キングジョー インタビュー

WRITER
中村悠介(IN/SECTS)

今回登場していただくのはキングジョーこと森本ヨシアキさん。大阪を拠点にイラストレーターやDJとして活動し、過去にはザ・ハイロウズやカーネーションなどのアートワークやRECORD STORE DAYのポスター、最近では坂本慎太郎のライブフライヤーを担当。DJとしては、いわばガレージパンクをその情熱量で拡大解釈する、そんなゴキゲンなプレイはその界隈ではよく知られるところ。今回はそんなジョーさんのお部屋におじゃましてお聞きします。にしてもすごい部屋だ。

ーーキングジョーさんが最初に買ったレコードを教えてください。
布施明の「君は薔薇より美しい」。小学生なりに当時ヒットしていた西城秀樹の「ヤングマン」と迷って。布施明の方が大人っぽくて洒落てる、と。ここ数年「君は薔薇より美しい」が再評価されてるので嬉しく思ってます(笑)

ーーご出身は高松ですよね。布施明は町のレコード店で?
ジャスコで。シングルが600円の時代。当時おこづかいは妹の塾の送り迎えして100円もらうような感じで。

ーーそれを貯めて買ったんですね。
はい。あと歌謡曲でショックを受けたのがサザンオールスターズ。レコードももちろん買ったし「勝手にシンドバッド」のモノマネを休み時間にしたり。アルバム『NUDE MAN』までは本当によく聴いていましたね。

ーー洋楽に目覚めたキッカケは?
中2の頃、『ベストヒットUSA』でカルチャー・クラブと(ローリング・)ストーンズを観て衝撃を受けたのが洋楽の目覚めで。親にテスト勉強するって言いながら夜にひとり、居間で音を絞って観てた。ちなみに、その時期に深夜テレビで観た『悲しみのベラドンナ』は自分にとってのヰタ・セクスアリス映画です。そちらももう衝撃で(笑)

ーー(笑)ちなみにストーンズはなんの曲です?
「アンダーカヴァー・オブ・ザ・ナイト」、そのPVで動くミック・ジャガーを初めて観て、ものすごい興奮したよ〜!

ーーパンクを聴き始めたのはその後でしょうか?
なぜか分からないけど、高校の頃にパンクが流行ったんですよ。レコード買った友達から借りてカセットテープに録ったり。同級生の宇川(直宏)が岡山までフェリーで通って輸入盤屋で(セックス・)ピストルズのブートとかを買ってきて、それをみんなで聴いたり。宇川は遣唐使みたいな感じで。

ーー現在の宇川さんの活動にもつながるような?
やっとることぜんぜん変わってない(笑)! そういえば、俺が大学で明石に住んでた頃、宇川は池袋に住み出してて帰省のときに明石に寄ってくれるんだけど、その時にスゴい映画がある!ってハーシェル・ゴードン・ルイスの『シー・デビルズ・オン・ホイールズ』と、若松孝二の『処女ゲバゲバ』のビデオを家に持ってきてくれて一緒に観て。なんじゃこりゃ!?って。その夜から人生が変わった感じがある。

ーーいい話ですね。
俺は300円で買った、尾藤イサオと内田裕也のコンピレーション(VA『PAGE ONE』)を宇川に聴かせて。その映画観た後、フェリーの駐車場で宇川がもう一回、あの裕也さんの「Tutti Frutti」が聴きたい!って言うからカセットでかけて、ふたりでツイストしました(笑)夜中の駐車場で。やっぱりユーヤさんすごいわー!って(笑)

ーー絵はいつから描かれていましたか?
特に意識はしてないし、そういう教育も受けてないんですが、考えたらレコードを録ったカセットのインデックスに描き始めたのが原点かも。ストーンズならベロマークを模写したり。それと雑誌の『ビックリハウス』が好きで、とにかく湯村輝彦先生が大好きで。今でも絵を見るたびに元気が出るけど、その頃から好きなものはぜんぜん変わらない。

ーー大学時代はレコード店によく通っていましたか?
そうですね。高松は輸入盤屋がなかったので、明石に引っ越してからは欲しいレコードがあり過ぎて大変でした。意外に輸入盤が安かったし。例えばハックルベリーで13thフロア・エレベーターズとか、モッズかと思ってシャドウズ・オブ・ナイトの編集盤を買ったのは覚えてる。ちょうどその頃、CDが普及してきて、俺も時代の波に乗りたいなということで(CDで)最初に買ったのは廉価盤のヤードバーズのベスト。30曲入り。

ーーレコードからCDに変わったとき、なにか感じたことは?
レコードが古臭く見えた、ということはなかったけど、長時間かけっぱなしにできるのはありがたかったですね。今もあんまり(聴くメディアに)こだわりはないしレコードを買うのはDJするから、というのはあるけど、モノとして好きですね。

ーー大学時代からバンドをされてたんですよね。
定期的なバンドとして始めたのは大学の最後の年から。

ーー4回生の頃から?
いや5回生、もう勉強熱心だったんで(笑)。その頃からガレージバンクが好きで。The 5.6.7.8'sとかJACKIE & THE CEDRICSとか。

ーーDJを始めたのはどういうキッカケだったんです?
その頃、ガレージパンクに目覚めて、もうそういうイベントがやりたくてしかたなくて。でも、イベントではバンドとバンドの合間の音楽はそこのライブハウスのCDをかけるしかない。それがいやで。せっかくこういうイベントするなら全部きっちりやりたいと思って。それでDJを。

