再ブームを迎えている「ターンテーブル」。オーディオ機器はどこまで進化したか?

WRITER
ジェイ・コウガミ

今、ターンテーブルが再び熱い視線を集めている。

レコード文化に詳しい方からしてみれば「ターンテーブルが盛り上がっている」の議論は、今回が初めてではないはずだ。SL-1200の製造を2010年に止めたTechnicsが2016年に製品開発を復活させたように、シーンの中にターンテーブルは常に存在してきた。

とは言え、音楽を聴いたり楽しむ昨今のライフスタイルは目まぐるしく変わっている。SpotifyやApple Music、Amazon Music、YouTube Musicといった音楽ストリーミングの台頭があり、EchoやGoogle Home、Sonosなどのスマートスピーカーも登場。さらにはAirPodsに代表されるBluetoothイヤホンやヘッドフォンも充実して人気を博している。

こうした状況は、レコード・シーンの人気拡大を後押ししている。2000年代から始まったレコードの需要は、かつて音楽を聴いていた年配層のレコード回帰を軸にして生まれた。2010年代後半に入り、デジタルテクノロジー化に慣れ親しんだ2010年代の音楽リスナーたちまでを徐々に取り込もうとしているのだ。

近年、SpotifyやApple Musicで人気のアーティストがレコードでリリースされたり、2000年代以降のロックやヒップホップなどの名盤がレコードで再発されたりする流れが強まっている。ストリーミングで聴き親しんで、次にはレコードで音源を買いたいというファンが生まれているのは確かで、作品を手がけるレーベルもそこに需要を見出し始めている。

そのような消費事情がある中で、新たな需要が高まっているのがターンテーブルだ。先日、1月にアメリカ・ラスベガスで開催された毎年恒例の次世代家電の展示会「CES」では、多数のオーディオメーカーが新しいターンテーブルのお披露目や、プロトタイプの展示を行ったことで、メディアから大きな注目を浴びた。

今回はCESで発表された新しいターンテーブルの紹介しつつ、変化のポイントに焦点を当ててみたい。

ソニーPS-LX310BT

(PS-LX310BT_2)

ソニーが発表した「PS-LX310BT」は、Bluetooth接続でヘッドフォンやイヤホン、スマートスピーカーにレコードの音を飛ばしてプレイできるターンテーブルだ。通常のケーブル接続でオーディオシステムに接続して使用もできるが、アンプを用意しなくてもレコードを手軽に楽しむことができる。アルミ素材のトーンアーム、アルミダイキャスト製のプラッターを採用し再生の安定を図っている。Bluetooth経由でのデバイス接続はターンテーブルのペアリングボタンを利用する。

レコードが好きで再生したいけれど、アンプやオーディオシステムを揃える準備ができていない、お金を使いたくないというビギナーにはオススメだ。

オーディオテクニカ

オーディオテクニカはCESでターンテーブル7製品をお披露目した。DJ、クリエイター向けには、USB出力機能を備えて、レコード再生をリアルタイムでデジタルファイルに保存できるダイレクトドライブ型の「AT-LP120USB」が発表された。


(AT-LP120USB)

ライトなレコードリスナー向けには、「AT-LP60X」「AT-LP60XUSB」「AT-LP60XBT」「AT-LP60XHP」の4つ。それぞれ特徴が異なり、USB出力やBluetooth接続、ヘッドフォンアンプ搭載と、シチュエーションや用途別に使える仕様が用意されているので、自分に合ったターンテーブルを選ぶことができる。


(AT-LP60XHP)

価格も99ドルから149ドルと手の届きやすい設定というところも魅力だ。

ヤマハMusicCast Vinyl 500


(MusicCast Vinyl 500)

ヤマハが公開していたターンテーブル「MusicCast Vinyl 500」は、ヤマハ独自の無線ネットワーク機能「MusicCast」を使って、自宅のWIFIネットワークに接続して、レコード音源をスピーカーやアンプに飛ばして再生できるターンテーブル。

