佐藤竹善 インタビュー ~ PERSONAL BUYER

WRITER
濱安紹子

SING LIKE TALKINGのメンバーとして佐藤竹善さんがデビューしたのは88年のこと。当時はまだまだCDの黎明期で、デビューシングル「Dancin' With Your Lies」はレコード盤とCDの2種類でリリースされたそうです。

「周りに良い音楽を聴く人が多かった」と語る中学時代、様々なレコードとの出会いが音楽人生を開く礎となったという佐藤さん。お気に入りのレコードを擦り切れるまで聴いて何度も(その数なんと8回!)も買い直したお話、Queenに憧れてベースを始めたお話――。貴重な少年時代のエピソードを伺いながら、時を経て変わったのは音楽の聴き方だけで今も昔も音楽の存在価値は絶対的に変わらないことに、改めて気づかされました。

——パーソナルバイヤーにどういった印象をお持ちになりましたか?
買った人は封を開けてみるまでどんな作品が送られてくるか分からない状態、つまり福袋みたいなものってことですよね。面白い! 昔よくキャンペーンで全国のレコード店を回ることがあったんですけど、その中で僕のオススメのレコード、影響受けたレコードを紹介してくださいっていうリクエストはよく頂いていた記憶があります。

——普段はどのような聴き方で音楽を楽しんでいますか?
サブスクもYouTubeも利用していますし、色々なものを試してますよ。Spotifyはラジオのような感覚で聴いていますし、『181.FM』など海外のインターネットラジオも利用しています。『181.FM』はジャンルがたくさんあって、24時間オンエアされてるんですよね。中には1年中クリスマスソングが流れてるチャンネルもあったりして(笑)。自分が持っている音源に関してはものによって聴き方を選んでいますが、昔に比べてCDはそんなに聴かなくなったかもしれませんね。例えばSteely Danの曲とか、音質にこだわって聴きたい作品はレコードで聴くようにしています。だけど今は、ハイレゾ音源といったデジタルでもハイクオリティのものがありますよね。敢えて、そこには手を出さないようにしていますが(笑)。

——手を出さない理由というのは?
ラジカセでもCDでも、それこそハイレゾで聴いても、本当に良いサウンドに仕上がっている作品って、オーディオ的な質は違えど音楽的な印象は同じだと思うんです。なので、作品を作る時以外はあえてこだわり過ぎず、なるべく一般の方々と同じ目線、“耳線”といったらいいのかな……、汎用性の高い環境で音楽を楽しむようにしているんです。大人になると若い頃よりお金の自由がきくし、音楽のこともそれなりにわかってくるんですが、オーディオマニアやサウンドマニアにはならないよう意識していますね。こだわらないことにこだわっている、という感じでしょうか(笑)。自分の音楽に関しては、良い演奏家とエンジニアをきちんと選んで彼らに任せる、それだけです。

——デビュー作はレコードとCDでリリースされたと伺っていますが、両者間の違いをどのように感じましたか?
デビュー当時は、まだまだCDに対するマスタリング技術が追いついていなかったんですよね。レコード用にマスタリングしたものをそのままCDに焼くわけだから、当然CDと比べるとアナログの方が音質は上でした。CDのためにミックスやマスタリングし直すなんて、バジェットが潤沢なビッグアーティスト位しかいなかったんじゃないでしょうか。

——レコードの魅力ってどんなところだと思いますか?
ヴィンテージの家具とか車みたいなものだと思います。僕、25年位今の車に乗っているんですが、便利なものが付いてない分、一個一個の動作に愛着が湧くし思い入れがある。それに、体の反応もちょっと変わってくるんですよ。音楽を楽しむってレコード1枚、CD1枚を聴き比べてどちらが良いって語れるようなものではなく、トータリティの問題だと思います。レコードが良いなって思うのって肌触りや質感とか、ものとしての価値とか、そういった視覚や触覚も含めた耳以外の感覚で感じる部分も大きいんじゃないかなと。そういう全てが合わさって、温かみや人間的なものを感じさせているんです。

