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ヴァイナルシーン随一を誇るレア・ファンク/ソウル/ディスコのコレクションを有し、数々のメディア等でのジャーナリスト業、そしてコアな音楽ファンから絶大な人気を誇るRappcats/Now Again主宰イーゴンと、世界一のレコードディガーでヒップホップファンのみならずソウル、ファンク、ジャズ愛好家から最もリスペクトを集めるDJシャドウの二人がレコードポップアップショップを開催するということで、DONUTS MAGAZINEが独占潜入。主催者イーゴンと共に、店主として忙しい中質問に答えてくれたDJシャドウ。このインタビューはレコード愛溢れる読者に是非読んでもらいたい内容となっています。最後に、DJシャドウの選んでくれたレコードを読者プレゼントします。
――Rappcatsのポップアップ・ショップはどういう経緯で始めたんですか?
イーゴン(以下E): このRappcatsのスペースの隣が僕のレーベルのオフィスなんだ。1年に1回Record Store Dayが開催されるわけだけど、ここに引っ越した年は、3枚のRecord Store Day用のリリースを予定していたんだ。このエリアにいくつかレコード店があるけど、自分たちで直接お客さんにレコードを売らないともったいないって思ったんだ。それで、Record Store Dayのために販売スペースを作って、僕の個人的なレコードと、Record Store Dayの商品を販売したら、ものすごい列になって、たくさんお客さんが入ったんだ。4年前の話だよ。
――今回のレコード・ポップアップ・ショップに参加した理由は?
DJシャドウ(以下S): イーゴンから誘われて、楽しそうだからやることにしたんだ。こうやって沢山のお客さんが集まってくれただけで嬉しいよ。僕は沢山レコードを持っているし、今日ここで販売してるほとんどのレコードは、2枚持ってるから、その片方を売ってるんだよ。同じレコードを家に持っているから、それをみんなとシェアしたかったんだ。
――今日はどんな人がレコードを買いにきましたか?
E: 今日は、ラン・ザ・ジュエルズのDJであるトラックスターも来たし、カニエ・ウェストと仕事をしているプロデューサーのニール・ヘイニー、ジェフ・バスカーも来たよ。ジェフ・バスカーはブルーノ・マーズの「Uptown Funk」も手がけて、グラミーを5回も受賞して、ベスト・プロデューサー賞も獲得してる。ニールもグラミーを獲得したけど、彼らはここにきて、DJシャドウからレコードを買ってるわけだよ。本当に幅広いタイプの人が来る。マーク・ロンソンだって来たことがあるし、俳優のイライジャ・ウッド、ヴィンセント・ギャロなんかも来るよ。
イーゴン
――このスペースは普段はイーゴンの事務所ということですか?
E: 隣がオフィスで、このスペースは以前は格闘技の道場だったんだ。大家さんに交渉して、このスペースを使わせて欲しいと頼んだんだ。このスペースを使えば、もっと大規模なポップアップ・ショップができるんじゃないかと思って、それで月一で開催するようになったんだ。レコード・コレクティングの体験をみんなと分かち合いたかったし、レコードを集めるという行為は、音楽を楽しむことが第一にあって、誰が一番レアなレコードをゲットできるかという競争ではないんだ。シャドウみたいな多くのファンがいるコレクターがレコードを売ることもあれば、僕が世界一のコレクターだと思っているジェフリー・ワイスもここでレコードを売ったことがある。みんなでビールやコーヒーを飲みながら、音楽を楽しんで、一つのジャンルのスペシャリストと話し合うこともできる。シャドウの場合は、あらゆるジャンルのスペシャリストだけどね(笑)。
――昔と今とでは、レコードに対する愛情は変わりましたか?
S: いや変わらないよ。今の方がオープンマインドになったし、それによって音楽に対する知識も増えたよ。昔は、ロックのレコードを見たら、それがファーストプレスなのか、どういうバージョンなのか、そういう知識はなかったからね。レコードというのは、いくらでも勉強できることがあるんだ。
――デジタル・ストリーミングが主流になった今の音楽シーンについてどう思いますか?
