「酒とレコードと男と女」お酒とレコードを楽しめるお店を巡る(第6回)

WRITER
ジョー横溝

TROUBLE PEACH


音楽と芝居の街・下北沢。その下北でミュージック・バーと言えば、ここ「TROUBLE PEACH」だ。
お店の歴史は通算45年。下北で時を過ごしたことがあるミュージシャン、役者のほとんどがこの「TROUBLE PEACH」に足を運んだことがあると言っても過言ではない歴史と物語が刻まれた老舗だ。

店のオーナーは中居 克博さん。現在、61歳。「TROUBLE PEACH」は下北沢ザ・スズナリ付近の古い建物が残る一角のかなりいい感じの古い一軒家の2階にあるが、1階にも「EAT A PEACH」というロック・バーがある。この「EAT A PEACH」に中居さんは18歳の時にアルバイトで入った。ところが、「EAT A PEACH」のオーナーが翌年、故郷に帰ってしまう。その時に電話の権利代だけでオーナーから「EAT A PEACH」を中居さんが譲りうけた。しばらくは1階で「EAT A PEACH」を営業していたが、2階に入っていた怪しいお店が退店したのを機に、親から100万借金をして開いたお店が「TROUBLE PEACH」だ。開店は1980年、中居さんが24歳の時だった。

お店正面横にある狭い階段を上がると、そこは桃源郷。照明や壁には煙草の煤がつくなど数十年の歴史との物語を背負った店内に中居さんがかけるレコードが鳴っている。店内にあるレコードの種類はブルース、ソウル、ファンクといった所謂ブラックミュージック以外。その理由を訊ねたら、「ブラックは専門にしているところには敵わないから」と教えてくれた。そして、中居さんの選曲でさまざまなレコードが流れる。60年代、70年代のロック黄金期のレコードはもちろんだが、意外なところでは80年代のカルチャー・クラブあたりもかかっていた。もちろん客からのリクエストにも応じてくれる。そして、元来ロック好きなお客からのリクエストにも応えているうちに、中居さんの所有レコード数は自宅とお店を合わせて1万枚を超えたという。中には当然のように貴重盤もあるそうだが「辞めたバイトが貴重盤を持ってちゃうんだよ(笑)。だから、貴重盤を店に置くのは嫌なんだけどさぁ(笑)」と、あまり気にしてない感じの中居さん。中居さんがとにかく素敵で、その話が面白い。
お店で出会ったミュージシャンとのエピソードはメディアでは知れないものばかりで、聞くほどにそのミュージシャンを好きになる。また、中居さんのロック談義は緩くてしかも核心をついていて、いつまでも聞いていたくなる。こんなに個性的なのにフラットな人はなかなかいない。この店が多くのミュージシャンに愛されてきた理由がよくわかる。

45年間も下北の地でレコードをかけ続けてきた中居さんの究極の1枚を聞いた。
お店の名前から察するに、てっきりオールマン・ブラザーズ・バンド「EAT A PECAH」かと思いきや意外な答えが返ってきた。「オールマン好き、サザンロック好きだと思われるんだけど、本当はボブ・ディランとザ・バンドが好き(笑)。でも、面倒だから、オールマン好きってことにすることも多いんだよね(笑)」と笑わせてくれた。
ディランの中でも『Planet Waves』に収録されている「FOREVER YOUNG」が究極の1曲なのだそうだが、最近ヘルニアの手術をして全身麻酔をしたら、少し人格が変わったそうで、人格変貌後の今の究極の1枚として「I Want You」が収録された『BLONDE ON BLONDE』を挙げてくれた。「麻酔から覚めたら、何だか人恋しくて「I Want You」のメロディが頭に浮かんだよねと」と優しい笑顔の中居さん。

それにしても“オールマン好きじゃないのに何故「TROUBLE PEACH」なんだ?”と思った貴方。お店の由来の話も面白いので、お店に行って中居さんに直接聞いてみてほしい。
また、中居さん、日本ロック界の実話をベースにした小説も執筆中。GW明けには出版の予定らしく、このお店での出来事も数々含まれているはずで益々このお店のファンが増えそうだ。

TROUBLE PEACH
☆住所: 東京都世田谷区北沢2-9-18 2F
☆営業時間:夜7時から朝7時まで
☆定休日:ほぼ年中無休
☆予算:2,000円~3,000円
☆音楽のジャンル:ROCK
☆レコード数:オーナーのレコード所有数は1万枚以上。

世界中のレコードを、その手の中に
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