単純に音の良さをフラットに比べるとなると、オーディオ機器やもちろん、部屋の鳴りとかそういった部分にまで気を使わなければいけませんからね。例えば、ハイレゾ音源を超えるアナログレコードの良さを堪能するとなったら、それなりの環境が必要だし、それでもどちらが良いとか悪いって議論は一般的には難しいと思います。

——フォーマットだけではなく、音楽を聴く環境にも左右されると。
高級ワインと1000円のワインを飲み比べて、どっちがどっちかを当てる番組あるじゃないですか。で、普段高いワインを飲み慣れている人ですら間違ってしまう、みたいなシーンがあるでしょう。そのくらい人間の感覚って非常に相対的でいい加減なもの。よほど耳の肥えている人じゃない限り、音楽を聴く時も一緒だと思うし、99%の音楽ファンはそういうことを気にせず音楽を楽しんでいるわけで。だからこそ音楽メディアを作る人の葛藤というのはずっと消えないんでしょうけど、僕はそれで良いと思うんです。

とはいえ、すごい耳の持ち主はやはり存在するもので。昔、AMサウンド好きの某先輩がFMで番組を始めた時、音の感じがどうしても気に入らず、自分の番組の時だけ局のリミッターを外してくれってディレクターに頼んでいたっていうエピソードがあるんですよ。それでも一度、番組でリミッター外し忘れたことがあって、オンエアを聴いてそれに気づいた本人がディレクターに電話を掛けたらしいです。とんでもない耳の持ち主だなと感心しましたね。

——それはすごい(笑)! よほど繊細な耳を持っているか、耳を使う仕事をしている方でないと聞き分けられない音はたくさんありますよね。
エンジニアってトラックダウンする時、聴こえない音に対しても神経を使うんです。聴こえないながらもそれがないと音楽的にかっこよくない、そんな感覚を持ってミックスをしていくんですよね。なので、それが全てカットされてしまうと本来の趣旨と違ってきてしまう。一聴しても気づかれない差かもしれませんが、その聴こえない音まで表現されるかされないかという点で、アナログとデジタルの違いは大いにあるとは思います。

ちなみに僕は初めてCDを聴いた時、「一瞬すごく綺麗に音が聴こえるけど、途中でだんだん疲れてくるし飽きてくる。これは何なんだろう……」っていう風に思ってました。当時は20代前半で若かったものですからその理由がわからず、疑問しか残らなかったんですけどね。それに対する答えがメディアに出てくるようになったのは随分後のこと。最初はみんな「便利になった」「音が良くなった」と騒いでいただけだったので。ただやっぱり便宜性がすごいのは確かで、それは今のサブスクが登場した理由や役割に通ずるものですよね。まあ、でも安価なユニ◯ロのジーンズと数万円するヴィンテージのデニム、その両方を持ってても良いんですよ。そのもの自体の存在意義によって形を変えて所有するっていうのが、今の時代には必要なのかなと思います。

——利便性を求めて生まれたのがレコードであり、CDであり、デジタル音源であり……。今後も音楽は形を変えていくのかもしれませんね。
とはいえアナログは強いですよ。僕ね、レコードは永遠に残ると思いますが、CDは消えていくものなんじゃないかと思っています。今またカセットなんかが流行っていますが、そのうちCDも雑貨屋に置いてあって「昔、こういうのあったよね」って言われるようなものに、例えるなら駄菓子というか、おもちゃ感覚のアイテムになるんじゃないかなと。手間的なデメリットはあれど、今後も残っていくのはレコードだと思います。

——大胆な予想ですね! 確かに歴史的に見てもCDは30数年、レコードの歴史には到底かなわないのかも。
そのうち、CDがコレクターズアイテムとしてオシャレだって集め出す世代が出てくるかもしれませんけど、音の良さに加えて、温かみや人肌を感じるという意味でもレコードはずっと残っていくものだと思います。いつだって聴くのは我々人間なわけですから。



