渋谷レコードさんぽマップ

WRITER
山本将志

奥様、聖地を巡り中古レコ屋のビジネスモデルに気付く

奥様「6万円のコートが届いてしまいました…。」

なんて目覚めのよい言葉でしょう。眠気なんて簡単に吹き飛びます。

奥様「展示会で付けていたものが、届いてしまいました…。」

夫「かわいいじゃん。早く冬になるといいね〜。」

と、これは表向きの声。心の声は「どこにそんなお金が? 問題の先送りカード(クレジットカード)を使った? 俺なんて何年同じコートを着てる。 そのお金で何か家電とか買えたのでは?」などなど決して声に出せない声が頭のなかで鳴り響きます。そんな9月の土曜日の朝です。今日は、この「レコードさんぽマップ」の連載第2弾の取材のため、渋谷に行く予定でしたが、朝から思いがけないスタートです。我が家の財布は、本日マイナス6万円のスタートとなりました。

夫「前回の下北の回が、けっこう評判良かったみたいで、第2弾をやらせてもらうことになりました!」

奥様「わたし、読者の人からしたら鬼嫁みたいに思われたんじゃない?」

夫「そんなことないよ。一般的な女性のレコードに対する考えが知れて面白かったよ。なので、今日もお力添えよろしくお願いします。今日はレコードの聖地渋谷です!」

奥様「行きたいところがあります!パンチョに行きたい。」

夫「(聖地に関してはスルーなのですね)ナポリタン屋さんの?」

奥様「そう、1回行ってみたかったの。」

というわけで、渋谷駅から徒歩1分のパンチョで腹ごしらえをしてレコードさんぽ渋谷編をスタートしました。

1軒目
disclandJARO


1973年から続くジャズ・レコード専門店。店内には高額のレコードがたくさん。

夫「今日の1軒目はここです。一度行ってみたかったんだ。歴史あるジャズ専門店」

古い喫茶店の入り口のような扉を開けて少し急な階段をそろりそろり降りると、わずか3坪の店内にレコードがびっしり。中央には、店主のカウンターが。店主はノートパソコンを開きながら誰かと電話していました。

夫「……(店内をキョロキョロ)」

奥様「……(店内をキョロキョロ)」

店主「Windowsの右上の……」

夫「……(とりあえず日本のジャズを物色)」

奥様「……(店内をキョロキョロ)」

店主「Windowsの右上の……」

奥様「マッチかわいいね(すごい小声)」

夫「ジャズ喫茶のかな、かわいいね(すごい小声)」

店主「Windowsの……」

奥様「すごい! 約30万円のレコードがあるよ(すごい小声)」

夫「ねっ、すごいね!(すごい小声)」

外に出ると、今まで息を止めていたかのように、大きく呼吸して、

奥様「お店もかわいかったし、お父さんもかわいかったね。パソコン作業、困ってたようだったから手伝ってあげればよかった。」

2軒目
FACE RECORDS


今年創業25周年を迎える。また、新たにニューヨークでも店舗を展開。

夫「ここはね、シスコ坂って言って、昔CISCOっていう超有名なレコード屋さんがあったんだよ。このあたりは、とくにレコードの聖地なんだよ。」

奥様「ここのカフェ行ったことある〜。そこのカフェも。」

夫「CISCO坂でファッション誌のスナップ撮られるのが夢だったな〜。撮られたことないけど。」

奥様「ここの居酒屋も美味しいよ。」

DJが通い詰めたシスコ坂も、人によってはごはん屋さんの思い出の場所になるギャップ。人によって同じ場所でも違う景色に見えるんですね。少しの気を取り直してFace Recordsに入店。

奥様「スヌーピーのグッズとかもあるんだね。」

夫「そうそう。このお店の25周年記念でコラボしてるんだよ。」

奥様「へぇ〜、かわいいね。あっ、このレコードもかわいいよ。」

奥様が手にとったのは、松任谷由実の『ノーサイド』。金ピカのジャケットが印象的のこの作品。デザインは、ピチカート・ファイヴやミスチルなどのジャケットも手がけたアートディレクター信藤三雄。数あるレコードのなかからこれを選ぶなんてさすが!

