HALFBYインタビュー

WRITER
中村悠介(IN/SECTS)

京都のクラブでのDJに端を発し、さまざまな角度からポップスの可能性に挑むHALFBYこと高橋孝博さん。アルバムとしては最新作、2015年に発表された“ハワイ”がテーマの「innn HAWAII」もこれまでと同じようにレコードとしてもリリース。過去にはレコードショップで働いた経験もあるという高橋さんが持つレコードへのこだわりとは? 所属するレーベルのショップ「SECOND ROYAL SHOP」でお話をうかがいます。

――まず高橋さんが最初に買ったレコードを教えてもらえますか?
母親に買ってもらったのはメルモちゃんのシングル盤。自分のお金で選んで買ったのはフランス・ギャルの編集盤かな。

――それは高校生の頃?
高校一年生の時に大阪の(レコード店の)「ジェリービーン」で。お店はファッション雑誌かなにかで見つけたと思う。それまでCDはよく買ってて。普通にブルーハーツとか。中山美穂とかカセットで買ったりしてたけど。

――フランス・ギャルをレコードで買った理由はどんなものだったんです?
当時、田舎者を脱却(笑)するために服装に気を使ってみたりしてたけど、その延長で。それと友達がクラブでイベントをやってたこともあってレコードに興味が湧いて。「ジェリービーン」は服も売ってたし、イギリスのヴィンテージの雑貨とかも見つつ、レコードもそういうものの中のひとつという感じで。

――おしゃれなグッズとしての感覚もあったということですかね。
うん。単純にCDやカセットに比べてアナログって大きいしインパクトもあって。20代になる前は死ぬほどアメ村に行ってたと思う。

――当時はどんなレコード店に行っていました?
「ジェリービーン」とか「ウッドストック」とかかな。ニューウェーブだったりネオアコだったりをいろいろ教えてもらったり。たまに東京に行くと、関西の相場に比べて中古盤が安かったから「ディスクユニオン」でもよく買ったし。

――いまレコードはどのくらい所有されています?
LP、7インチそれぞれ3,000枚くらいかな。ずっと売らずにいたけどここ数年で1,000枚くらいは売ったし、ここ(「SECOND ROYAL SHOP」)で販売もしたのでそれくらい。でも7年前くらいから吹っ切れたのもあって7インチを買い始めたかな。「Discogs」で細かいシングルのディスコグラフィが分かるということもあって。

――吹っ切れたというのは?
昔のレコードは当然減っていくし世界の相場は決まってきてるから下がらない。それでなぜか、買えばいい!(笑)って吹っ切れて。年間で何百枚も。

――それじゃ購入するのは「Discogs」などオンラインが中心?
「Discogs」とか「eBay」とか。レコード屋に行くことはあんまりなくなったかな。

――買うレコードはヨーロッパの60’sのポップスだったり?
全ジャンル買うけど「eBay」ではこれまで自分の買ってなかったフランスのコンパクト盤とか。それこそフランス・ギャルのヒット曲とか向こうにはたくさんあるし。フランス、ドイツ、イタリア、いろんな国の「eBay」をチェックして。

――「Discogs」や「eBay」でレコードを購入する楽しさはどんなものです?
インターネットから、郵便屋を通じて個人ディーラーから買う初期衝動というか。レコード屋で買う文化と違ってインターネットを通じて知らない人から買う楽しさに気付いたというか。

――文通みたいな? 個人間のレコードのやりとりの楽しさ、と。
よく分からないイタリア語で、ありがとう!とか書いてあるとか各国の切手とか。ピザの空き箱で届いたりとか。そういうのが楽しくて。だからゲットした時点で満足というのもある。

――到着してすぐ聞かないんですね。
ぜんぜん聞かない。聞きたいときに初めて聞く感じかな。

――いうなれば大人聞き?
そうかも。

――現在、DJでいろんなところに行く機会はあると思うんですけど、そこでもレコード店にはあまり行かない?
あまり行かなくなったかな。今でも「JETSET」のネットを見て取り置きをしてもらうことはあるけど。

――以前「JETSET」ではスタッフをされていましたが、その時も買われていました? よね?
その前には「ZEST」でも働いてたけど、そこでも自分がいちばん買ってたと思う(笑)。

――HALFBYとしてCDだけでなくレコードも出し続けていますよね?
例えば90年代の渋谷系ブーム以降は日本のアーティストがアナログを出さない時期もあったけど、その時期も自分がレコードを出してたのは、自分たちが好きだった(ミュージシャンたちと)同じことをしたいっていう気持ちが強かったというか。

――憧れから?
そう。客観的に見てHALFBYはアナログで必ず出すべきアーティストだとは思っていなくて、ただただ憧れ。理由がうまく言えないけどバンドとかシンガーソングライターの方が、アナログ盤が似合うと思う。

――振り返って、高橋さんが考えるレコードならではの良さとはどんなものです?
自分が音楽を聞き始めた頃は、CDは定着してたし、カセットもあった。その後にはMDなんかもあった。そんないろんなフォーマットがあった中で結局レコードを選んできた、というのは絶対になにかがあると思うけど。

――それはどんなものだと考えます?
(レコードは)古いものだけど、新しい音楽をレコードで聞くと新鮮に感じることもあるし、逆に古いものだから過去の音楽を聞いているという気持ちにもなれる。それが理由のひとつとしてあると思う。例えば今、イギリスの10代の少年たちがたくさんレコードを買ってる、というのはフォーマットとしてレコードが新しいもので、CDは古く見えるんだろうと思う。

――なるほど。レコードの、CDみたいに流しっぱなしにできない聞き方に関してはどう考えます?
A面が終われば裏返すし、アームを上げて針を乗せるし、ノイズもあるし、ちょっと反ってたら音が飛んだりもする。そんな不便さも込みでレコードの聞き方だと思う。世話の焼ける子供みたいな(笑)ものかもしれないけど、その動作をこれまで億劫だと思ったことはないし、それがレコードを聞く義務みたいなもので、それもアナログの良さだと思う。

――そんなプロセスも含めてレコードの聞き方ですね。
それに、12インチなら盤面を全部使って1曲っていうのもあるし、その存在感はいいなと思う。

――例えばスクラッチができたり、モノとしての存在感、サイズ感も身体感覚的にぴったりかも。
大きさで言えばアートワークとしてのサイズ感も重要かな。よく言われるけどポスターみたいに部屋に飾ることもできるかもしれないし。やったことはないけど(笑)

――フランス・ギャルも飾らなかった?
飾ったかも(笑)

次ページ:HALFBYの“レコードならでは”のレコード7選

HALFBY

HALFBY
京都出身在住の高橋孝博によるソロプロジェクト。これまでにメジャーを含む4枚のアルバムをリリースし、すべてのアルバムの楽曲は日々お茶の間のBGMとしてテレビやラジオで延べ10年以上使用され続けている。平日はリミキサー/アレンジャーなどと並走し、アーティストへの楽曲提供から、企業CM、映画音楽などの制作をライフワークに週末はDJとして京都から全国各地へ。2015年には4年ぶりのアルバム「innn HAWAII」をリリースしている。

取材:中村悠介(IN/SECTS)
撮影:原祥子

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