オンラインでも盛り上がり始めた、中古レコードの新しい購入方法

WRITER
ジェイ・コウガミ

アメリカでアナログレコードは、2018年もその勢いが止まらない。

アメリカの音楽産業団体「RIAA」が発表した2018年上半期の市場売上レポートで、アナログレコードは売上が12.6%もアップしたことが報告された。

レコード・ストア・デイなど持続的な活動によって、アメリカではアナログ文化が完全に根付いたといっても過言ではない。2017年の12カ月で143万枚のアナログレコードが購入され、売上は2016年からさらに9.3%上昇したことが何よりの証拠だろう。

12年連続で伸び続けているアナログ市場では、2018年も引き続き、アメリカで購入される数は増えると予想される。

一方で、完全に衰退しているのがCDであることに、もはや誰も反論できない。売上規模でなんと前年から41.5%も落ちたのだった。CDの売上枚数は未だに大きい。数百万枚以上が購入されていることも事実だ。しかし、去年と比べて、その減少速度は加速している。

こうしたCDの落ち込みに対して、アメリカの音楽業界も処置を取り始めている。CD売り場の変化だ。家電や生活用品を取り扱う大手チェーン店で、CD販売を数多く手がける「ベストバイ」や「ターゲット」は、店舗内やオンラインストアで取り扱うCDの数を大幅に減らし始めた。

また、メジャーレコード会社もCD低迷を見かねて、売れる見込みのある新作以外では、CDリリースを控えたり、取り止めることが少なくない。


イーベイのアナログレコード・ページ。検索の条件が豊富
https://www.ebay.com/b/Vinyl-Music-Records/176985/bn_1860303

そんな中、オンラインストアでは、レコード愛好家や音楽好きに向けて、購入の選択肢を増やそうと新しい売り方を試みている。その一つは、世界最大規模のオークションサイト「イーベイ」がレコード・ストア・デイと組んで行った1週間限定のセールイベント「ヴァイナル・オブセッション・ウィーク」だ。

このセールは、その名の通り「アナログ中毒週間」と、レコード好きが喜ぶであろうアーティストの限定盤やボックスセットなどを販売するイベントで、9月に初めて開催された。日替わりのセールを事前に発表したり、レコードショッピングで使えるディスカウントクーポンを購入に合わせて配布するなど特典も豊富。また、サイン入りグッズなどレコード以外も購入ができるようになっている。

このセールでは、ユーザーはレコード・ストア・デイに加盟するレコードショップがセレクトするレコードやグッズをイーベイから購入できる。インディペンデントなレコ屋オーナーに対して利益を還元しようとする新しい試みでもある。

イーベイで出品された中古レコードを買うこともできるが、セールに参加するレコードストアからは魅力的な限定パッケージや特典が提供されるため、ユーザーにもレコードショップにとってもメリットは大きい。

面白い特典では、イーベイで店を構える輸入ショップの「ImportCDs」で60ドル以上のレコードを買うと、高音質な配信が売りの音楽ストリーミングサービス「TIDAL」のプレミアム会員プランが3カ月無料で使えるといった特典もある。

TIDALは日本ではまだ上陸していないサービスだ。しかし、このサービスはヒップホップアーティストのジェイ・Zが運営する音楽ストリーミングサービスで、CD音質以上で楽曲が再生できるサービスとしてSpotifyやApple Musicと差別化している。

「高音質」での音楽再生という要素では、アナログレコード好きにも通じるところがあるはずだ。

「ヴァイナル・オブセッション・ウィーク」で購入できるのは中古レコードだけでなく、新譜や復刻盤も揃っている。メタリカやイーグルス、グレイトフル・デッド、ザ・ドアーズなどロックアーティストの名盤中の名盤から、カニエ・ウェストやケンドリック・ラマー、ビヨンセなどヒップホップやアーバンミュージックのレコードもパッケージ販売されるなど、選択肢は豊富だ。

中古レコードのマーケットプレイスは、音楽業界ではこれまであまり重要視されてこなかった。なぜなら、音楽業界が発表してきた「アナログ復活」に関するデータは、復刻盤を含めて全て新作リリースの数と売上だからだ。その中に、中古レコードの数は含まれていない。レコード会社も新規にアナログをプレスすることに躍起になっている。そのため、正確なアナログ売上のデータを把握することは難しい。

しかしながら、アナログ復活の影響を受けて、レコードコレクションを増やしたい人にとって中古レコードストアはかつてないほど必要不可欠な場所となっている。

一つ興味深いデータがある。アメリカでは今、レコードの平均価格が高騰し続けている。新譜、中古ともに同じ価格高騰が起きているのだ。

前述のイーベイが公表した情報によれば、イーベイが取り扱う中古レコードの平均価格は22.80ドル。日本円にして約2570円。

イーベイでは、2009年-2010年から中古レコードの平均価格が一気に10ドル近く上がり、その後も上昇し続けているという。

一方で、アメリカ国内のストアで販売される新作レコードの平均価格は24.73ドル(約2780円)。これはRIAAが公表した情報で、中古の価格が新作の価格に肉薄していることがわかる。

2009年や2010年は、レコード・ストア・デイがアメリカで始まって1-2年が経った時期と重なる。

つまり、イーベイの価格上昇は、レコード購入の熱がローカルかつリアルなレコードショップだけでなく、オンラインにも飛び火し、とりわけ中古レコードの取引を活性化し始めたことを裏付ける証拠の一つだ。

かつてイーベイのようなオークションサイトは、レアなオリジナル盤や中古レコードを求めるコレクターが使う定番サイトだった時代がある。だが、アナログ人気復活によって一般人に広がり始めたレコード・ブームは、オンラインでの中古レコード購入の装いさえも変え始めている。

ジェイ・コウガミ(デジタル音楽ジャーナリスト、「All Digital Music」編集長)

ジェイ・コウガミ(デジタル音楽ジャーナリスト、「All Digital Music」編集長)
世界の音楽テクノロジーやビジネス、音楽業界のトレンドに特化した取材・執筆・リサーチ活動を行う音楽ビジネスメディア「All Digital Music」編集長を務める。海外の音楽カンファレンスを現地で取材するなど、グローバルな視点からクリエイティブとビジネスを横断した取材を国内外で数多く行っている。これまでWIRED.jp、Real Sound、オリコンなどオンラインメディアや経済メディアでアーティストや経営者、起業家のインタビューや業界動向の寄稿記事を手がける他、サービスや市場データに関するコンサルティングや講演も行う。

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