アナログレコードを買っているのは誰だ?

WRITER
ジェイ・コウガミ

「アナログレコードを買っている実際のお客さんはどんな人なのか?」そんな考えたことはないだろうか?

イギリスでも再び注目されブームが広がりつつあるアナログレコードについて、興味深い調査結果が発表された。

これはイギリスの小売店を代表する業界団体「エンターテインメント小売業協会」(Entertainment Retailers Association、以下ERA)が行った調査だ。ERAによれば、イギリスで購入されるアナログレコードの約2/3に近い72%がレコードに熱すぎる情熱を注ぐハードコア音楽好きによって買われている。これが「スーパーファン」だ。

ERAが示すスーパーファンは、次のようなアナログバイヤー。それは「年400ポンド以上をアナログレコードに費やす」人で、日本円に換算すれば年間約5万8000円になる。

そもそもイギリスのアナログ復権はどれほどまで伸びているのか?

「アナログレコード復活」と聞けば、大抵の人はアメリカを思い浮かべるはずだ。しかし実際はアメリカだけの事情では考えられない。アナログレコードの需要は目覚ましい勢いで広がっている。2017年にイギリスでは410万枚以上のアナログ盤が買われた。これは1991年以降のイギリスでは最大の売上枚数になっている(英国レコード産業協会調べ)。

もちろん、アナログレコードが今でもニッチな音楽メディアであることは、音楽批評家やメディア、そして音楽ファンも分かっている。現在でもイギリスではアナログレコードの売上は音楽市場の3%にしかならないことが、その規模感を物語っている。

だが、スーパーファンたちにとってそんなことは関係ない。

イギリスのアナログレコードの平均価格は20.31ポンド(約3,090円)。彼らは年に最低19枚のLPを購入しているのだ。

ERAの調査では、スーパーファンがCD、DVD、Blu-Ray、ゲームソフトのジャンルにも存在することが明らかになった。最もスーパーファン(年400ポンド以上購入する人)が多いジャンルはゲームソフトで62万9000人だった。

驚くべきことに、CDにも年400ポンド以上を費やすスーパーファンが数多く存在している。その数は29万2000人で、アナログレコードの15万7000人を13万人以上も上回る。

「CDが売れない」のはイギリスも世界も同じだ。だが、実際にはCDにお金を費やす人はこれほどまだ残っていることは驚嘆に値する。

スーパーファンのアクティブ度で見ればまた変わる。アナログレコードが最もスーパーファンが売上に貢献しているジャンルだった(72%)。一方で、ゲームでは34%、CDでは32%のスーパーファンが全体の売上を占めていた。

イギリスではさまざまな方法でアナログレコードの購入層を拡大しようと取り組んでいる。アメリカで始まった「レコード・ストア・デイ」のイギリス版を立ち上げ、認知拡大を図ってきた

さらに今年5月には、アナログコレクター向けのギフトカード「レコード・トークン」を復活させた。これは1990年代にイギリスで存在していた音楽好きのためのシステムで、独立系レコードストアで使えるギフトカードだ。これを使えば、誰でもアナログ盤やカセットテープ、CDが買える。

レコード・トークンの決済方法や使用方法も現代にアレンジされている。店舗でも使うことができるだけでなく、オンラインストアでも利用が可能。サイトに行けば、どのストアで使えるか地図検索ができ、さらには、カードの残高も調べられる。レコード・トークンは店舗でもオンラインでも購入でき、自分で使うこともできるし、好きな人に贈ることもできる。

こうした音楽業界の取り組みは、アナログファンにとって嬉しいことだ。そしてまだアナログレコードを買ったことのない若者や、レコードストアで買い物をしたことのない人には、初めてのアナログの世界を堪能できる最初の一歩へのフリーパスだ。このようなシステムが、未来のアナログコレクターを増やすことに違いないはず。何より、昔ながらの仕組みを復活させるあたりが心憎い。

ジェイ・コウガミ(デジタル音楽ジャーナリスト、「All Digital Music」編集長)

ジェイ・コウガミ(デジタル音楽ジャーナリスト、「All Digital Music」編集長)
世界の音楽テクノロジーやビジネス、音楽業界のトレンドに特化した取材・執筆・リサーチ活動を行う音楽ビジネスメディア「All Digital Music」編集長を務める。海外の音楽カンファレンスを現地で取材するなど、グローバルな視点からクリエイティブとビジネスを横断した取材を国内外で数多く行っている。これまでWIRED.jp、Real Sound、オリコンなどオンラインメディアや経済メディアでアーティストや経営者、起業家のインタビューや業界動向の寄稿記事を手がける他、サービスや市場データに関するコンサルティングや講演も行う。
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