フォトグラファーcherry chill will.を魅了したレコードジャケット

WRITER
大前 至

ジャケットデザインが気に入って購入するジャケ買い。デザインやアートの知識がなくても、本能に訴えかけてくる魅力がレコードジャケットにはあるが、ふとデザインやアートに精通している人が魅了された、もしくはジャケ買いしたレコードジャケットは何だろう? そんな疑問からスタートしたこの企画。

今回登場してもらうのは、今や日本のヒップホップシーンに欠かせない存在となっているフォトグラファーcherry chill will.。2月には、約10年間にわたって自ら撮影してきた、日本のヒップホップアーティストを中心とした初の写真集『RUFF, RUGGED-N-RAW The Japanese Hip Hop Photographs』を発表。各店で売り切れ続出するほどの人気を博した。彼は、独学で写真の技術を身につけたが、それ以前は、90年代のレコードブームを牽引したレコードショップ、CISCOにてスタッフとして働いていたというキャリアの持ち主でもある。

レコードショップの元バイヤーとフォトグラファーという二つの視点で、レコードおよびレコードジャケットの魅力を語ってもらった。

――本題に入る前に、元レコードショップのスタッフの目線から、良いレコードショップを見分けるポイントって何でしょうか?
昔だったら、店員の態度が悪いっていうのが、良くも悪くもひとつの基準でしたね(笑)。俺がCISCOに入ったのが1998年で、まだレコ屋が一番強かった時代だったんですよ。働く前にお客として行って、釣り銭投げられたこともありましたし(笑)。で、いざ、自分がCISCOに入ったら、「お客は俺らの情報を欲しがりに来るから、新譜の情報や過去音源もちゃんと網羅しろ、客に舐められるな」って先輩に言われて。その当時は視聴もできなかったから、お客も良いレコードを買うために店員と仲良くなろうとしてくるわけですよ。けど、そのバイブスが悪い奴は弾くみたいな(笑)。CISCOの上野店で働いてた時もよくお客と揉めたりしましたね。「てめえ、態度悪いな」みたいなことをお客に言われて。今はそういう店員さんがいたら速攻訴えられると思うけど(笑)。けど、当時はレコード屋のスタッフが一番偉い!みたいな、態度が悪い店員がいたら、良いレコードを買うために「俺はこういうのが好きなんです」っていうのをアピールしてました。

――今の若い人には、まったく理解できないような時代でしたね(笑)
もうひとつは頑固オヤジみたいな店主がいるところ。一枚視聴したら、「だったら、こういうのも聴いたほうが良いぞ」ってアドバイスしてくれた。親父の中学の同級生がラスタマンで、地元(青森県八戸)でレゲエのレコード屋をやっていて、中学1年生くらいの時に「レゲエを聴きたい」って親父に言ったら、そこへ連れていかれたんですよ。その当時、シャバ・ランクスとか流行っていたんで、ダンスホールレゲエを聴きたかったんですけど、その人は本気のラスタマンだから、「お前がボブ・マーリーを聴くまでは、他は何一つ売らない」って言われて(笑)。ボブ・マーリーってメジャーものだけでも結構な数のアルバムを出しているじゃないですか。それを毎月1枚ずつ買って、1年くらい経ってからようやく、ボブ・マーリー以外も買わせてもらえるようになりました。けど、その人の影響でルーツレゲエが好きになりましたね。

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cherry chill will.

cherry chill will.
1978年青森県八戸市出身。写真家。レコードショップCISCO RECORDSで1998年から2008年までスタッフ/バイヤーとして勤務。その後、独学で写真をはじめ2009年より本格的に活動を開始。ヒップホップ、レゲエの現場を中心に国内外のDJ/アーティストの来日ライブを多数撮影。またCDジャケットやアーティストフォト、スタジオセッションも多数手掛ける。ストリートファッション方面からの支持も受け 国内外のブランドカタログ撮影を担当するなど多角的に活動の場を広げる「現場叩き上げ」の写真家。

取材・文:大前 至
写真:則常 智宏

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