区渋谷2丁目9-13
http://aoyama-zero.com/

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