
Tom Misch 『Geography』
こんにちは。
origami PRODUCTIONSの対馬芳昭です。
「origami PRODUCTIONSのファンに今聴いて欲しいレコード」
というテーマで執筆のお話をいただき、まず最初に頭に浮かんだのがこの1枚。
すでに世界中で大ブレイク中なので紹介するまでもない1枚ですが「念押し」の意味であえてチョイス。
トムミッシュ。
「サウスロンドンの風」と形容される彼のサウンドは、EDMやトラップといった現行のスタイルと対極にあるオーガニックなギターサウンド。
サブスクやSNSを巧みに使った最新の届け方を利用しながらも、デジタルよりもアナログが似合う心地よい1枚だ。
あっという間に世界中の音楽ファンに浸透した、と言うイメージもあるが、じっくり、しっかり、丁寧に着実に浸透していったともいえる。
デジタルだけどアナログ、あっという間だけどじっくり、この「対極にあるものを共存さる」彼のセンス。
この感覚は、今のアーティストの理想形。
それを正に体現している一人だと思う。
実際、1stアルバムリリースまで足掛け3年、サブスクリプションでシングルやEPリリースを重ね、徐々に音楽ファンにそのサウンドを浸透させていった。
また、Spotifyで自身のお気に入りを集めたプレイリスト「Real good shit」を展開しているのだが、そこにはどんどん曲が溜まっていき、もう数百曲が収められている。
そのプレイリストにある日突然、我々origamiのアーティストKan Sanoの楽曲がチョイスされているのを発見し、Kan Sanoから即お礼のメールを送った。すると本人からも「尊敬している」というシンプルな返信が。
そして2019年5月27日、初の単独来日公演、さらに韓国ソウル公演にトム自身から声がかかりKan Sanoがオープニングアクトとして出演を果たした。
国籍、人種、年齢も飛び越え、ネットを通じ共感するアーティストをどんどん巻き込んでいく彼の行動力には脱帽だ。
実はこのコラム、Kan Sanoがお客さんを温め、あと5分でトムが登場するスタジオコーストの中で書いている。明らかに本人チョイスだろうと思える心地よい転換BGM、今か今かと待ち構える音楽ファンの熱気。この臨場感の中で書くと何かマジックが起きるかも、と期待しつつキーボードを叩いている。
ぼちぼちバンド登場の時間だ。
お、It Runs Through Me!
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さて、ライブ終了。
ドラム、ベース、ギター、鍵盤、パーカッション、バイオリン、サックスという豪華な編成で見事に録音物を再現するスキル!
完全にやられました。
非日常を楽しむような「ガンガン盛り上がってナンボ!」というライブももちろん悪くないけど、まるで料理、洗濯みたいな日常の延長にライブがあるようなトムミッシュのパフォーマンスは40代半ばの自分には無理なくしっくりくる。
瞬間の盛り上がりは、まるで二日酔いの様な披露感や脱力感というリスクも抱えているが、トムミッシュのライブはそれを感じさせずにシームレスに日常へと戻っていける。
レコーディングされたサウンドを無視したライブならではのアレンジを施すスタイルも好きだが、忠実に再現された音にグッとくる事が多い自分としては、大満足のパフォーマンスだった。
バンドのアンサンブルが分離良く響きつつも、1つの塊として押し寄せてくる感じ。
これも正に「対極の共存」だ。
この会場の感覚を体が覚えている間に帰ってまたレコードの針を落とす。
その瞬間の空気をパッキングして時間と空間を超えて再現できるのが音楽の最大の魅力。
この場所で聴いた時の新たな想いをまた積み重ね、レコードはどんどん重い(想い)モノへと変化していく。
同じ一枚でも、僕のそれとあなたのそれは、きっと違う一枚なんだと思う。
「同じ」でも「違う」。
ここにもまた、「対極の共存」がある。
Tom Mischのレコードは以下よりチェックして下さい。
http://www.soundfinder.jp/search?keyword=Tom+Misch
【origami PRODUCTIONSのファンに今聴いて欲しいレコード】
Barrington Levy 「Looking my love」
NxWorries 「YES LAWD!」
origami PRODUCTION
2006年、渋谷界隈のセッション箱で繰り広げられていたジャンルレスで世界レベルの東京ジャムセッションムーブメントに魅せられたYoshi Tsushima がビクターエンタテインメントを退社し、2007年にレーベル発足。渋谷ジャムシーンのアーティスト 30人を集めたバンド “JAMNUTS” のアルバムがヒット、その後メンバーが続々とソロアルバムをリリース。ネットを通じ国内のみならず世界中で話題となり、その独自のたたずまいと型破りで自由なレーベルのスタイルが多くの音楽ファンから支持される。現在は Ovall (Shingo Suzuki、mabanua、関口シンゴ)、Kan Sano、Michael Kaneko、Hiro-a-keyが所属。そして 45 a.k.a. SWING-O、thirdiq (渥美幸裕)、Conguero Tres Hoofers、laidbook、竹内朋康など 数多くのアーティストがアルバムをリリース。所属アーティストは FUJI ROCK FESTIVALをはじめ各地のフェスの常連となると共に、メジャー/インディーズ、国内外問わず数多くのアーティストをプロデュース、リミックス、演奏でサポートしている。