——お気に入りのレコードをご紹介ください。

■Queen『QUEEN II』

中学校に入って洋楽にハマっていくんですが、その頃特に影響を受けたのがBeatlesとQueenでした。『世界に捧ぐ(原題『News Of The World』)』というアルバムで彼らを好きになり、全作品を聴きましたが、これはその中でもQueenファンにとってバイブルのような作品。A面のWhite Queen とB面のBlack Queen。A面/B面をまるで舞台の一部と二部に分けるような、まさに“ロックオペラ”な演出をしていたりして、音楽的な部分だけじゃなくて、ロックってこんなところまで表現できるものなんだって衝撃を受けました。その後もロックやプログレ、例えばクリムゾンやピンクフロイドとか、タンジェリンドリームだとかを聴いた後、さらにクラシックとかJohn Cageみたいな現代音楽の世界へも行っちゃうわけなんですが、その旅の入り口となったのがこのアルバム。色々なジャンルの素養を与えてくれましたし、何を隠そうQueenのJohn Deaconに憧れて僕はベースを始めたんですよ。

■The Eagles『Hotel California』

これも中学2年の頃に買った作品なんですが、僕ね、このシングルは8回買い直してるんですよ(笑)。毎朝掛けては5回ほど歌って、それで学校へ行くみたいな習慣がありまして。その頃持ってた安いレコードプレイヤーに付いてたのは、ダイヤモンド針じゃなくてサファイヤ針。だから盤がどんどんすり減っていって音が悪くなってしまうんです。ようやくアルバムを買った際には、すかさずカセットテープに落としてました(笑)。昔はカセットとレコードがセットだったんすよ。擦り切れないようにカセットに録って普段はそれを聴く、たまにレコードでじっくり味わうみたいな聴き方をしていました。

——ちなみに、ご自分で初めて手にしたレコードは覚えていますか?
ソノシート(1958年にフランスS.A.I.P.社が開発した薄手の柔らかいレコード)ってあったでしょう。5〜6歳の頃に戦隊モノのソノシートを親に買ってもらったのが最初。A面にはテーマ曲が入っていて、B面には怪獣と戦っている時のラジオドラマみたいな音が延々入ってるんですよね。僕が音楽好きだっていうことに、早くから両親は気づいていたみたいで、物心つく前から色々と買ってくれてたみたいなんですよ。買い与えてさえいれば大人しくなるとばかりにね(笑)。なお、初めて自分で買ったレコードは、Bay City Rollersの「2人だけのデート(原題「I Only Want To Be With You」)」でした。中学校1年の頃だったかな。この曲はDusty Springfieldのカバーなんですが、そこからBay City Rollersにハマって洋楽が好きになりました。

——お伺いする限り、中学生の頃に音楽的な原体験とも言えるような経験をたくさんされているんですね。
スポンジみたいになんでも吸収していた頃だし、幸い当時は周りに良い音楽を聴く人が多かったんですよ。当時向かいに住んでたお兄さんが、上京するタイミングで僕に50枚位のLPをくれたんですが、そこには洋楽・邦楽問わず色々なジャンルの作品が詰まっていて、夢中で聴き漁りました。その中にはGrand Funk Railroadの2枚目のライブアルバム、Led Zeppelinからかぐや姫やNSPまであって、後に僕はバンドでそれらをカバーすることになります。洋楽も邦楽もジャンルすらよくわからない時分ですからね、それらの曲を全て1つのバンドでカバーするっていう無茶をしました(笑)。難しくて演奏が途中で止まってしまう曲もありましたけど。

——ジャンルレスっぷりがすごいですね(笑)。
大学に入ってからAORとかソウルやジャズとか、ゴスペルやカントリー、クラシックなどさらに音楽的な方へ進んでいくんですが、当時はやっぱりラジオとテレビで情報を得ることが多かったですね。湯川れい子さんの『全米 TOP40』とか、小林克也さんの『ベストヒットUSA』とか、そういった音楽番組は世代的にドンピシャなのでよく聴いていたな。番組で流れた好きな曲をレコード屋へ買いに行く、というのが当時のスタイル。青森(佐藤さんの出身地)にあるタカムラっていうレコード屋にはよく行っていました。そこには、いわゆるキュレーターみたいな存在の店員さんがいて、「これ聴くならこれも良いよ」みたいに教えてくれるわけですよ。懐かしい思い出ですね。

——本日は、興味深いお話をありがとうございました!