ーーなるほど。でもイベントには自身のバンドも出演しますよね。
だから忙しかったですよ。最後のレコードをかけたら、すぐステージに行って演奏して、また戻って。それは80年代の終わりくらい。その時はDJで踊るという意識もなかったので、ただこういう音楽があるんや!っていうのをバンドでもDJでも伝えたかった。言葉じゃ言い足りないから…、話せば白々しくなるから…。

ーーイルリメの歌詞(「トリミング」)みたいな感じで言うと?
(笑)まぁ、当時はクラブみたいに出来上がっているところがなかったので。今はそんなに強い動機で(DJを)やっとるわけではないけど、趣味ですね。やるのは楽しいし。

ーーでは、あらためてレコードの良さをどう考えます?
ジャケットがでっかいので納得感があるというか。音も多分、レコードの方がいいような気がします。あと、うちの父親が製紙業で小さい頃から家に紙のサンプルがたくさんあったので紙への愛着もあって。

ーーレコードジャケットも紙ですしね。
そう。データは飛んだら終わりだし。パソコンで曲が消えたことが何回もあるし。

ーー今もDJはレコードで、ですよね。
体力的にしんどいときはCDの時もあるけど…。毎日、屈伸とかすると大丈夫かな。

ーー準備運動で鍛えられます?
できればいつも(レコードを)持っていきたい。メモリースティック2本でDJやったりしてるひとを見るとびっくりするし、出音もレコードとそんなに変わらんのやろうけど、お金出した分(レコードは)モノとして愛着が持てるし、可愛らしいし。高いレコードだと、また同じくらいの値段で売れたりすることもあるから(笑)。そういえば去年ご一緒したDJの人がブースにノートパソコンだけ持ち込んでて。“このパソコンにはようけ曲が入ってるんでしょうね”って聞いたら、“いや、そうでもないんですよ”と。“えっ!?”とよく聞くと、Spotify。で、DJソフトみたいなんがあって、似た感じの曲を自動で選曲して自動で繋いでくれるらしい。極端な話、始めの1曲だけ選べば、あとはイッツ・オートマチック! 人類死滅後もプレイリストは遺るんだなと感じ入りました。話がそれた、屈伸ですね。毎日してれば鍛えられると思います。

ーージョーさんはレコードジャケットに絵を描かれていますよね。
はい。(7インチは)キャンパスとしてのサイズもちょうどいいし。

ーー描くようになったのはなぜです?
なんか自分でやりたくなって。好きなレコードには描きたくて。

ーーDJの時、アートワークのないジャケットはクラブで探しづらいから、ということも?
それもあるけど、最初は自分の好きなアニメのレコードにそのキャラクターを描いてみようか、と。描くとなんか気持ちいいんですよ。12インチはグラビアのコラージュをやってて。DJの最中、疲れた時にこれを見ると、“ジョーさん、ガンバレ!”って言ってくれてる感じがして(笑)元気になれる。『SPA!』とかヤンマガから切り抜いて貼るだけですが。

ーーレコードは通販でも購入されます?
通販が多いかもしれない。通販では決め打ちで。レコード屋では出会いを運に任せるというか。友達がいいよって言ってくれたレコードを買うようにしてます。

ーーふだん、家でレコードを聴かれる際はベスタックスのポータブルプレイヤーですよね。以前、かけっぱなしにできるプレイヤーだと怠けるから、って仰ってましたよね。
そう。あと大音量が不可能という住宅事情もあるけど、クラブに持って行って初めてデカい音で聴いて感動するというカタルシスもあって(笑)

ーーなるほど。よく行くレコード店はどこです?
キンキーズとナカレコ2号店。理由は…ナカレコ行ってその近辺をブラブラすること自体が趣味みたいなもので。家で絵を描いてる時に行き詰まってコンビニに行くつもりが、勢い余ってにそのまま地下鉄に乗って電車でナカレコに行ったり。ついつい。キンキーズは店主いわく“レコード屋に憧れてるレコード屋”ということで趣味に偏りがあるけど思わぬ盤を掘り出す楽しみがあります。

ーー最近行った中で印象的なレコード店はありました?
DJ友達でもあり、鍼灸の主治医でもある北澤さんの車で連れて行ってもらった広島のジスボーイ。量もスゴいし値段も安くて。1階は7インチが300円で12インチが800円。2階はレアもの中心だけどそれでも安いし見たことないようなのがゴロゴロありました。ジスボーイの母体は米屋さんなんで、米を10kg買ったらレコード半額って貼り紙が(笑)。米は3,000円から。

ーーどうしました?
米は日常的に要るもんやし…いいレコードも必要や…。広島のイベントの翌日で二日酔いやったこともあって、もうスゴい頭が混乱してきて。結局レコードはいっぱい買ったけど米は買わなかった。今考えたら米買えばよかった…。



後編ではキングジョーさんが思い入れのあるレコードを5枚ご紹介します。最後には直筆のイラスト色紙のプレゼントもあります。

キングジョー

キングジョー
1968年、香川県高松市生まれ。現・大阪在住。O型。
10代の終わりにガレージパンクと出会い衝撃を受ける。その衝撃を方法論に置き換え以降、文章、イラスト、DJ、バンド(マグニチュード3)などの活動を始め、現在にいたる。
著書に多数の『SOFT, HELL! 』シリーズ、画集『SINGLES GOING STEADY』、漫画家・須田信太郎との共著『淀川ハートブレイカーズ』(森本ヨシアキ名義で原作を担当)がある。 これまで坂本慎太郎、クレイジーケンバンド、The Phantom Surfers、ザ・ハイロウズ、ギターウルフ等のアートワークや、RECORD STORE DAYのポスターイラストなども手がける。普段は会社員。

取材:中村悠介(IN/SECTS)
写真:倉科直弘

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