1680万枚のレコードが1年で買われる世界最大の音楽大国に何が起きているのか

WRITER
ジェイ・コウガミ

米国の音楽ファンが2018年、購入したアルバム・レコードの数は1680万枚だった。

今回はこの「1680万枚」という数字を軸に、2018年で米国のレコード人気がどれほどの規模で伸びているか、音楽業界全体を見てみたい。

米国リサーチ会社ニールセンが発表した2018年の音楽消費レポートによれば、「1680万枚」は、2017年の売上枚数から更に15%増加。また、1991年以降米国で1年に購入されたレコード枚数では最大だった。そして、2018年の実績によりレコードの売上枚数の伸びは、13年連続でプラス成長を達成して、かつてないほど右肩上がりを続けている。

レコード、CD、ダウンロード、カセットによるアルバムの売上枚数を合計した中で、レコードは1割を占めている。購入されたアルバムの合計は1億4100万枚だった。そのうち、11.9%の1680万枚がレコードだったのだ。2017年は6.5%だったので、倍近く増えている計算になる。レコードとCDとカセットを合計したフィジカル・アルバムではレコードの購入率は19.1%を占めた。2017年に記録した14%からさらに増えているのだ。

アマゾンよりもレコードを売っている独立系ストア

興味深いデータも明らかになった。ECサイトやネットストアからの購入枚数は689万枚だったが、レコードストアでの購入の方が多いという数字が分かっている。ECサイトにはアマゾンも含まれるというから驚きだ。最もレコードが購入された場所は、独立系レコードストア。購入された1680万枚のレコードのうち、全体の41.1%の690万枚がレコードストアで買われた。2017年は600万枚だったことから、1年で15%も増えたこととなる。

米国で2018年、最もレコードバイヤーから人気を集めたアーティストはザ・ビートルズ。32万枚以上のアルバムがレコードで購入された。人気だったのは『アビーロード』、次いで『ホワイトアルバム』『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』という順になっている。これらのレコードは全てが最新リリースまたはカタログの復刻リイシューが対象だ。セールスのトップはリイシューが大多数を占めている。トップ10入したレコードの中で、2018年リリースの作品はパニック・アット・ザ・ディスコの最新作のみだった。

2018 米国レコード売上枚数トップ10
1.『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: 最強 Mix Vol. 1』サウンドトラック 84,000
2.マイケル・ジャクソン『スリラー』 84,000
3.フリートウッド・マック『噂』77,000
4.ザ・ビートルズ『アビーロード』76,000
5.プリンス・アンド・ザ・レヴォリューション『パープル・レイン』71,000
6.ピンク・フロイド『狂気』67,000
7.ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ『レジェンド』61,000
8.クイーン『グレイテスト・ヒッツ』60,000
9.エイミー・ワインハウス『Back to Black』59,000
10.パニック・アット・ザ・ディスコ『Pray for the Wicked』59,000

2017年に購入されたレコードも振り返ってみたい。ザ・ビートルズやプリンス、ボブ・マーリー、ピンク・フロイド、マイケル・ジャクソンは、例年人気のアーティストだが、それ以上にサウンドトラック人気が目に留まる。

2017 米国レコード売上枚数トップ10
1.ザ・ビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』72,000
2.ザ・ビートルズ『アビーロード』66,000
3.『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: 最強 Mix Vol. 1』サウンドトラック 62,000
4.エド・シーラン『÷』62,000
5.エイミー・ワインハウス『Back to Black』58,000
6.プリンス・アンド・ザ・レヴォリューション『パープル・レイン』58,000
7.ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ『レジェンド』49,000
8.ピンク・フロイド『狂気』54,000
9.『ラ・ラ・ランド』サウンドトラック 49,000
10.マイケル・ジャクソン『スリラー』49,000

人気トップ10のレコードのランキングを見ると、ロックが強いことが分かるはずだ。一方で音楽ストリーミングで強いヒップホップや、世界的に急成長しているラテンアーティストは、トップ10には入っていないことが特徴的だ。一方、若者音楽リスナーに人気のエド・シーランの『÷』やケンドリック・ラマーの『DAMN.』、また1998年生まれの若手R&Bシンガーのカリードの『American Teen』もトップ10入りはならなかったものの、人気を集めた。

2018年、米国で開催された毎年恒例の「レコード・ストア・デイ」の継続した成功によって、4月のイベント開催週(4月20日~26日)では、1週間のレコード売上は、レコード・ストア・デイが始まって以来、過去最高となる73万3000枚が購入された。

さらに、米国ではクリスマス商戦が最もレコードが購入される時期として定着している。この時期にはレコードだけでなく、ターンテーブルやアクセサリー、グッズも同時に多く買う人が増える。

つまり米国でのレコード復活は、「レコード・ストア・デイ」から生まれた勢いと興味関心が波及し、米国人の音楽消費に影響を与えている。今では、米国の音楽シーンで成長している音楽フォーマットは、音楽ストリーミングとレコード、カセットだ。最新のテクノロジーと、旧来の音楽フォーマットが同時に人気を集めているという過去に前例のない時代が来ている。

このようなレコード購入の関心の高さと、数字の成長から考えると、レコード文化は今、昔からのコレクター層と、新しくレコードを音楽媒体として発見した若者リスナー層との融合が始まっているとも考えることができる。

なお日本に目を向けてみると、2017年の記録だが、1年間のレコード売上枚数は2001年以来16年ぶりに100万枚を超え、106万枚が買われている。2016年が80万枚であったため、前年比133%も成長している。

世界規模で同時多発的に起きているレコード人気はもはや本物だ。そして、以前はコレクターだけからの需要で存在していたレコードは、2010年代後半には音楽産業の中でも成長分野として、ファンや音楽シーンから求められるフォーマットに変化し始めているのだ。

ジェイ・コウガミ(デジタル音楽ジャーナリスト、「All Digital Music」編集長)

ジェイ・コウガミ(デジタル音楽ジャーナリスト、「All Digital Music」編集長)
世界の音楽テクノロジーやビジネス、音楽業界のトレンドに特化した取材・執筆・リサーチ活動を行う音楽ビジネスメディア「All Digital Music」編集長を務める。海外の音楽カンファレンスを現地で取材するなど、グローバルな視点からクリエイティブとビジネスを横断した取材を国内外で数多く行っている。これまでWIRED.jp、Real Sound、オリコンなどオンラインメディアや経済メディアでアーティストや経営者、起業家のインタビューや業界動向の寄稿記事を手がける他、サービスや市場データに関するコンサルティングや講演も行う。

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