レコードとILL-BOSSTINO - 中学生時代から今も聞いている3枚 -

WRITER
富山英三郎

中学生時代から今も聞いている3枚

――1曲ずつ思い出を語っていただきたいのですが、まずはブルース・スプリングスティーン『Dancing In the Dark』(1984年)からいきましょうか。
ブルース・スプリングスティーンは『Born In The U.S.A.』ってアルバムが、当時流行って。この曲はそこからのシングルカットなんだけど、アメリカのロックで踊るなんて感覚はガキの俺にはなかったし、そもそもダンスミュージックって概念すらなかったから。まぁ、純粋に格好良いなって思ったんだよね。

――シンセサイザーの響きも新鮮でしたよね。
『Dancing In the Dark』のPVがYouTubeにも上がっているけど、この曲に込められている若さ、みずみずしさに泣けてくるよね、ほんとに。それは自分が失ったものでもあるし、彼にとってもそうだろうし、あとはアメリカだよね。アメリカっていう国が持っていた若さ、みずみずしさがパッケージングされていて泣けてくる。最後の女の子とのダンスのシーンなんて超好き。いまでもツアー先で観てるね、かっこよくて大好きな曲だよ。「You can’t start a fire without a spark/火花がないと火はつかねぇ」って歌詞もすげぇ熱くてかっこいいなって。中学生の頃にはわからなかったけど。

――そして、Cyndi Lauperの『Time After Time』(1984年)もまた名曲ですよね。
これはDJの時に朝方とかによくかけるよ。タイトルにある、サビのタイムアフタータイム(何度も何度も)というメッセージは普遍的。歌詞自体はもっと深いんだけど。仲間とDJをするときは23時くらいから朝の9~10時までやるけど、最後のほうにこの曲をかけると、一晩で起こった中でのタイムアフタータイムがあって。一方、THA BLUE HERBの20年もそうだし、あらゆる場面で時間の流れが感じられて。そこには切なさもあるんだけど、この曲にもまた若さが込められているんだよね。作品っていうのは永遠だから、そういうところも大好きですね。

――この曲はいろいろな人がカバーしてますよね。
そうだね。カサンドラ・ウィルソンっていうジャズボーカリストもカバーしていて。俺は彼女が歌っているのがきっかけで、『Time After Time』を中学生以来に聴いて。そこから改めてシンディ・ローパーの12インチを買ったんだよね。

――そして、もっとも意外に感じたのが、Van Halen『Why Can't This Be Love』 (1986年)なのですが。
ヴァン・ヘイレンはアメリカのハードロックで、この曲の前に『JUMP』っていうヒット曲があって。それが収録されている『1984』っていうアルバムは、たしか天使の姿をした白人の子どもがタバコ吸ってるジャケット。中学生の俺はそこに不良っぽさを感じていたんだけど、なぜか『JUMP』には引っかからなくて。その次のフェイズだった『Why Can’t This Be Love』にヤラれたんだよね。フックのテンションが抑えられていて、そこが新鮮だった。普通、サビっていうのはどんどん盛り上がっていくのに、これは静けさを漂わせている。

――そう言われると久しぶりに聴いてみたくなります。
中学生ながら、このサビに胸を締め付けられるような感覚があってかっこいいと思ったんだよね。この12インチは、先日フィンランドに行った時、ヘルシンキのレコ屋で偶然見つけたんだけど。

――いつも買うのはアナログ盤ですか?
20代前半くらいからほぼアナログしか買ってないね。行った町々でレコ屋は必ず巡っている。中古7割、新譜3割くらいかな。

――いま振り返ってみて、この3枚はどこがツボだったと思いますか?
たぶん叙情性だと思う、中坊の頃にはそんなこと知らなかったけど。でも、相方のO.N.Oにビートを頼むとき、「切なくて、哀しくて、温かいのを作ってくれ」ってよく言う。たぶん、そこが一番好きなんだよね。ライブの時もDJ DYEにヒップホップのインストを選んでもらうときも同じ。そこには、叙情的なメロディと共に表には出ない秘められた強さみたいのもあって。この3曲もそこだと思う。

――でも、子どもの頃から音楽が好きだったんですね。
好きだったね。マイケル・ジャクソン、プリンス、マドンナがトップだった頃から。

――お父さまが音楽好きだったと仰っていましたが、家にはレコードがたくさんあったんですか?
親父はクラシックが好きだったから、一緒に聴くみたいなことはなかった。ターンテーブルを借りて聴く程度。そもそも親父はオープンリールで録音しているような人だったから、俺には扱えない世界だったね。クラシックってライブ録音を楽しむものだから、FMで流れるコンサートを録音したりしてた。

――では、THA BLUE HERBのCDを親に渡したりもしているんですか?
親父はとくに何も言わないけど、CDは買ってくれているね。お袋は20周年の野音に来てたよ、あの土砂降りのなかで。

――どんな感想を仰っていました?
『路上』が聴けて良かったって。

――おぉっ!
驚いたよ、『路上』が好きっていうのが。

次ページ:台風直撃のなか野音で行われたTHA BLUE HERB 20周年記念ライブ

THA BLUE HERB

THA BLUE HERB
ラッパー: ILL-BOSSTINO、トラックメイカー: O.N.O、ライブDJ: DJ DYEの3人からなる一個小隊。1997年札幌で結成。以後も札幌を拠点に自ら運営するレーベルからリリースを重ねてきた。'98年にファースト・アルバム「STILLING, STILL DREAMING」をリリース。以降も作品のリリースやツアーを重ね、2017年は結成20周年を迎える。10月29日には日比谷野外大音楽堂で20周年記念ライブを台風直撃豪雨の中、集まった3,000人のオーディエンスと新たな伝説を刻んだ。 公式ホームページ:www.tbhr.co.jp

取材・文:富山英三郎
撮影:則常智宏

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