今のミュージシャンを輝かせる音楽を記録した作品。松浦俊夫の審美眼

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リバイナル編集部

ダンスフロアにこだわり、常に今とこれからを感じさせるDJスタイルで世界を動かす松浦俊夫。彼は懐かしさを誘う過去を一切持ち出さない。最新作『LOVEPLAYDANCE』でも「過去」の楽曲を選びながら、今のミュージシャンを輝かせる音楽であることを重視していたと語る。イギリスのリアルなアーティスト事情や、アイデアの源、ダンスフロアに共鳴を生む方法、そして松浦俊夫が今、注視するミュージシャンについて話を聞いた。

「ベスト・オブ・クラブ・ジャズではない」その選曲について。

――『LOVEPLAYDANCE』の選曲についてまず教えてください。
僕は曲を作るという意味でのアーティストではありつつも、選曲家でもあるので、楽曲を選定するにあたって、いまこの8曲をもう一度世に出す意義、そして新しいアレンジを施す意味を、いろいろと考え、試行錯誤してきました。本作は「ベスト・オブ・クラブ・ジャズ」ではないんですよ。

例えば、僕にとってのジャズというと、高校時代に聴いて全くわからなかったという思い出のある、マイルス・デイヴィスの「So What」。ジャズでダンスをするというカルチャーに飛び込むきっかけを与えてくれた、ケニー・ドーハムの「Afrodisia」。そしてちょうど30年前、CLUB CITTA'で人前で初めて名前を出してDJをしたときオープニグでかけた、ホレス・シルヴァー「The Cape Verdean Blues」もそのひとつです。でも、その曲たちを選んでも、懐かしいものでしかならない。

写真左がアルバム『LOVEPLAYDANCE』。収録曲には、オリジナルの新曲の他にブッゲ・ヴェッセルトフト、クルーダー&ドルフマイスター、ザ・ニュー・ロータリー・コネクション、バイロン・モリス&ユニティ、ロニ・サイズ・レプラゼント、フライング・ロータス、カール・クレイグ・インナーゾーン・オーケストラの楽曲をカバーして収録。右はEPでリリースされた「I Am The Black Of The Sun / Kitty Bey」。EPは抽選で読者プレゼントも。詳しくは最後のページにて。

――たしかにこれまでのジャズのレアグルーヴといった側面の曲は、「Kitty Bey」くらいですよね。ロータリー・コネクションの「I Am The Black Gold Of The Sun」はニューヨリカン・ソウルが、1997年にカバーして蘇っているとして。
そうですね、「Kitty Bey」だけレアグルーヴ的でマニアックなんですけど、80年代後半のアシッド・ジャズ・クラシックスです。それに、当時パルコのCMで使用されていた曲ですよね。たぶんあのCMはロンドンで作られたと思うんですが、ダンスするシーンを映像で合わせて編集されていて。すごくポップな切り取られ方を日本でも90年代の頭にしていた。1988年には早々に再発されていましたし。この曲は、その先祖帰りみたいな感じです。

ブラウンズウッドから、楽曲のリアクションが送られてきたのですが、ボブ・ジョーンズやクリス・フィリップスからも、このカバーはとても好評でした。彼らにとっても思い出深い曲だと思うし、同時にフレッシュな音楽として受け入れられたと思う。そして、20代の人たちも元の曲はなんだろうと扉を開けてくれて、オリジナルのスゴさや感動を知るきっかけになってくれたら、このプロジェクトの価値があるじゃないかと思うんです。

――曲がリリースされて何年か後に再評価されると、当時の感動も蘇りますよね。
それぞれの曲に思い出があるのですが、それらはすべてダンスフロアでのことです。ロニ・サイズを初めて見たとき、音響的にもすごかったしライブとしても成立していて、DJミュージックの到達点を感じました。瞼にその感動が今でも焼きついています。一昨年、ロニのステージを久々に見たのですが、何十年たっても変わらない感動がありました。リアクションを聞く限りでは、今回選曲した曲に対して僕と同じように、当時の感動を変わらず持っている人がたくさんいるんだなと改めて思いました。

――アルバムには、1990年代や2000年代に生まれた曲が多いのも特徴ですよね。
この作品は扉を開ければ、ジャズもあるし、ファンクもソウルもテクノもある。自身で扉を開くか否かで人生大きく変わるというか。フライグ・ロータスや、カール・クレイグといったキーワードでひっかかって、予定外に違う曲で新しい出会いがあり、聴いていったらどんどん枝分かれしていって、気付くと音楽の底なし沼に入ってしまった…。そんな聴き方でいいんじゃないかと思います。

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松浦俊夫

松浦俊夫
1990年、United Future Organization (U.F.O.)を結成。5作のフルアルバムを世界32ヶ国で発表し高い評価を得る。2002年のソロ転向後も国内外のクラブやフェスティバルでDJとして活躍。またイベントのプロデュースやファッション・ブランドなどの音楽監修を手掛ける。2013年、現在進行形のジャズを発信するプロジェクトHEXを始動させ、Blue Note Recordsからアルバム『HEX』をリリース。2018年3月、イギリスの若手ミュージシャンらをフィーチャーした新プロジェクト、TOSHIO MATSUURA GROUPのアルバムをワールドワイド・リリースした。 InterFM897 “TOKYO MOON” (毎週水曜17:00)、Gilles Peterson’s Worldwide FM “WW TOKYO” (第1&3月曜19:00) 好評オンエア中。

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