申込者へのプレゼント用メッセージカードを記入してもらいました。

<今後の予定>
佐藤竹善 Rockin’ It Jazz Orchestra ~Live in Tokyo & Osaka~
2019/12/28(土)
大阪・オリックス劇場
17:00開場/ 18:00開演
問)SOGO OSAKA 06-6344-3326(平日11:00~19:00 ※土日・祝日を除く)
https://singliketalking.jp/event/277458

<リリース情報>

佐藤竹善「Don’t Stop Me Now ~Cornerstones EP~」Now On Sale
◆CD
POCE-1230 / ¥2,000- (税別)
発売元:ユニバーサル ミュージック合同会社
◆12"アナログレコード
HR12S023 / ¥2,800- (税別)
販売元:株式会社ローソンエンタテインメント
https://singliketalking.jp/news/266417

<収録曲>
1. Don’t Stop Me Now
Arranged by エリックミヤシロ
2. VISION (オリジナル新曲)
Arranged by エリックミヤシロ
3. Laughter In The Rain feat.TOKU
Arranged by TOKU, 宮本貴奈
4. Do I Do feat.SALSA SWINGOZA
Arranged by 中路英明, SALSA SWINGOZA
5. Heal Our Land / SALSA SWINGOZA feat.佐藤竹善
Arranged by SALSA SWINGOZA
※アナログレコードにはM5「Heal Our Land」は収録されません

SING LIKE TALKING「RISE / Together」(完全生産限定盤)
~Compiled & Edited by 吉沢 dynamite.jp (和モノAtoZ)~
2020/01/22 On Sale
MHKL-25 / ¥1,800- (税別)
https://singliketalking.jp/news/296077

予約 URL
https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?cd=MHKL000000025

<SING LIKE TALKING オフィシャルホームページ>
https://singliketalking.jp

<佐藤竹善レギュラー番組>
「佐藤竹善 SUNDAY MUSICAL VOICE」
湘南ビーチFM 毎週日曜 18:00 ~ 19:00
「FRIDAY AMUSIC MORNING」内「A♭ GARDEN」
FM COCOLO 毎週金曜 08:20 ~ 08:40

※本記事は2019年12月に、PERSONAL BUYERのサイトにて公開されたものです。

▼PERSONAL BUYERの詳細はこちらをご覧ください
【NEWS】新ゲストバイヤーに佐藤竹善(SING LIKE TALKING)の参加が決定!!

佐藤竹善

佐藤竹善
SING LIKE TALKING のボーカルとして'88年にデビュー。'93年『Encounter』、'94年『Togetherness』の両アルバムはオリコン初登場1位。現在まで14枚のオリジナル・アルバムを発表。
その活動と平行して'95年に発表したカバーアルバム『CORNERSTONES』から本格的にソロ活動開始。
多数のアーティストのレコーディング参加、楽曲提供やプロデュースなども行い、高い評価を受けている。
2018年には、SING LIKE TALKING 30周年記念ライブ「SING LIKE TALKING 30th Anniversary Live Amusement Pocket “Festive”」を大阪:フェスティバルホール・東京:国際フォーラムホールA などで行い、大盛況でデビュー30周年を迎えた。
2019年8月、SING LIKE TALKING Amusement Pocket 2019 を東京・大阪で行い、デビュー30周年以降もますます活発な活動を続けている。10/23 (水) には佐藤竹善ソロによる人気カバー企画シリーズ”Cornerstones”のEP「Don’t Stop Me Now ~Cornerstones EP~」をリリース、11/24 (日) 東京:中野サンプラザホール、12/28 (土) 大阪:オリックス劇場にて、ビッグバンドとのライブ、「Rockin' It Jazz Orchestra ~Live in Tokyo & Osaka~」を開催。

https://singliketalking.jp/

インタビュー:濱安紹子
写真:則常智宏

世界中のレコードを、その手の中に
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