ジャズ・シーンのレジェンドであり、偉大なピアニストおよび作曲家/編曲家であるボブ・ジェームスにインタビューを敢行!(前編・後編公開)

WRITER
小川充

アール・クルーとの『One On One』(1979年)やデヴィッド・サンボーンとの『Double Vision』(1986年)でのグラミー賞受賞に、他のアルバムでもノミネートされた回数が数十回に及ぶジャズ・シーンのレジェンドであり、偉大なピアニストおよび作曲家/編曲家であるボブ・ジェームス。後にヒップホップなどのサンプリング・ソースとなる多くのレコードを生み出したCTIでは、自身のソロ作はもちろんアレンジャーとして数々のアーティストの作品に関わり、コロムビア傘下にタッパン・ジー・レコーズを設立するなどレコード・プロデューサーとしても名を馳せた彼の、実に12年ぶりとなるリーダー・アルバム『Espresso』が8月31日にリリースされた。それを記念して10月12日~15日にブルーノート東京、10月17日にブルーノート名古屋で来日公演が行われるほか、先駆けての9月11日に新宿ブルックリン・パーラーでのDJイベントに参加し、自身でも世界初となるDJプレイを披露した。そのDJ前のボブ・ジェームスに、アナログにまつわる話や新作のことなどを伺った。

――アナログ・レコードにまつわる話をいろいろ伺いたいと思います。この来日ではブルックリン・パーラーでレコードを使ったDJを行い、あなたのキャリアの中で初めてのDJになるということでもありますが、レコードには愛着がありますか?
日本はアナログの需要がとても高くて、レコード文化が発達している国だと思う。それは自分にとっても嬉しいことだね。私の新しいアルバムの『Espresso』をレコード会社のエヴォルーションがCDだけでなくアナログ盤でもリリースしてくれて、しかもとてもハイ・クオリティなプレスとなっているんだ。それは本当にありがたいことだよ。私自身、1970年代のLPの全盛期にCTIやコロムビアでレコードをリリースしてきたわけだけど、それらにはマスタリングの段階にまで関わっていて、いかにして高音質のレコードを作れるかということをやってきた人間なんだ。ヴァイナルの素材をどんなものにするとか、レコードの溝の深さをどれくらいにするとか、音をあまり詰め込みすぎないようにとか、そんな細部にも拘ってやっていたよ。そうやって仕上がったテスト・プレスをオーディオ・ストアに持っていって、最高のターンテーブル、最高のスピーカーがあるところで、実際に試聴することが本当に楽しみだったんだ。そうして出来上がったレコードを、みなが聴いて楽しんでくれているのを見ることも楽しみだった。今は音をコンパクトに凝縮したようなMP3音源を聴いている人が多くて、そこまで音質に拘わる意味があるのかなと思うこともあるけれど、自分にとってアナログ・レコードというのは本当に思い入れが深いものなんだ。

――現在はストリーミングが主流となりつつありますが、MP3などデジタルで音楽を聴くのと、レコードで音楽を聴く違いは何でしょうか?
30年前、40年前とかに今の質問をされていたら、たぶん違った答えになっていたかもしれないね。その質問の答えをする代わりに自分の現状について話をすると、残念なことに今の私は聴覚がかなり衰えてきていているんだ。人間だから年を取れば仕方のないことで、特に高周波の音が聴き取りづらく感じる。楽器でフルートとかヴァイオリンとかの音をきちんと聴き分けられるかは、その高周波の音を聴き分けられるかにかかってくるので、悲しいことに今の私には、そうした音は自分の記憶の中でしか聴けないんだ。実際のところ、もう少ししたら補聴器を付けなければならないかもと思っているくらいだよ。最近ミキシングをしたときも、私はパーカッションの音が少し足りないなと思ってミキサーのフェーダーを上げていったら、エンジニアがそれでは多過ぎると止めに入ったことがあってね。オーケストラのサウンドも、これだと思うものは記憶に頼らざるを得なくなっているんだ。だからアレンジャーとして仕事をするとき、そうした部分では不便さを感じることがあるね。現在はケン・フリーマンというエンジニアと一緒に仕事をしていて、彼が自分にとってメッセンジャーの役割を果たしていてくれて、私の頭の中で聴こえている音をイメージして、実際のレコーディングなどで補正や調整を行ってくれて、理想とする音に近づける作業をしてくれている。

 

後編:レコードに関するエピソード、リーダー・アルバム『Espresso』について

Bob James

Bob James
1939年アメリカミズーリ州生まれ。ピアニストおよび作曲家、編曲家、プロデューサー。
アール・クルーと共作した『One On One』(1979年)、デイヴィッド・サンボーンとの『Double Vision』(1986年)はグラミ-を受賞。他のアルバムでもノミネートされた回数が数十回に及ぶジャズ・シーンのレジェンド。
12年ぶりとなるリーダー・アルバム『Espresso』を8月31日にリリース。それを記念して10月12日~15日にブルーノート東京、10月17日にブルーノート名古屋にて来日公演が行われる。

小川充

世界中のレコードを、その手の中に
  • Google Playでアプリをダウンロード
  • App Storeからアプリをダウンロード

関連記事


新着記事

すべての記事をdig!