2018年で結成15年となるバンドneco眠る。すでに大阪が誇るローカルカルチャーの顔役と言っても過言ではない、でしょう。その音楽性はひと懐っこいというか、アジアな湿度を持つというか。河内音頭に例えられるのもうなづけます。いうなれば人肌のインスト・ロックバンド。今回はそのギタリストで、レコードもリリースしているレーベル「こんがりおんがく」を運営する森雄大さんにお話をおうかがいします。森さんが考えるレコードのグッドポイントとは?
――まず森さんが考える、レコードでこそ聴きたい音楽、もしくはレコードで欲しいと思う音楽とはどんなものです?
考えると単純にレコードでしかリリースされていないもの、ということになりますね。普段はレコードでもデータでもあんまり気にせずに買うんですが、でも好きなものならレコードで見つけると買ったりしますね。
――それはなぜです?
やっぱりジャケット、ですね。
――どんなアートワークのものでしょう?
例えばブルース・ハークだったりとか。
――特にあのモノクロのジャケットのシリーズはレコードサイズで欲しくなります。
見つけると買っちゃいますね。
――それではレコードの魅力はまずジャケットのデザイン?
そうですね。まずはデカいところ、ですね。ジャケットのデザインを含めて。
――そのサイズ感、と。
もともとレコードで出ていたものが同じジャケットでCD化されたり、CDで出ていたものがレコード化されたり、はありますよね。でもサイズが違うなら、ぼくなら大きさに合わせてデザインを変えたいなと思ったりもしますね。
――たしかに。ではレコードで聞く音楽の楽しさをどう考えます?
裏返したりする作業も含めてレコードを聞く楽しさ、ですかね。
――音質に関してはいかがですか?
レコードならではの音の良さがあるのも分かります。けど、音質的にはそこまでこだわりがないというか、それがすべてじゃないとは思ってますね。例えばクラブで大きな音で聞くとレコードならではの音の良さが出ることもありますけど、日常的に家で小さな音で聴く分にはそこまで求めない。レコードはステレオのスペックが求められるところもあるし。
――それでは家で、レコードで音楽を聞きたいタイミングはどんな時でしょう?
時間に余裕があるときですね。朝とか。
――優雅にコーヒーでも飲みながら?
そうですね、それが毎日できる余裕があるといいんですけどね(笑)。例えば、記憶の中の曲を鼻歌で再生するのが最高な音楽もあるし、時と場合とフォーマットで“最高”は変わりますね。レコードはクラブか余裕のある朝が最高、です。
――レコードを買うときはどんなシチュエーションが多いです?
なにかの別の用事で、例えばここ「HOPKEN」に来た時に見つけてレコードを買ったりですね。だから出会いというか。なにかを目指して買いに行く、というのはあんまりないですね。あ、でもエマーソン(北村)さんのは今欲しいので買いに行きたい。
――12インチの「田舎はいいね」。「エム・レコード」からリリースされましたね。
「エム・レコード」のレコードは買いたくなりますよね。モノとしてのディティールも内容も興味をそそられるものが多いですし。やっぱり(レーベルオーナーの)江村さんの信念と愛情だと思いますね。ジャケットもライナーノーツもこだわってるし。
――たしかに。ではDJをされるときはどんなフォーマットで?
パソコンとレコードを使いますね。買ってたけど聴いてなかったレコードをDJのときに初めてかけて聴いたり(笑)することも。
――ちなみにレコードを売ったりされます?
売ったことはないですね。そんなに持ってないというのもあるし、実家に置いてあるということもあって。レコードは全部100枚くらいですね。大人になってから買い始めたというのもあって。人にあげたりはしますね、プレゼントとしてもちょうどいい。
――運営されているレーベル「こんがりおんがく」ではレコードもリリースされていますが、フォーマットとしてのレコードをどう考えます?
そもそもA面とB面があって、それを想定して作られていることがレコードの興味深いところで。だからCDとは作られ方が違う。レコードはA面とB面、流れを2つ作るみたいなことだと思ってますね。
――データではなくモノがある、というところではいかがでしょう。
フォーマットに対する思い入れというところでは、データになかなか思い入れを持ちにくいですよね。WAVデータとか波形に思い入れは持てない(笑)。それにデータはすぐ消せるけどレコードは割らないと音は消えない。CDも腐食することはありますしね。
――モノがあるという強さ。
ですね。聞くだけじゃなくて、もしかして武器として投げても使えるかもしれない(笑)。いざというときには(笑)。
――昨年「こんがりおんがく」からneco眠るの「SAYONARA SUMMER / ひねくれたいの」を7インチでリリースされました。シングルだから配信のみ、とかではなく。
動機としては作ってみたかったからで、ほんとにそれだけというか。配信のみでのリリースも考えたんですけど。レコードは制作費もかかるけど、記念的なところもありますよね。データに思い入れは持てないし記念にもなりにくい(笑)。
――なるほど。今「こんがりおんがく」としてレコードでリリースする企画をなにか考えています?
スプリットの7インチを考えていて。それはレコードというフォーマットありきで考えてます。
――片面ずつ2組のアーティストが収録されているスプリット。それはなぜ?
A面B面で1曲ずつでそれぞれ良さを1枚にパッケージしやすいですよね。シリーズでやっていければと思っています。
――スプリットのコンセプトならではのジャケットの想定も?
レーベル面のデザインは統一しているようなものを考えてますね。
――楽しみにしています。ちなみにさっきから気になっているんですが、そのノシが付いているレコードはいったい?
これはneco眠るの結成15周年のときに友達からもらったレコードで。ノシが似合うのもレコードならでは、と思って持ってきました(笑)。
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森雄大(neco眠る) 2002年、大阪で結成されたバンドneco眠るのメンバー。neco眠るとしては2008年に1stアルバム『ENGAWA BOYS PENTATONIC PUNK』を始め2017年までに4枚のアルバムをリリース。個人的にはDJごはんとしてDJ活動も。運営するレーベル「こんがりおんがく」では、フェスティバル『こんがりおんがく祭』を2018年5月5日(祝)に大阪城野外音楽堂で開催する。
取材協力 HOPKEN
取材:中村悠介(IN/SECTS) 撮影:倉科直弘