a flood of circle 佐々木亮介 インタビュー

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ジョー横溝

――亮介さんは新作のアナログも購入していると聞きましたが。
「そうですね。このチャイルディッシュ・ガンビーノ『アウェイクン、マイ・ラヴ!』は去年の盤です。

で、ニューリリースで買う意味に関しては、ほぼ趣味のレベルです。この『アウェイクン、マイ・ラヴ!』は割とクラシックな音、70年代のファンクを意識してるなっていうのが伝わってくるからアナログで買おうと思いましたね。それと、これレコード盤がホワイトビニールなんですよ。それが海賊版ぽくてなんか怪しいなと思ったのと、ジャケもカッコいいんで。家に置いときたいものは新譜でもアナログで買いますね。最近だと、例えばチャンス・ザ・ラッパーとか、フランク・オーシャンとか、俺アナログ買っちゃうんですけど、それはもうほぼコレクター的心理かもしれないです。音っていうよりは、ジャケだったり、あと、チャンス・ザ・ラッパーやフランク・オーシャンって基本CDをリリースせずにストリーミングでしかリリースしてないのにレコードは出すっていう戦略にハマったり(笑)」

――(笑)。ジャケットの話が出ましたが、佐々木亮介的ベスト・ジャケット・レコードを挙げるとしたら?
「部屋にその時聴いてるレコードを飾ってるんですけど…特に好きなのは、セウ・ジョルジっていう人がウェス・アンダーソン監督の『ライフ・アクアティック』っていう映画のサントラのために書いたアルバム『ライフ・アクアティック・スタジオセッションズ』のジャケットですかね。そのアルバムはポルトガル語でデヴィッド・ボウイの曲をガット・ギターの弾き語りでカバーしまくるんですけど、それが超ユルくていいんですよ。ジャケットも薄い黄色がバックで、本人がギターを担いでいるっていう。あと、俺ウェス・アンダーソンが一番好きな映画監督なので、このレコードはよく聴くし、つまりよく部屋に飾ってますね」

――それにしてもやはりポートレイトのジャケットかぁ…。
「“やはり”って?」

――この連載に出ていただいた、ピーター・バラカンさん、浜崎貴司さんの二人もベストジャケットにポートレイト物を挙げていて、“レコードジャケットはポートレイトに限る!?”という結論に至りつつあったので。
「確かにジャズとかブルースとかだいたいポートレイトものですよね。でも、最近だとそうじゃなくてもいいのありますよ。例えば、ベックの新譜はすごくジャケット凝りまくっていて。『カラーズ』っていうタイトルだから、全部入れ替えて自分好みに色をカスタマイズできるっていうやつで。それめちゃくちゃよかったですよ」

――ローリングストーンズの『女たち』的な感じでスライドして動かせる的なやつですか?
「そうそう。あれってCDじゃやっぱりつまんないじゃないですか。そういう細かい工夫ができるのはレコードのサイズだからっていうのはありますよね。ああいうのを自分のレコードでもやりたくて。あと、開いたら飛び出す絵本になるやつ!予算があったらですけどね(笑)」

――今年リリースした初のソロアルバム『LEO』は飛び出す絵本的な仕掛けはなかったですが、アナログでのリリースもしましたね。作り手として音を届ける時に、レコード、CD、配信とどんな使い分けをしているのですか?
「俺、面白ければなんでもいいんですよ。カセットテープでもいいし、CDでももちろんいいしっていう感じなんです。でもレコードの魅力って触れるってことですよね。俺もストリーミングで音楽も聴くし、それが今や当たり前になってきていますけど、結構味気ないなと俺は思ってて。そうじゃなくて朝起きて、棚からレコードを探して…。そうそう俺何のレコードが出てくるかわかんないようにしたくて、背表紙を色順に並べてるんですよ。ABC順じゃなくて。だからどこに何が入ってるかわかんないんですよ。で、なんとなくこの辺かな、今日聴くのはって選んでます」

――へぇ。
「触るとか、探すとか、なんか偶然が起きてほしいんです。ストリーミングって偶然が起きないじゃないですか。登録したものしか出てこないし、勝手におすすめしてくるし。厳密に言えばレコードも買ったものしか家にはないんですけど(笑)。ただ、レコードって探すことも含めて偶然性がより高いような気がしてるんですよね」

――確かに。
「例えば僕のアルバム『LEO』ってメンフィスのロイヤル・スタジオで録っているんですけど、このスタジオのことをネットで調べて語ったり、その音を聴くのはいくらでもできるけど、この時鳴った音はここに行かなきゃ絶対できなかったことで。これ、当たり前なんですけど、意外と凄い大事なとこで。だから『LEO』ももちろんストリーミングしてるんですけど、ストリーミングで聴く楽しみと、わざわざレコードで買って針を落とす楽しみってまた全然違うと思うんですよね。触れるってことの愛おしさ、ですかね、レコードって」

――確かに。どのレコードも愛おしいですもんね。
「例えば、これ、ジェームス・ブラウンのバンドの女性シンガーのアンナ・キングっていう人のレコードなんですけど、そもそもコレがオリジナルなんですけど、オリジナルからあんま出てないから、オリジナル盤を買ったんです。俺、初回盤とかUK盤みたいなこだわり全然ないんですけど」

――結構高かったですよね?
「これは高かったですね。って言っても1万円くらいだと思います」

――無料で音楽が楽しめる時代に足で探してしかも1万円払えてしまう、これって何なんでしょうね?
「俺は愛情表現だと思うんです。別にコレのために1万円ケチろうとも思わなかったし、買うのに迷わなかったし、高いとか全然思わなかったです。結局いつかこんな日が来ると思ってたんですよ、俺。これを誰かに自慢する日が来るって(笑)。別にプロモーションになるからとかじゃ別にないですけど、これが好きなのって他には代えようがないので。その分お金出さなきゃ買えないと思ったし。だから俺にとっては愛情表現ですよね。いいと思ったものに1票入れてるだけです。だってコレを誰かが買い付けて俺が買った店で売ってたわけで。その人のセンスはかっこいいと俺も思うし、その人の行為にも1票入れてる感じですし、そういう風に愛情を注ぎたくなりますよね、レコードって」

世界中のレコードを、その手の中に
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