夫「聴いてみる?」

奥様「聴けるの?」

夫「うん、だいたいのレコードは聴けるはずだよ。」

奥様「どのお店もそうなの?」

夫「うん、だいたいは聴ける。」

奥様「すごいね。でも今回はやめとく(笑)。」

3軒目
HMV record shop 渋谷


独自企画の限定盤商品やレコード関連グッズも含め、約9万点を展開する大型店。

夫「近くにHMVあるから寄っていい?」

奥様「なくなったんじゃないの?」

夫「それってセンター街のHMVの話でしょ? 一回閉店して、別の場所に復活したんだよ。」

HMV Recods Shibuyaに入店すると、

奥様「この人、さっきのお店でもよく見たよ。」

夫「大貫妙子ね、人気なんだよ! とくにDJに人気で、リバイバルしてる。ぼくの好きな東京日和の映画のサントラで歌ってる人。」

奥様「あ〜、あの歌の人か。カセットテープも売ってるんだ? かわいい。」

夫「カセットもちょっと前から人気だよ。サイズ感、おもちゃっぽくていいよね。カセットデッキもかわいいくない?」

奥様「うん、かわいい。あとこれはレコードを聴くやつなの?」

夫「うん、小さいけどレコードプレーヤーだよ。持ち運びできるようにそのサイズなんだよ。」

奥様「これくらいのサイズだったら家に置いてもいいけどね〜。」

聞く耳を持たなかった奥様にしては、すごい前進! 少し欲を出してみる。

夫「でもやっぱり持ってるタンテ(我が家に置く場所がなく友人に預けてある)で聴きたいな…」

奥様「あれは大きすぎだよ。置く場所ないじゃん。部屋が広かったらいいんだけどね。」

そう、レコード収集を続けるための壁として大きく立ちはだかるのが部屋のサイズという物理的問題。以前、Casa BRUTUSで『音のいい部屋。A ROOM WITH SOUND』という有名人の部屋と音響設備を紹介する特集があったので買って奥様に見せたところ、

奥様「これは、部屋が広いからカッコいいと思うわけで、狭い部屋に置かれてもね〜。」

なるほどな、日本の住宅事情もあるわけですね。さらに子どもができたら、子どもの物も増えるのに対し、住居のスペースは限りがある。つまり、世のお父さんたちは泣く泣く手放したレコードたちがあるんだなと気付かされました。

4軒目
TOWER RECORDS


渋谷のランドマークタワーのひとつ。全音楽ファンにとっての聖地でもある。

夫「さすがにタワレコには、行ったことがあるよね?」

奥様「うん、ある。学生のとき行ってたよ。新宿が多かったけど。」

夫「ちなみに、初めて買ったCDって何だったの?」

奥様「Jリーグのオーレーオレオレオレーのやつ。小学生のとき大好きだったの(笑)。」

夫「意外(笑)。」

奥様「タワレコのなかにカフェもあるんだね。本もたくさん。こんなフロアあったっけ?」

夫「2012年にリニューアルしてできたんだよ。本が多いから資料探しに重宝してる。それに雑貨もあるし、音楽好きじゃなくてもこのフロアは楽しいと思うんだよね。」

奥様「今日気付いたことがあるんだけど、高いレコードがあるじゃん。レコードを安く買って高く売れば商売になるね。」

夫「……。それが中古レコード屋さんのビジネスモデルだよ(笑)。だからお義父さんの部屋とかにお宝が眠ってるかもしれないね。じゃあ今日は帰りますか?」

奥様「そうだね〜。あっ、渋谷までせっかく来たから、ユニクロであなたの服を仕入れようよ。秋物買わないと服ないでしょ!」

次ページ:渋谷レコードマップ(宇田川・神南エリア)

取材・文:山本将志
イラスト:Yuki Fujita

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