レコードとILL-BOSSTINO - 中学生時代から今も聞いている3枚 -

WRITER
富山英三郎

台風直撃のなか野音で行われたTHA BLUE HERB 20周年記念ライブ

――日比谷野外音楽堂の話になったところで、THA BLUE HERB 20周年ライブDVD『20YEARS, PASSION & RAIN』の話も伺いたいのですが。事前に読者のために説明すると、ライブ当日の2017年10月29日(日)は台風22号への警戒がニュースで散々流れるほどの悪天候で。僕も完全防水で挑んだのですが、うっかりポケットのファスナーを閉め忘れただけでiPhoneが水没しまして(笑)。
そうなんだ(笑)。そういう話はあちこちで聞いたよ。それにしても凄かったね。

――野音の2ヶ月前に発売されたシングル『愛別EP』に、「雨降らば降れ、風吹かば吹け」から始まる曲(BAD LUCKERZ)が収録されてるじゃないですか。初めて聴いたとき、言い方は悪いですけど「雨が降ったときの保険だな」とか思っていたんです。でも、ライブが近づくにつれ、最初から狙っていたんじゃないかと(笑)。
確かに、雨が降ってもなんとか乗り越えようと思っていたし「こういう奮い立たせる曲を」という気持ちはあったけど。まさかあれほどのものが来るとは思っていなかったから…。とはいえ、結果としてだけど俺らの引き立て役として最強のものが来たよね、やっているときは大変だったけど。

――台風のなかでライブをする大変さってどんなところですか?
寒さで手も震えてくるし、目にも口にもマイクにも背中にも雨粒が入ってくる。それも3時間以上。とにかく1小節1小節、確実に前へ進んで行く感覚だよ。だから、周りを俯瞰して観れたのは最後の2曲くらい。雨さえなければもっと安定したいいライブを観せられたという思いもあるけど、結果的にはそれを乗り越える姿というか、あれほどのシリアスさは雨なしに起きなかっただろうから。結果オーライだね。

――伝説のライブになりましたね。3時間15分と聞くと長いですが、改めてDVDを観ても最後まで飽きることのない完璧な流れでした。
20年もやっていると、初期から聴き続けてくれてる人、しばらく離れていた人、途中から聴いてくれた人、いろいろ混ざり合っている。俺らの変化も不変も含め、誰もが20年という時間を実感できるようなセットを作りたかったから随分と練ったよ。やりたい曲を並べていって、その前後はこの曲しかないっていう必然の組み合わせから生まれたんだよね。

――お母様がお好きな『路上』も含め、ライブでは初披露となる曲もたくさんありました。
そうだね、『MY LOVE TOWNS』とかも初めてだし、『スクリュードライマー』もTHA BLUE HERBでやるのは初だし、『未来世紀日本』は相当久しぶり。あれでもかなり削ったんだよ。お客さんに楽しんで欲しい気持ちが一番大きかったし、すべてさらけ出すのがテーマだったから。

――さらけ出すという意味では、1996年版の『この夜だけは』が流れました。感動的なエピソードはDVDを観ていただくとして、あれはずっとやろうと思われていたのですか?
ライブでは1st.の曲もやっているけど、結局は今の声、今のフロウに変換されてしまうから。1曲くらいは当時のままを置くことで変化を感じられるし、タイムカプセルみたいなもんだよね。

――初めて作った曲にしては完成度が高いですが、よくあそこからここまで来たなという感覚もあって。
いや、そう思いますよ。今ラップをやっている子や、始めようと思っている子にとって、ひとつのメッセージになれればいいかなって。こんな俺でも頑張ればここまで来れたという。口で言うよりも、あの曲を提示することでわかりやすいかなって。

――改めてDVDを観て、どんな感想を抱きましたか。
まぁ、お客さんのすごさだね。俺らは自分のことなんでどんな状況でもやらざるを得ないけど。お客さんは受け身だし「俺らならやってくれる」って気持ちがないとあんな日に野音まで来ないから。来たら来たで隠れる場所もなく、「それでもお前は楽しめるのか?」っていう状況に約3000人がさらされて。もちろん、途中で帰ったり楽しめなかった人はいるだろうけど、俺の目に映ったり映像に映っている限りではみんな全開だったから。そこは感謝しかないです。

――風があまりなかったのが救いでしたよね。
そう、それに尽きる! どういう状況でも俺はやるつもりだったけど、PAのテントが飛ばされたら中止と聞かされていたんで。それをずっと恐れてた。

――DVDの編集に関しては、何かお願いをしたのですか。
高価なクレーンを導入したのに開始から30分で壊れたり、そういうことが積もり積もって最後は数えるほどのカメラしか残ってなくて。映像的に使えるものが後半にいくにつれてどんどん減ってきた状態だったんで。基本任せる感じでした。映像監督も含めみんな満身創痍だったから。

――ファンはもちろん必見ですが、このDVDを観て初めてTHA BLUE HERBを知るのも面白い体験ですよね。
最高だね、いいと思う。バトルとか一瞬の刹那的なところにスポットがあたりがちだけど。こうやって3時間15分をやりきる、伝えきることに俺は価値を置いていて。フリースタイルはJAMとして楽しいし、俺でもできるかもっていう感覚を与えてくれる。でも、そのトンネルをずっと進んでいって、こういう事が出来るのか?って。こと同業者には壁にもなりうる。一方で、楽しむってことは簡単なように見えて、生きていればいろいろあるし、楽しめなくなることも増えてくるんで。あんな過酷な状況でも「俺らは楽しんだぜ」ってことを残しておくのもポジティブだなって思うんだよね。

ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)のサイン入りステッカーを抽選で3名様にプレゼント。

応募期間:2018年4月21日(土)〜5月11日(金)23:59
応募方法:応募方法は、TwitterでREVINYLのアカウントをフォローして、この記事をシェアするだけ(REVINYLの関連投稿をRTでも可)。応募締め切りは5月11日(金)まで。(当選発表は5月18日(金)を予定。)当選者へのみダイレクトメッセージでご連絡します。 Twitter: https://twitter.com/REVINYL_REVINYL

THA BLUE HERB

THA BLUE HERB
ラッパー: ILL-BOSSTINO、トラックメイカー: O.N.O、ライブDJ: DJ DYEの3人からなる一個小隊。1997年札幌で結成。以後も札幌を拠点に自ら運営するレーベルからリリースを重ねてきた。'98年にファースト・アルバム「STILLING, STILL DREAMING」をリリース。以降も作品のリリースやツアーを重ね、2017年は結成20周年を迎える。10月29日には日比谷野外大音楽堂で20周年記念ライブを台風直撃豪雨の中、集まった3,000人のオーディエンスと新たな伝説を刻んだ。 公式ホームページ:www.tbhr.co.jp

取材・文:富山英三郎
撮影:則常智宏

世界中のレコードを、その手の中に
  • Google Playでアプリをダウンロード
  • App Storeからアプリをダウンロード

関連記事


新着記事

すべての記事をdig!