S: 時代も人も移り変わるものだし、音楽を拡散する方法も変化する。僕は全ての時代の変化を受け入れられるけど、物としてのフィジカルなリリースというのは、これからも消えないと思うよ。
E: レコードは今も大人気だよ。この通りには、ここのスペースも含めて、3つのレコードショップがあって、この近くのフィゲロア・ストリートには、4つのレコードショップがある。だからハイランド・パークのエリアだけで、7つもレコードショップがあるんだよ。音楽ファンは今もレコードが好きだよ。レコード・コレクティングは、昔はとても孤独な趣味だったけど、インターネットのおかげで、みんながシェアできるようになった。そして今は、若いキッズがレコードを集めることに興味を持ちはじめて、昔のレコード・コレクターだったら買わないようなレコードを探している。今日も、シャドウのコレクションでニール・ヤングのレコードが売っているけど、今は20ドルから30ドルで売られているけど、昔だったら2、3ドルでしか売れないようなレコードだった。
――今でもレコードを掘りに行ったりしますか?
S: もちろん!
――どんなジャンルを探していますか?
S: 最近はカセットとCDを掘ることにハマっているんだ。でもレコード含め、全てのフォーマットが好きだけどね。
――カセットとCDでしかリリースされてない音楽があるということですか?
S: もちろん。特にカセットとCDでしかリリースされてないヒップホップがあるから、探すようになったんだ。
接客中のDJシャドウ
――販売しているレコードの紙ジャケのところに、レコードの短い説明文が書かれていますが、それはあなたが書いたものですか?
S: そうなんだ。レコードを買ってから、整理するときにちょっとコメントを書いておくんだ。今でも毎日やっている作業だよ。
――売るレコードの準備は大変でしたか? 手放すのが辛いという感情はありましたか?
S: 莫大な量のレコードを持っているから、売れるものを探すのは大変じゃないよ。あと、レコードを手放すのは辛いっていう感情はないね。そういう意味では楽なんだけど、今回はフェアな値段をつけて、お客さんに喜んでもらえるように意識はしたよね。
――なぜシャドウに声をかけようと思ったんですか?
E: ここでフィーチャーしたいレコード・コレクターに全員声をかけたんだ。カット・ケミストは1回だけやってくれたんだけど、何回もやるだけのレコードのストックがなかったんだ。ミスター・シュープリームにも声をかけたけど、忙しくて実現しなかった。シャドウに声をかけたら、僕が人々と音楽をシェアしたいという意図をすぐに理解してくれて、快諾してくれた。
――シャドウは幅広いジャンルのレコードを販売していますが、持ってきたレコードに驚きましたか?
E: シャドウが持ってくるレコードはなんでも面白いよ。長年あらゆるジャンルのレコードを集めてきたから、「こんなレコード存在するの?」っていうものが多いんだ(笑)。シャドウのコレクションが面白いのは、ベイ・エリアのレコードや、シャドウのディギング・パートナーであるダンテ・カーファニヤと一緒にアメリカ中西部で見つけてきたレコードとかを持ってるからなんだ。シャドウが今回販売していたイマニの『Out of the Blue』は、彼が最初に発掘したレコードだし、ベイ・エリアのレコードなんだ。彼が実際に発見したレコードを、本人から買えるのはスペシャルな体験だよ。
Egon&DJ Shadow
DJ Shadow
米カリフォルニア州ヘイワード生まれのDJ/プロデューサー。96年発表の1stアルバム『エンドトロデューシング』は、アブストラクト・ヒップホップの新たな地平を切り開き、90年代のポップスを代表する名盤となる。その後、『ザ・プライヴェート・プレス』(2002)『ジ・アウトサイダー』(2006)『ザ・レス・ユー・ノウ・ザ・ベター』(2011)とアルバムを次々発表。
Egon
DJシャドウやケブ・ダージ、カット・ケミストらと並びシーン随一を誇るレア・ファンク/ソウル/ディスコのコレクションを有し、数々のメディア等でのジャーナリスト業、そしてコアな音楽ファンから絶大な人気を誇るレーベルNow Againを主宰するアメリカ西海岸きっての敏腕プロデューサー。Stones Throw所属時代にはマネージメント、A&RとしてMadlibやJ Dilla、Aloe Blaccといった著名アーティストをプロモートしサクセスへと導いた。