Gilles Peterson インタビュー 〜 ジャイルス・ピーターソンのキャリアからおすすめレコードまで

WRITER
mari* Kimura

ラジオDJとしてジャズにとらわれず幅広い音楽ジャンルを流す

――ラジオDJとして初めてかけたレコードは覚えていますか?
十代の頃、海賊ラジオ局を庭に作って、そこから自分の番組を放送してたんだけど、そこでかけた最初のレコードは覚えていない。その後、ロンドン初のブラック・ミュージックに特化した海賊ラジオ局Radio Invictaに引き抜かれて、そこでプレイした最初のレコードは、Earth, Wind & Fireの「Brazilian Rhyme」。残念ながらその同録が手元にないんだけど、絶対誰かが持っているって信じてるよ! その後、ジャズ専門の海賊ラジオ局K-JAZZを立ち上げ、そこで私が最初にかけたレコードは、Public Enemyの「Fight the Power」。Branford Marsalisのサックスがかっこいいでしょ。 Jazzだけど、Public Enemy!! (笑)

――その後、Kiss FM、BBC Radio Oneで番組を持ち、現在BBC Radio 6 Musicで毎週看板番組を放送されています。さらに2016年にはご自身のインターネットラジオ局WORLDWIDE FMを立ち上げられましたが、それらの番組や放送局で最初にかけたレコードは、覚えていますか?
忘れちゃった!(笑)

――CD、データと音楽の集め方、楽しみ方にもチョイスが出てきた中、なぜレコードを買い続けるのですか?
レコード離れした時もあるよ。2005年から2010年頃かな。業界全体的にレコードでのリリースが少なくなって、レコード・ショップも結構閉まっちゃったよね。私の手元には日々たくさんのプロモーションの音楽が送られてくるけど、当時レコードがぱったり届かなくなって、その代わりにCDやデータで音楽が送られてきたんだ。私のレーベルBrownswood Recordingsでもレコードでのリリースをしなかった作品が何枚かあるけど、それはまさにこの時期の作品さ。Hyper DubやDigital Mystikzといったレーベル初期のリリースをレコードで持ってなくて、それはかなり後悔してる。こうしてレコードの魅力が見直されて、レコード・ブームが起きているのは素晴らしいことだよね。ちなみに私は、プロモーションで送られてきたレコードを買い直したりするんだ。自分には音楽をサポートする責任があると思ってるし、DJ文化、私が信じる音楽ムーヴメントを支援したいからね。これからもずっとレコードを買いつづけたいと思っているよ。

レコードは"フィジカル"ということが最大の魅力

――レコードの魅力とは?
先程伝えたとおり、私にはコレクターの気質があるから、"フィジカル"ということが最大の魅力さ。レコードを見れば、その頃の音楽プロジェクトだったり、シーンの状況をすぐに思い出せるし、アートワークやスリーブノートを読むことでさらにその作品を知ることができる。いろんな角度からその作品を楽しむことができるでしょ! 作品を手に取れることが私にとって重要で、レコードだけじゃなくて、本も同じ。タブレットで本を読める時代だけど、私は絶対に本を買って、ページをめくりながらストーリーを感じたい。作品を聴いた、読んだという"実感"をしたいんだ。

――データのみでのDJが増えている中、あなたは、ほぼ全ての公演にレコードを持参しプレイされています。その理由を教えてください。
レコードでDJをすることは、データでDJするよりもリミットがあるんだ。厳密にレコードを選んでも、本番で想像とは全く違う方向にいってしまうことがある。でもその限られたレコードでベストなパフォーマンス、音楽ストーリーを作らないといけないわけだから、最大限のクリエイティビティを求められるよね。レコードのみでのDJと、データでのDJでは、自分のセットへのアプローチも違って… 私は特にテクニカルなDJでもないし、何十年もDJをしてきて、ようやくスキルがついてきたと思ってる。それでも技術的なチャレンジがレコードほど求められないデータでのDJは、私にとってのDJという"アート"の楽しみが減ってしまうんだよね。あと、レコードでDJする時のほうが、セットの中で面白いことが起きるんだ。データでのDJは、たくさんの音楽を持っていくことができるけど、選曲のチョイスが多いと逆に、簡単な選択をしてしまうんだよね。私もUSBでDJをしているけど、その理由は様々で、得にフェスティバルなんかでは、機材のコンディションも現場で確認するまで分からないでしょ。あと、レコードだけでDJするDJたちが機材関連のトラブルで、うまくDJできなかった様子も見てきてる。いろいろな現場でDJする中、与えられた時間でしっかりとプレイするためには、レコードだけにこだわり過ぎてもいけないということを経験を重ねて学んだんだ。今現在、私のDJセットの中で、30〜50%位がレコードかな。特にレコードでプレイしたいって思うのは、古いレコード!!

続く後編ではGilles Petersonさんに思い入れのあるレコードを紹介してもらいます。どうぞお楽しみに。

Gilles Petersonさんの思い入れがあるレコードとは?

Gilles Peterson (ジャイルス・ピーターソン)

Gilles Peterson (ジャイルス・ピーターソン)
ラジオ/クラブDJ、レーベル主宰、ジャーナリスト。80年代よりアシッドジャズ〜クラブジャズシーンのキーパーソンとして活躍。自身が主宰するインディペンデント・レーベルBrownswood Recordingsでは、常に新しい音楽やアーティストを世に送り出している。少年時代からのパッションであるラジオの分野では、UK国営放送局BBCで20年以上に渡り番組を持ち、現在は音楽チャンネルBBC Radio 6 Musicでの看板番組を務める。日本でもJ-WAVEやInterFMで人気番組「Worldwide」をオリジナル・バージョンで放送を続けた。2016年、ファイル転送サービスWeTransferのクリエイティブ・ディレクターに就任し、インターネット・ラジオ局WORLDWIDE FMを設立。世界でもっともリスナーを持つラジオ・プレゼンターと評価されている。毎年南仏Seteで開催しているWorldwide Festivalは、その音楽のクオリティの高さでヨーロッパを飛び越え世界中で大評判になり今年13周年を迎える。さまざまなプラットフォームから精力的に音楽を世界に発信する音楽の革命家。
https://www.gillespetersonworldwide.com/

取材:mari* Kimura (https://www.instagram.com/marinx611/)
撮影:Martin Eito (http://www.martineitophotography.com/)

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