DJ KRUSHの人生を変えたレコード

WRITER
大前 至

DJ KRUSHの「人生を変えた3枚」とは!?

――続いて、KRUSHさんにとっての「人生を変えた3枚」についてお伺いしたいのですが、なかなか濃い3枚を選ばれてるようですね。

Original Soundtrack『Wild Style』(1995年発売 国内再発盤。※オリジナルは1983年発売)

これはサントラですけど、この映画に影響されてDJになり、僕の人生が大きく変わって、今に至るっていう。新宿で遊んでいる時にたまたま入った映画館で、この映画を観て、ヤラれちゃって。小さい頃からモノ作りが好きで、友達から飛行機や戦車のプラモデルの余った部品を貰って、それでロボットとかを作ったりっていう子どもだったけど、中学生になって、やんちゃして、悪いことするほうが面白くなって、そういうことはやらなくなっちゃった。それと並行して、バンドも組んだりして、どっかで音楽はあったんだけども、まだ本当にやりたいことが見つかってない状態で。この映画の中で、ターンテーブル2台を使って今まで見たことのないようなことをやっていたのが、子どもの頃のプラモデルの部品で何かを作るのと近い感覚だった。あと、銃で戦うんじゃなくて、ラップやブレイクダンスで戦うっていうところにも、惹かれるものがあって。そっから、玉虫色のスーツを脱ぎ捨てて、アディダスになったっていう(笑)。

最初はブレイクダンスが強烈だったので、ちょっとやってみたり、グラフィティも挑戦したけど、最終的にはDJをやってみようって、オーディオ屋さんでセミオートのターンテーブルを2台買うところから始まって。ミキサーもクロスフェーダーなんて付いてなくて、縦フェーダーので、「どうやってやるんだろう?」って(笑)。最初はすごい苦労しましたね。

Fab 5 Freddy「Change The Beat」

試行錯誤しながら、機材も少しずつ増やしていって。そんな時期に、原宿のホコ天でブレイクダンスを踊ってるらしいぞっていう噂を耳にして。僕らも人前でやったら「どういう反応されるのか? 自分はどこまでいけるのか?」っていう気持ちが出てきて。それで、ホコ天に機材を出して、ブレイクダンサーと一緒にやったんですよね。

1988年頃、ブレイクダンサーが踊っているところに、来日していたキース・ヘリングがフラッとやってきて、大騒ぎになって。それでサインをしてもらったのがこのレコードで。その時、彼に『やり続けろ』って言われて、すごく勇気づけられて。そこからずっとやり続けて、今がある。なので、『Wild Style』がきっかけになって、これでもっとケツを押されたっていう。

あと、やっぱりスクラッチといえばチェンビ(=「Change The Beat」)ですね。本当によく使っていて。けど、どうしてもレコードの溝が削れちゃうから、必ず2枚、3枚買いして、当時、何枚持ってたかわからないくらい。あと、チェンビはスクラッチの部分が曲の最後に入ってるから、最初に買ったセミオートのターンテーブルだと、レコードの最後のところで勝手に針が上がっちゃうから、擦れない(笑)。そんな思い出が蘇ってきますね。

DJ KRUSH Remix TVO - From 「The Motion Picture Soundtrack "TVO"」

これも映画のサントラなんですけど、このシングルにはMonday満ちるが歌っている曲のリミックスの他に、「Just Wanna Touch Her (Stoned Jazz Mix)」っていうインストの曲も入っていて。それまではラップのためのトラックを作るのがDJの仕事だと思ってたので、「インストってどうすれば良いんだろう?」ってすごく悩んで作って。

イギリスの雑誌『Straight No Chaser』の編集長のポール・ブラッドショウが誌面でこのレコードを紹介してくれて。そこから、Mo' Waxのジェームス・ラベルやTalkin' Loudのジャイルス・ピーターソンの耳にも届いて。さらに送ったデモテープがチャートに入ったので、彼らが「DJ KRUSHって誰だ?」って騒ぎ出して。ジャイルスからも誘われたけども、ジェームスは若かったのもあって、とにかく熱心で。それでとりあえずMo' Waxから出そうって。そこから、「Kemuri」や『Strictly Turntablized』が出来上がっていくっていう流れですね。

KRUSH POSSE(MURO等と組んでいたグループ)が解散して、「一人で何が出来るんだろう?」っていう状態だったのが、ラップに負けないような、ちゃんと世界観のあるインストを作っていけば良いんだって。そのきっかけを作った一枚ですね。

次ページ:「アナログ盤を出して、自分で作った曲で2枚使いやスクラッチをするのが夢でしたから。」

DJ KRUSH

DJ KRUSH
サウンドクリエーター/DJ。選曲・ミキシングに於いて抜群のセンスを持ち、サウンドプロダクションに於ける才能が、海外のクラブシーンでも高く評価されている。1992年からソロ活動を精力的に行い、日本で初めてターンテーブルを楽器として操るDJとして注目を浴びる。1994年に1stアルバム『KRUSH』をリリースし、現在までに10枚のソロ・アルバムと1枚のMIXアルバム、2枚のセルフリミックスアルバムをリリース。ソロ作品はいずれも国内外の様々なチャートの上位にランクイン。現在も年間、約30カ所以上のワールドツアーを敢行している。地域を越えて、多岐に渡り高い評価を得続けるインターナショナル・アーティスト。

取材・文:大前 至
写真:則常 智宏

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