Gilles Peterson インタビュー 〜 ジャイルス・ピーターソンのキャリアからおすすめレコードまで

WRITER
mari* Kimura

世界で最も影響力のあるラジオ/クラブDJとして知られるジャイルス・ピーターソン。10代の頃、自宅の庭に海賊ラジオ局を創設し、自力で音楽を発信していた少年は、現在、英国最大のラジオ局BBCの音楽チャンネルRadio 6 Musicで看板番組を構える。2016年には、インターネット・ラジオ局WORLDWIDE FMを立ち上げ、世界各国のDJやインフルエンサーたちにプラットフォームを提供し、温故知新な音楽発信を追求している。90年代はTALKIN' LOUDレーベルでAcid Jazzムーヴメントを巻き起こし、現在はBrownswood Recordingsでアーティスト発掘に情熱を注ぎ現在のUK Jazzのムーヴメントの立役者となっている。DJ、レコード・レーベル主宰、フェスティバルのキュレーター/プロデューサー、さらには音楽家を支援する基金Steve Reid Foundationを立ち上げるなど、さまざまなプラットフォームで30年以上音楽を発信&サポートし「音楽の伝道師」と慕われる彼に、人生におけるさまざまなレコード・ストーリーを伺った。

ジャイルス・ピーターソンが手にした初めてのレコードとは?

――レコードとの出会いを教えてください。
レコードを買いだしたのは14歳の頃で、結構遅咲きなんだよね。いろんなDJと話したりインタビューをしてきたけど、Hip HopのDJなんかは、6歳ぐらいからレコードを集めだしたっていう人もいるぐらいだからね。私は末っ子で、兄と姉がよくレコードを聴いていたから、自然と彼らのレコードを聴くようになったんだ。初めて夢中になったのは、兄のレコードで、イギリス南東部Kent出身のグループCaravanの『In the Land of Grand Pink』。一風変わったプログレッシヴ・ロックなんだけど、今でも好きな作品さ。このレコードを聴くのが楽しみで、学校から早足で家に帰って、まだ帰宅してない兄の部屋で、よくこのレコードを聴いたものさ。

――レコードを持っているお兄さん、お姉さんは、その時代、かっこいい存在だったのですか?
当時はレコードを聴くのは普通のことだったと思う。特にイギリスは、自分がどんな人間で、どこに所属するのかという、"アイデンティティ"を持つことが重要な国だから、レコード・コレクションは、その人を映し出す、そんなアイテムとして捉えられると思うんだ。私の両親はフランス人だから、ロンドンに引っ越してきてからも、フランスの伝統を大切にしていて、私たち兄弟はイギリスとフランスの両方の文化が混在する環境で育ったんだ。だからとりわけ、私達はしっかりとしたアイデンティティを持つことは大事だったんだよね。ちなみに母は、フランスの音楽が好きで、ラジオから流れるシャンソンをよく聴いていたよ。普通のイギリスの家庭だったら、両親はBBC Radio 4なんかを聴くはずだけど、家はそうではなかったんだよね。そして兄は、John Peelの番組を欠かさずチェックしてたよ。

――たくさんの素晴らしいレコードに囲まれて育った中、ご自分のためにレコードを買ったのはいつ頃ですか?
 当時住んでいた家から一番近い街はロンドン南部にあるSuttonで、Dubstepが生まれたCroydonの近く。そこには数件レコード・ショップがあって、High StreetにあるOur Price Recordsが、兄の行きつけだったんだ。兄にくっついて、初めてそのレコード・ショップに行った日のことをよく覚えてるよ。兄がさくさくとレコードをチェックしはじめたから、私も見様見真似でレコードをチェックしていると、「見てもわからないクセになんでレコードをチェックしてるんだ?」って兄が言うんだ。もちろんそうなんだけど(笑)。かっこいいと思って真似してみたのに、悔しい思いをした私は、ここにあるレコードを全部知ってやる!って思ったわけだよ。この体験は、レコードを集め出した大きなきっかけになったよね。あと自分はコレクターの気質があって、レコードを集める以前にも、ビー玉を集めていることもあったし、サッカーのカード、鉄道模型も集めてたんだ。あとは、両親の影響もあってフランス製の洋服をよく着てた。まだイギリスにadidasが入ってきてない時から、両親がフランスで買ってきたadidasの洋服からスニーカーまで揃えてたよ。簡単に手に入らないものに興味が湧わいて、集めたくなるんだよね。だからレコードとの出会いは最高だったよ。イギリスで作られていない、海外のエキゾチックな音や文化と出会えるからね!

最初にレコードを買いだした時は、パンクやポスト・パンクが盛り上がってる時代で、BlondieやElectric Light Orchestra、Madnessの「One Step Beyond」など買うところから始まった。そして「Smash Hits」というポップ音楽雑誌を欠かさず買って、レビューを読みあさり、リストを作った。その後、ソウルに興味が湧いて、どっぷりハマったよね。そこからジャズ、ファンク、そしてディスコに出会っていったんだ。次第に日本盤のレコードも買うようになって… 帯付きの美しいレコードには、日本という土地で生まれた音世界はノスタルジックで、それは魅力的だったよね。当時、日本の輸入盤は、1枚£15〜£20とすごく高かったけど、福村博、日野皓正、向井滋春といったジャズ・ファンクは素晴らしかった。それと、日本からの輸入盤を持ってることは、ダブプレートを持っているのと似たような価値があったんだ。他の人が持っていない音楽をかけられるからね。日本の輸入盤をかけるとみんな聴いたことない!と驚き、喜んでくれたよ。私の選曲やDJを評価してもらっている理由の1つは、日本の輸入盤をプレイしてきたからだと思ってるよ。

ラジオDJとして初めてかけたレコードへ

Gilles Peterson (ジャイルス・ピーターソン)

Gilles Peterson (ジャイルス・ピーターソン)
ラジオ/クラブDJ、レーベル主宰、ジャーナリスト。80年代よりアシッドジャズ〜クラブジャズシーンのキーパーソンとして活躍。自身が主宰するインディペンデント・レーベルBrownswood Recordingsでは、常に新しい音楽やアーティストを世に送り出している。少年時代からのパッションであるラジオの分野では、UK国営放送局BBCで20年以上に渡り番組を持ち、現在は音楽チャンネルBBC Radio 6 Musicでの看板番組を務める。日本でもJ-WAVEやInterFMで人気番組「Worldwide」をオリジナル・バージョンで放送を続けた。2016年、ファイル転送サービスWeTransferのクリエイティブ・ディレクターに就任し、インターネット・ラジオ局WORLDWIDE FMを設立。世界でもっともリスナーを持つラジオ・プレゼンターと評価されている。毎年南仏Seteで開催しているWorldwide Festivalは、その音楽のクオリティの高さでヨーロッパを飛び越え世界中で大評判になり今年13周年を迎える。さまざまなプラットフォームから精力的に音楽を世界に発信する音楽の革命家。
https://www.gillespetersonworldwide.com/

取材:mari* Kimura (https://www.instagram.com/marinx611/)
撮影:Martin Eito (http://www.martineitophotography.com/)

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