妄想企画 ジャズレコードに潜む愛すべきスタンプたち (第3回)

WRITER
大塚広子

普通なら素通りしてしまうようなイラストやロゴ。大真面目に聴くようなジャズ盤に限って、そんな部分にニヤッとすること、実は結構あります。知っている人だけしか分からない、こんなニッチなスタンプあったらいいな。という、妄想企画。内容も存在感も太鼓判も愛すべきレコードを、前回に引き続きご紹介していきます。

今回のテーマは、ユニークなイラスト。“DJあるある”では、子供ジャケにアタリが多い…というのは本当かどうかはさておき、ヘタウマな味のあるイラストにちょっとピンとくること、ないですか?

まずは、こちら。
Cecil Payne / Zodiac (The Music Of Cecil Payne)

1971年にスタートしたジャズ・レーベル、ストラタ・イースト。なかでも、本作は、エリック・ドルフィーに捧げたシリーズ作、DOLPHY SERIES からの作品です。ストラタ・イーストは、ミュージシャンがオーナーやプロデューサーとして楽曲の権利を保有できるという、当時としては画期的なレーベル。アフリカ系アメリカ人公民権運動を背景に、黒人ミュージシャンの真の自立を目指したレーベルで、内容も存在感も圧倒的にインディペンデント。わたしもこのレーベルがきっかけでジャズにのめり込んだので、大好きな作品ばかりなのですが、この作品の裏面を見て、さらにグッときました。

このイラスト、ジャズ・サックス奏者であるクリフォード・ジョーダンの娘、ダナ・ジョーダンちゃん(当時13歳)が描いたもの。クリフォード・ジョーダンは、本作のサブレーベル、DOLPHY SERIES からもリーダー作をいくつか出していて、その中にも、彼女のアバンギャルドなエッチングが施されたジャケットが確認できます。大人になったダナちゃんは、お父様の後期作品やジョン・ゾーンの作品にも、スピリチュアルなヴォイスを提供していたりもして、彼女のクレジットがあるところには良作あり、というナイスな存在。

もちろん、この『ZODIAC』、内容も抜群です。セシル・ペイン(bs,as)、ケニー・ドーハム(tp)、ウィントン・ケリー(p)といった一流ジャズマンのハードバップ・セッションで、重みのあるファンクなリズムでソロをとっているパートもあり、とてもクールです。

次は、こんなイラストも発見。
Jocque & Le Scott / The Ornette Coleman Songbook

オーネット・コールマンのソングブック集ということで目についたのですが、それだけでは、きっと買わなかったと思います。決めてはこのイラスト(笑)。まさにジャケ買いです。内容は、オーネット・コールマンの曲をバックにポエトリー・リーディングするという企画もの。ブラックネスなフィーリング漂う雰囲気が先行し、音楽として評価されるかどうかはさておき、ドープでファンクなパーカッションがチラつく楽曲もあるので、トラックメーカーやDJの味付けにいかがでしょうか? 決して、オーネット・コールマン入門としてはオススメしません(笑)。

次はこちら。
Child's Play / Child's Play

「どんな夏休みを過ごす?」というタイトルがついている、このジャケット。内容は、プログレッシブ・フュージョンです。 チャイルド・プレイというのは、バンド名で、バージニア州リッチモンド出身の白人4人組バンドです。アコースティック・ピアノ、エレクトリック・ベース、ギター&シンセ、ドラムによる編成で、1979年録音。おそらく彼らの唯一の作品でしょう。ノースカロライナ州の小さなレーベルからリリースされています。でも内容はなかなか良くて、ジャズダンサーたちに喜ばれる高速フュージョン&ジャズ/ファンク・ナンバーも収められています。この手のジャケットの彼らの二作目もぜひとも見たかった気がします…。

最後は、日本から。
キングコング・パラダイス / あつさもさむさも…

東北のジャズ喫茶「ジョニー」がオーガナイズするレーベル、ジョニーズ・ディスクからの1984年作です。1970年代から福生の米軍基地を拠点に活動していたロック・バンド、キングコング・パラダイスが、メジャーで2作リリースしたのちに、リリースした作品がこちら。レゲエ調の楽曲を交えた80年代の実験的サウンドで、なかでもプリミティブな打楽器やヴォイスが繰り出される「Fujiyama」はミニマルテクノとの相性も良く、個人的にもよくプレイしているナンバー。現場でかけるときは、このジャケット、レコードバックからわざとらしくチラ見せさせてます(笑)。

ジャズ喫茶ジョニーは現在2店あり、レーベルオーナーの照井顕氏が盛岡で営む「開運橋のジョニー」と、開店当時のまま陸前高田の地に残る「ジャズタイムジョニー」とがあります。レーベルオーナー、ジョニー氏は、秋吉敏子など第一線のミュージシャンのライブ招聘なども手がけ今も現役で活動しており、ジャズタイムジョニーの方は、照井氏の前妻、由起子さんが営み、東日本大震災の後も仮設住宅で営業を続けています。2019年にはようやく代替となる土地が国から提供され、新たな店舗での再スタートが期待されています。ジャズという文化が発端となり、震災を経て地元の方を支える場としてもさらに大きな存在となったジョニー。現在も復興の実行委員会は、「どんなに小さくとも店を存続させるよう一同で頑張っています」とメッセージを寄せています。

大塚広子(DJ/音楽ライター/プロデューサー)

大塚広子(DJ/音楽ライター/プロデューサー)
ジャズをメインにDJ歴約20年。アナログレコードにこだわったレアグルーヴ、和ジャズの音源発掘から、現代ジャズまで繋ぎ、ワン&オンリーな“JAZZのGROOVE”を起こすDJ。徹底したレコードの音源追求と、繊細かつ大胆なプレイで全国的な現場の支持を得て、ニューヨーク、スペインの招聘、東京JAZZ、2度のFUJI ROCK FESTIVAL、Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN等出演。クラブシーンのみならず老舗ジャズ喫茶やライヴハウスで、評論家やミュージシャンとのコラボレーションを積極的に行い、柔軟なセンスで音楽の楽しみ方を提示している。DJ活動の他、メディアでの執筆、選曲監修、伊勢丹新宿店など企業音楽プロデュースや、新世代ミュージシャンを取り上げた自身のレーベルKey of LIfe+を主宰。プロデュース・ユニット(RM jazz legacy)のディレクション、リリース活動なども行う。
HP: http://djotsuka.com

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