Bluetoothと違いWIFIを使うので、より良い音質での再生が可能になる。勿論、Bluetooth、AirPlay、Spotify Connect接続にも対応しているので、対応するヘッドフォンやイヤホン、デバイスでも再生することができる。

音質にも拘りたいが、オーディオケーブルの接続やシステム設定の手間が面倒に感じるリスナーにとって、従来のターンテーブルのデザイン性と、手軽さを両立しているこの製品は注目しておきたい。

McIntosh、Technicsの高級ターンテーブル


(McIntosh MTI100)

ここまでは比較的、ライトユーザー、レコードビギナー向けのターンテーブルを取り上げてきたが、ハイエンドなターンテーブルも進化しているのが見逃せない。

老舗オーディオブランドMcIntoshが発表した「MTI100」は、真空管プリアンプや、D級パワーアンプ、ヘッドフォンアンプ、フォノアンプ、スピーカー出力端子、サブウーハー出力端子とあらゆる出力ユニットが内蔵されている。


(McIntosh MTI100_2)

「MTI100」の素晴らしいところはターンテーブルでもありアンプでもあることろで、2役を一台でこなしてくれる。良い音や迫力ある音をあらゆるデバイスで楽しみたい人には満足度の高い設定で、トーンアームの横に見える緑のプリアンプは視覚的なインパクトも絶大だ。

さらにBluetoothレシーバーとしても機能するため、スマートフォンから音源を無線で送り、ヘッドフォンやMTI100とつないだスピーカーで再生することもできるようになっている。

文字通り、高級オーディオ(販売価格は6500ドル)だ。だが、ただレコードを鳴らすためのターンテーブルという域を超えて、1台であらゆる音響機器をつなぐことができるMTI100もまた、ターンテーブルの進化系と言えるだろう。


(Technics SL1200mk7)

最後に、Technicsが発表した「SL-1200 MK7」を紹介したい。ここ数年はハイエンドな高級路線だったTechnicsだが、S字トーンアームやピッチコントロールなどを標準装備したクラシックなSL-1200の後継機をついに投入してきたことは往年のTechnicsファンやDJにとって嬉しい知らせだ。

変更された点としては、スピードボタンを長押ししながら再生ボタンを押すと逆回転する「リバース・プレイ」機能が新たに搭載された。

また、スタイラスLEDが赤から青に変更が可能になり、ケーブルが脱着可能になった。全体の重量が前モデル(MK6)の11.7kgから9.6kgと大幅に軽量化されている。値段は1200ドルと予定されている。

これらの新製品から見られるのは、レコード人気が活性化している昨今のシーンにおいて、ターンテーブルは現代のリスニング環境に適応するため、テクノロジーが次々と組み込まれているという一つのトレンドだ。

特にBluetoothやWIFIといった「無線接続」機能でのレコード再生は、これからレコードを嗜みたい新しいリスナーや、自宅のオーディオ環境をミニマルに留めたいリスナーにアピールするためのポイントとなっていることは確かだ。

世界的に拡がるレコードカルチャー人気によって、ターンテーブルというレガシーなオーディオ機器もまた進化し続けている。

ジェイ・コウガミ(デジタル音楽ジャーナリスト、「All Digital Music」編集長)

ジェイ・コウガミ(デジタル音楽ジャーナリスト、「All Digital Music」編集長)
世界の音楽テクノロジーやビジネス、音楽業界のトレンドに特化した取材・執筆・リサーチ活動を行う音楽ビジネスメディア「All Digital Music」編集長を務める。海外の音楽カンファレンスを現地で取材するなど、グローバルな視点からクリエイティブとビジネスを横断した取材を国内外で数多く行っている。これまでWIRED.jp、Real Sound、オリコンなどオンラインメディアや経済メディアでアーティストや経営者、起業家のインタビューや業界動向の寄稿記事を手がける他、サービスや市場データに関するコンサルティングや講演も行う。

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