さて第一回はThe Isley Brothers(以下アイズレー)の第二次黄金期前夜のこの作品紹介でいこうと思います。この盤はDJがみんな大好きA-4「Work To Do」が収録されていることで有名ですね。ファンキーなA-5「Pop That Thing」はのちのアイズレーファンクの雛形のような曲でもあり、かつ当時スマッシュヒット(全米Hot100で24位)したので、そこらへんにスポットがあたりがちなんですが、俺が注目したいのはこのアルバムにCarole Kingのカバーが3曲入っているという点です。
A-1 「Brother, Brother」
A-3 「Sweet Seasons」 (以上2曲は from 『Music』1971)
B-1 「It’s Too Late」 (from 『Tapestry』 1971)
アイズレーが白人曲を積極的に取り上げるのはこれが最初ではありません。そもそもこの一つ前のアルバムが白人曲ばかりをカバーしたアルバム(『Givin It Back』1971年)でした。そこからStephen Stills「Love The One You’re With」のカバーがスマッシュヒット(全米Hot100で18位)となり、味をしめたんでしょうか(笑)? アメリカでレコード(CD)が売れるということは基本、白人も買ってくれることを意味します。ひょっとしたらレコードを買ってもらうための「企画」として始めた「白人曲カバー」だったのかもしれません。
「Summer Breeze」1973年(Original : Seals & Crofts 1972年)
「Don’t Let Me Be Lonely Tonight」1973年(Original : James Taylor 1972年)
などはオリジナル越えと言っていい素晴らしいカバーです。この2曲も「Love The One You’re With」も俺自身ライブで時々演奏しますが、その際の参考音源は大抵アイズレーです。なんならばアイズレーオリジナルと勘違いしてる人も多いかもしれませんね。
「It’s Too Late」 by The Isley Brothers 1972
では最後にこのアルバムに戻りまして、B-1「It’s Too Late」に針を落としましょう。この、Carole Kingの印象的なピアノリフを一切やらずに、スローファンクな形で始まります。そしてChris Jasperのあのアルペジオなピアノと共に官能的にRonald Isleyがサビを歌い出す……ああ気持ちいい! ずっと聴いてたい!と思ったらなんと10分31秒もあるんです! Ernie Isleyのギター、あの「Summer Breeze」を彷彿とさせる音色でギターソロが随所に挟まれる……。いやほんと気持ちいいカバーです。その後には次作収録の「Highway Of My Life」の原型ともいうべきバラード「Love Put Me On The Corner」が待っています。